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第108話

「 (相変わらずよく回る舌だな、あの女も……) その後はコハク会長が牢政に許可取りの連絡をして、そんで実際に許可は下りたっつー流れで合ってるか?」


「はい! ビックリするくらいすんなりいって良かったですよ! それにしてもまさかコハク会長が調査の許可をしてくれるなんて思わなかったな~。よっぽど今回の評価対決が無事に終わる事を願ってるんだね! ねぇ琴葉ちゃん!」


「ん……? ああ、そうだな。 (仮にその気持ちがあったとしても、鴻仙総監を動かすのはさすがにやり過ぎている気がする。何か別の目的がありそうだが……) 」


「……? 琴葉ちゃん?」


 何か言いたげな琴葉をマキナは不思議そうに見つめる。


 そんな中マキナの話を聞いたカムリィは深夜に転生協会内で調査を行ったあの日、直前にコハクから言われた言葉を思い出していた。


『それと勘違いしているかも知れないけど、私以外であれば誰に協力を仰いでも良いんだからね?』


 当時は一体何を言っているのかピンと来なかったが今になってようやくカムリィは理解できた気がした。


「なるほど。『いざとなったら鴻仙に協力をお願いしても良いんだからね』って事か。コハクの協力者だからルール違反だと思ってはいたが……」


「カムリィさん? ぶつぶつとどうしました?」


「……いや、何でもねぇ。こっちの話だ、気にすんな。それとマキナ」


 そう言うとカムリィはマキナに向かって手をうちわのように振り、自分の近くに来いと指示を出す。その後カムリィは二人から距離を取り、少し離れた場所で止まった。


 そんな彼を見たマキナと琴葉は二人してお互いの顔を見合う。


「どうしたんだろ?」


「さぁね。取り敢えず私には聞かれたくない話なんだろう。ほら、行ってきなよ」


「う、うん」


 待たせてはいけないと思ったのか、マキナは小走りでカムリィに近付く。


「どうしました?」


「おう、悪いな。お前さっき牢政に行って調べたって言った後に『正確にはこ』……で止まったよな? あれ『正確には鴻仙総監に色々聞いた』って言いかけたんじゃないのか?」


「え! えと、その……」


「あーいい。その反応で分かったよ。サンキュー。そんだけだ。 (予想通りだな。異世界運用に関しては情報を一切話していないって事だったから、今回の主人公や手錠双璧についても一切話していないと思っていたが、それでも鴻仙総監は奴らの事件について知っていた。つまりコハクが普段の会食時に『当時こんな事があった』と雑談感覚で鴻仙総監に話していて、今回奇跡的にその時の話に登場した四人が異世界運用の中心人物になっちまったと考えるのが妥当だろうな) 」


 コハク的にはカムリィが鴻仙に協力を仰ぐ為、牢政と橋渡しを行える探偵署へ行く事を望んでいたのだろう。そして恐らく今回と同じように探偵署からは反対されるだろうから、彼が困っているところをコハクが同様の方法で助ける段取りだったはずだ。が、幸か不幸かそれが訪れるよりも先にマキナが個人的な理由で行動してしまったのだ。


 さすがのコハクもマキナの行動まで計算に入れて計画を立てるなど不可能であり、最初こそ探偵署で事情を知った時は動揺していた。だが即座に頭を切り替えた彼女はマキナの我儘を受け入れ調査許可を出したのだ。


 どのみち探偵署は相手がカムリィであろうと仮に彼が調査理由を正直に話そうと、許可は出していないだろう。


 カムリィが行き詰まった中でコハクは今回のマキナの時と同じく自分が直接牢政へ連絡を行う事を提言する算段だった。だがマキナの登場でその計画が狂ってしまったのだ。


 もしもマキナの件を知った後に特に対応せず、カムリィの時には対応してしまったらその差は一体何だと周囲から思われてしまうだろう。余計な疑問を植え付けさせない為にはここでマキナの希望を叶えてあげた方が行動しやすくなると踏んだのだ。


 コハクの臨機応変な行動により、結果論ではあるがカムリィはわざわざ探偵署に行って七面倒くさい説明をする手間が省けた。

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