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第107話

「ほお。そんな権限が……つまりマキナはその権限を利用して私的利用に使った訳か。よく探偵署も牢政も許可を出したな」


 今の話を聞く限り探偵署が調査の必要性を判断しないと第一歩がまず踏み出せない。だが手錠双璧の件はマキナ個人の趣味で調査をしようとしている事だ。


 いくら普段から自由奔放に動けているマキナであっても、機密事項の宝庫となる捜査資料管理室への出入り許可はさすがに下せないだろう。探偵署も普段から超えてはいけないラインかどうかを見極めながらマキナを扱っており今回ばかりは渋られたはずだ。


「あー……私もダメ元で言ったら即答されました。バカかお前はと。さすがに許可は出せないからなって」


「探偵署の人間が常識のある人たちで私はホッとしているよ。しかしだ。その状況から一体どうやって説得したんだい?」


 正直なところ説得程度で相手が折れるような内容でも無い気はするが、事実としてマキナは捜査資料管理室へと入れているのだ。説得でないにしろ何らかの手段を用いたと思われる。


「私は別に何もしてないよ~。その時たまたまコハクちゃんが……」


「ゔゔん! すまない、よく聞こえなかったな。何て?」


 わざとらしい咳払いと共に琴葉は微笑みながらマキナへと問い掛ける。ここは協会内だからなと言葉で言わずとも空気がそう言っていた。


 彼女の圧に負けたマキナは引きつった笑顔になる。


「こ、コハク会長が普通に協会の用事で偶然探偵署にやって来てね。ちょうどその時私が揉めているタイミングでさ。事情を説明したらちょっと考え込んだ後にこう言ったんだ」


 マキナはその時のコハクの事を思い出しながら琴葉とカムリィへ伝えた。


 それはマキナが手錠双璧と会話した次の日、つまりは司が目を覚まし彼がエマと接触した日の出来事であった。


『私が許可を出しましょう』


『え? こ、コハク会長! 何故ですか! ムイとロアの力の秘密なんて調べてどうなるんですか! しかもこいつは何か違法行為に手を染めて力を手に入れたんじゃないかって予想して、牢政の捜査資料管理室を使う気なんですよ!』


 マキナが調査許可を申請した相手である、探偵署の部長が納得がいかないといった表情でコハクに詰め寄った。至極真っ当な反応である。


 対してコハクはいつもの余裕の笑みを維持したまま平常心で返答してみせた。


『牢政に対しては探偵署からじゃなくて私から直にお願いするの。調査の必要性があるかどうかを判断する人が違うだけの話よ。いつもは探偵署にその判断を代行してもらっているだけなんだから、調査の必要性をあなたたちが気にする必要は今この瞬間無くなったと言えるわね』


『……。まぁ会長がそう仰るのであれば、何か我々に話せない事情があるのでしょう。ですが問題は向こう……牢政の人間が納得するかどうかです。わざわざこんな事を会長に言う必要は無いかも知れないですが、捜査資料管理室は特別な許可が下りないと我々は立ち入る事ができません。彼らが納得するような理由を提示できない限り……』


 探偵署の部長がそこまで言うとコハクは最後まで話を聞かず彼の言葉を遮る。


『鴻仙に掛け合うわ。きっと理解してくれるはずよ』


『……! こ、鴻仙……って、あ、あの鴻仙総監ですか? 何故そこまで……』


 コハクの発言で周囲がざわつく。そこまでしてマキナに手錠双璧を調べさせたい意図は何なのか。狂気にも似たコハクの考えにマキナも放心状態になってしまう。


『うーん、そうね。マキナの勘と嗅覚を信頼しているから、かな? もしも彼女の予想通り、手錠双璧が違法な手段で強烈な來冥力を手に入れていた場合、どんな影響が出るか分からないじゃない。代償や副作用……色々考えられるし、今回の評価対決に影響が出る可能性だってある。そうなったらあなた、責任取れるのかしら? どんなに小さな不安も取り除いておかなくちゃね』


 マキナの当時の状況説明は一旦ここで終わった。

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