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第17話

 普通に活動を続けていれば上層部の人間になるか、特別な何かが無い限りはまずコハクとは接点が生まれない。だからこそ当時の琴葉も、そして今のユエルとマキナも、まさか彼女と友達になれる等と考えもしなかったのだ。


 恐らく今日のパーティーが終わってから帰宅し、冷静になってからふと思い返すと途端に現実味を感じなくなる事だろう。それ程までに彼女たち普通の協会メンバーとコハクとではあまりにも距離がある。


「確かに……普通であればこうしてお話をする事すらあるか無いかレベルですもんね」


「うん! それにプライベートで遊ぶってなったら尚更だよね~」


「色んな友達を作ったり人脈を広げる事は良い事だからな。今回コハクを呼んだのは正解だったよ、やっぱり。まぁとにかく、私とコハクの出会いはこんな感じかな。次は君の番だぞ、司くん。コハクとの出会いを聞かせて欲しいな。コハクを誘った時に司くんとは友人関係だからぜひ参加したいと聞かされてはいたが、どんなきっかけで知り合ったかまでは知らないからね。私としては凄く気になるところだよ」


 話題の矛先が自分へと向き、司はやっぱりそうなるかと思った。


 司とコハクが以前からの知り合いである事は既にバレている。最近やって来たばかりの彼が一体どこでどう知り合ったのか。ユエル、琴葉、マキナの三人は興味津々といった様子で司の話を待った。


 普通の出会いであれば簡単に話せるのだが、コハクの場合はあまりにも特殊すぎる事情であるが故にどう話したものかと少し悩む必要が発生する。


「あー……その……」


「ん? どうした?」


 歯切れの悪い司に琴葉は怪訝な表情になる。そしてそれは他二人も同じだったようで何故司がここまでハッキリしないのか疑問といった様子だ。


 だがコハクだけは司の気持ちを理解していたようで、彼が答えやすいように助け舟を出す事にした。


「司。この辺は確かにあやふやになりがちだから一応言っておくけど、別に規約違反じゃないわよ? 私の元身分を話すだけだったら。私、辞めてる身だしね」


「……! あ、そうでしたっけ? 何だ、無駄に悩んじゃった」


 どうやらコハクの今の発言は司の中のモヤモヤを一瞬で消し去ってくれたようで、今の司はどこか晴れ晴れとした感じだ。


 そういう事なら躊躇なく話せると思ったのか、司は先程までの戸惑いが嘘のように迷いを見せる事なく話し始めた。


「それでは琴葉さんの質問に答える前に一つだけ。コハクさんは、元リバーシメンバーなんですよ」


「は?」


 ジュースを飲もうとしていた琴葉はグラスを口に近付けた状態で固まる。そしてグラスをゆっくりとテーブルの上に置いてからコハクを見る。呆然とした様子で司から得た情報が真実であるとすぐには脳が受け付けられずにいた。


「嘘!? り、リバーシ!?」


 マキナは余程驚いたのか両手をテーブルの上に乗せてからガタッと身を乗り出してコハクを凝視する。


「……」


 ユエルはと言えば驚愕の表情のまま自分の側に立っているコハクの顔を見上げた。


 三人の反応を司は大体予想できていた。


 リバーシの構成員は意外と身近に居るにも拘らず周囲はその正体に気付けない。それ故に知り合いがそうだった時の衝撃は計り知れないのだ。

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