表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
106/203

第106話

「……」


 マキナから話を聞いたカムリィは、良い反応を返す事ができず長考してしまった。だが徐々に自分が得た情報が、まさに欲していたものだと確信し思わず口角が上がる。


「おい、マキナ」


「はい?」


「お前最高だ。今日ほど探偵署の人間に感謝した日はねぇぜ」


 仕事とは全く関係無い完全な趣味で行った調査結果の共有をしただけで、ここまで感謝されるとは思っていなかったマキナは珍しく反応に困る。琴葉もマキナ同様困惑顔だ。


 そもそも何故ここまでカムリィが手錠双璧の事件に興味を抱いているのか彼女たちは知らない。それどころかマキナが調べたその事件の中心に居る二人が、今回の評価対決におけるダブル主人公である事実も把握してはいないだろう。


 異世界運用における情報が簡単に漏洩していない証拠でもある為、当たり前ではある訳だが。


「は、はぁ……? よく分かんないですけど、まぁカムリィさんの役に立てたなら私はそれで満足です!」


「ちなみにだけどお前、それどうやって調べた?」


 カムリィは普段の業務と同時並行で調査を進めていたが、事件だけは全くと言っていい程、新規の情報を得られなかった。


 簡単な事件概要はコハクから共有された情報が全てであり、もっと踏み込んだ内容や真実とは何かと言う話になってくると正直お手上げであった。


 世間の目には触れられない階層の情報ともなれば、当事者から話を聞くかエンペル・ギアの手を借りる他無い。だが当時の試験の状況を事細かに把握する為には試験官に聞くしか無いのだが、その試験官の正体が正体なだけにカムリィは聞けずにいた。


 そんな中マキナから聞いた話はどれもカムリィが知らないものばかりとなり、彼女がどのようなルートを用いて入手したのか気になるところだ。


 期待に満ちた表情で質問したカムリィだったが、マキナが口にした回答は予想外なものだった。


「牢政本部に行って知りました! 『せっかく来てもらった訳だし、手錠双璧さんの秘密の一つを教えてあげよう』って。正確には、こ……あ、これ言っちゃいけないんだった!」


「は?」


 カムリィは思わず素っ頓狂な声を上げる。


 何と彼女は牢政ですら把握していないはずの情報を牢政で見つけたのである。


 牢政トップの鴻仙がコハクの協力者である事を考えると、彼だけは知っているかも知れないが、だからと言ってその事件に関する資料が牢政内に保管されているとは思えない。


「また君は探偵署の肩書きを悪用して好き勝手に調査したのか」


「にゃはは……牢政に行った時に『またこいつが来たよ。おい誰か相手してやれよ』みたいな顔された時はさすがに苦笑いするしかなかったね」


「まぁ君は探偵署のエースとして普通に活躍しているし、牢政にも多大な貢献をしてきた実績があるからね。色々と察しつつも断るに断れないんだろう。彼らの心情を考えると同情せずにはいられないよ」


 二人のそんな話を聞いていたカムリィは、琴葉のセリフの中にヒントを見つけたような気がした。


「ちょいと良いか? さっき言ってた探偵署の肩書きを悪用してっつーのは何だ?」


「ああ、それですか。牢政内の捜査資料管理室への出入り権限を探偵署の人間は持っているんですよ。もちろん個人が勝手にその権限を使用しないように、事前に探偵署は牢政に連絡を入れて、調査時は牢政の人間が一人監視役として付く事にはなりますけどね。カムリィさんは異世界運用を専門として普段から管理をなさっていますし、全く関係無い部署となる探偵署の事情は知らなくても無理は無いかと」


 捜査資料管理室。牢政内にあるその部屋は、各事件の捜査過程や事件概要、入手した証言証拠などを管理している資料室だ。リバーシの人間ですら立ち入りが困難な秘匿性の高い場所である。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ