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第16話

 ユエルとも連絡先を交換したコハクは、しばらくの間ノアを見つめたまま嬉しそうに微笑んでいた。久し振りに自分のノアに、仕事関係の人ではなく友達が登録されたのだ。画面に映るユエルとマキナの名前を見るだけで思わず笑みがこぼれてしまう。


 逆に言えばそのレベルでコハクは友達が少ない事に対して普段から悩んでいた訳だが。


「いや~まさか私のノアにコハク会長が友達として登録されるなんて思わなかったよ~。人生何があるか分からないね~うん。あ、そだ。ケーキバイキングどうする? いつ行く?」


「来週以降は評価対決で忙しくなるだろうし、基本的にコハクとユエルに合わせる形で良いだろう。それより、司くんは良いのか? 一緒に行かなくて」


「さっき言ったはずですよ。コハクさんには女子会として楽しんで欲しいんです。僕は遠慮しておきますよ。コハクさん、女子会とか人生初じゃないですか? せっかくですし、楽しんで来てくださいよ」


「そう……まぁあなたがそこまで言うなら甘えさせてもらうわね。ありがと!」


「それではまた後で連絡取り合いましょう。私も楽しみです! あ、司くんにはケーキをお土産として買っていきますね! どんなケーキが好きか後で教えてください!」


「え? 良いんですか? ありがとうございます!」


 この場に居る全員に共通していた事だったが、こういった楽しみが一つあるだけで評価対決含む各々の仕事に対するモチベーションも上がると言うものだ。


 そして遊びの予定が入った事もそうだが、何よりもこの雰囲気を楽しんでいるコハクは、もう満足気だ。


「何か……良いわね、こういうの! 友達同士って感じがして」


「もう~コハクちゃん慣れてなさすぎだって! こんなの別に普通だから! お互いの予定が合ったら、今回だけじゃなくていつでも遊ぼ?」


「ええ!」


「さて。それじゃあコハクさんも無事に打ち解けたところで……」


 会話に一旦の区切りが付いたと思った司は、連絡先を交換する為にユエルの側に立っていたコハクへと視線を送り、話題を彼女自身の事にしようとした。


「改めてコハクさんに聞きたいんですけど……」


「何かしら」


「今日ここに来たのは、琴葉さんに誘われて僕の入会祝いをする為……で、合ってますよね?」


 琴葉の話から既に判明している事実ではあるが、再確認の意味を込めて司はその質問をした。


「ええ。琴葉とは私が会長になりたての頃に知り合ってね。自宅から協会に向かってる途中に彼女から話し掛けられたのよ。もしかしてコハク会長ですかって。協会に入会したばかりの新人ちゃんだったみたいで……ええと、確か今から三年前だったかしら」


 コハクは過去を懐かしむような表情と声になる。


 三年前、コハク以外の四人はどんな状況だったのか。ユエルとマキナに関してはそもそも協会に居ない頃だ。ユエルの協会歴は一年、マキナの協会歴は二年である。


 だが琴葉は今の話を聞く限り協会には居たのだろう。新人という事は彼女の協会歴はそのまま三年である事が推測される。


 そして最近協会に来たばかりの司はと言えば前職場となる牢政にも居ない時代だ。彼にとっては忘れもしない、蒼が殺された年でもある。


「琴葉ちゃん、相変わらず心臓が強いですね」


「あの時は好奇心が勝ったんだよ。私と二つしか違わないのに会長に就任した小娘が居ると当時は話題になったからな。私が十五で、コハクが十七だったっけ。一体どんな女の子なんだろうかと気になりすぎてね」


「それがきっかけで友達になったのよ。元々私は友達作るの苦手でね……会長になっちゃえば今度は作る機会すら失うんじゃないかと少し落ち込んでいたから、あの時は本当に嬉しかったわ」


「話し掛けた時はまさか会長の友達になれるなんて思わなかったよ。何せその時の私は協会に入ったばかりのひよっこだよ? そんなヒエラルキーで言えば最下層の人間がいきなりトップの人間と親しくなれるなんて、普通は想像しないだろう?」


 くすくすと微笑みながら話す琴葉の表情は本当に柔らかい。少しの好奇心が今の二人の関係性を築いたのだと考えると、世の中何がキッカケとなるか本当に分からないものだ。

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