第13話
コハクは司の言葉を受けて目を伏せる。どうやら会長になってしまったが故の悩みがあるようで、不満気に語り始めた。
「う~ん……私はあなたのお友達と仲良くなりたい目的もあって今日来たのに、こんなに緊張されちゃうなんてね。時々自分の今のポジションが邪魔に感じる時があるわ」
もしもコハクがただの協会メンバーだったら別に緊張される理由はなく、ここまで畏まられる事も無かっただろう。
それはこういうオフの時であっても変わらない。おまけに今は初対面なのだ。ユエルとマキナの反応は至って正常である。
シンプルに仲良くなりたい、友達になりたいと思っているコハクからすれば自分の役職は足枷にしかならない。
「まぁ、大体予想できた展開だけどな。でも、そこでなかなか若者の友達ができないって普段から嘆いている君の為を思って今回のパーティーに呼んだんだ。司くんたちにはサプライズって事で内緒にしておいた方が良いだろうなと思ったんだが、やっぱり事前に話しておいた方が良かったか……?」
コハク登場以降沈黙を貫いていた琴葉は完全にいつも通りを取り戻した様子でネタばらしを始める。その発言にユエルとマキナは驚いた様子を見せたが、司はそんな事なく納得の表情をしていた。
彼女をここに呼んだのは司では無いし、ユエルとマキナであるはずも無い。となれば消去法で琴葉が呼んだかコハクが勝手に来たかのどちらかとなる。
「やっぱり琴葉さんが呼んだんですね。コハクさんには今日パーティーがあるって伝えていないし、この中の誰かがこっそり呼んだんじゃないかとは思ってましたよ。 (さっきの琴葉さんとの事は無かった事にしたいし、ここは平常心平常心) 」
「ユエルとマキナの反応を見るに二人は違うと思って、残る私がコハクを呼んだんだろうなと予想した訳か。その通りだよ。 (やばい……酔いが醒めた今になって、さっき司くんにあんな絡み方したのが本当に恥ずかしくなってきた。変に意識したら終わりだ。いつも通りいつも通り……いつも通りに接すれば問題ない……! じゃなきゃ私が恥ずかしくて死ぬ!) 」
琴葉も司も考える事は一緒なようで、意識してお互いを意識しないようにした。幸いな事に二人は口に出せずとも、お互いにそれが最適解であると察しているのだ。どちらか片方でも空気が全く読めない奴だったらこうはなっていない。
そんな二人の内心など知る由も無いコハクは呑気な雰囲気で琴葉の発言に対して言葉を返す。
「もう! だから私言ったじゃない! サプライズなんてどうでも良いから、最低限の心の準備はさせておいてって。……。……ん? て言うか心の準備って何よ! 何でただ仲良くなりたいだけの相手に心の準備とかさせないといけないのよ!」
「取り敢えず落ち着け。自分で言って自分でツッコんでるぞ」
「はぁ、もう……」
これが転生協会のトップの姿なのかと疑問視せずにはいられない。
荒ぶるコハクにどう話し掛けたら良いか反応に困っていた面々だが、ここで躊躇を捨てて勇気ある行動に出れるのがマキナという人間だったようで。
「えっと~……『コハクちゃん』って呼んでも良いかな?」
コハクのこれまでの発言から彼女の気持ちを察したマキナは、大胆にも距離を一気に詰める事に。
その質問を実際に口にするまでに、普通であれば尋常でない迷いの時間と勇気が必要になる。いくら年齢が近い若い女性とは言え、相手が会長である事に変わりはない。
一歩間違えれば不敬罪として咎められても文句は言えないだろう。ただそれでもマキナは大きすぎる一歩を踏み出しコハクに対してその質問をぶつけたのだ。




