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第103話

「コハク会長ッ! 起きてください!」


「ひゃあう!」


 突如響き渡った大声にコハクはビクッと体を跳ねらせる。


「何何何!?」


 上半身だけを起こしたコハクは、まだ若干寝ぼけた様子の目で辺りをキョロキョロとする。その結果ユエルの姿が目に留まり、体が固まった。


「んえ? ゆ、ユエル?」


「おはようございます、コハク会長。もう朝ですよ。朝食はどうしますか? この近くに売店ありますし、何か食べるものでも買って来ましょうか?」


「……。……! ちょちょちょ、ちょっと待って! 私今寝起きよね!?」


「は、はい」


 軽い会話とユエルのその返答でようやく完全に目が覚め、覚醒したコハクは毛布にくるまりユエルに背を向ける。


「み、見ないでよ! 私、部屋着だし化粧してないし髪ボサボサだし、とても人に見せられるような状態じゃないの!」


「え、えーと……その……す、すみません……」


 配慮が足りなかったかと後悔したユエルだが、彼女の申し訳無さそうな声を聞いて我に返ったコハクはユエルに背中を見せながらも謝罪した。


「あ……ご、ごめんなさい。多分だけどカムリィの代わりに私の事起こしに来てくれたのよね? それなのに私ったらそんな人に向かって……さっきのは、その、反射的なものと言うか何と言うか……」


「い、いえ! 気にしてないので大丈夫ですよ。と、とにかく起きてくれて良かったです。もう完全に覚醒したように見えますので、私はもう戻りますね。カムリィさんにはコハク会長が起きたと伝えておきますので」


 ここは早々に出て行った方がコハクからしても居心地が良いだろうと考えたユエルは、それだけを伝えてから逃げるように仮眠室を出て行った。


 ドアが閉まる音が聞こえ、再び仮眠室にはコハクだけが居る状態になった。痛い程の沈黙の中コハクはユエルのように一人反省会を繰り広げた。


「あーーー! もうッ! 私のバカ! せっかくユエルがわざわざ起こしに来てくれたのにあんな態度取っちゃうなんて! うう、絶対に気を遣って出て行ったわよね……後でちゃんと謝っておこう……」


 コハクは反省と後悔を同時にする。こんな事ならもっと爆音レベルのアラームを何十回と設定し、自力で起きれるようにしておけば良かったと思うも時既に遅しである。


「はぁ。取り敢えず準備して朝ご飯食べよ……」




 一方、ユエルと別れた司は飲み物を買うべく自販機のある場所へと向かった。


 向かった先にはカムリィが居た。自販機の側に置かれている丸テーブル近くのイスに腰を下ろし、コーヒーを飲んで寛いでいる。束の間の安息と言うやつだろう。


「お、司。今日はよく会うな。コハク会長はユエルに任せた感じか?」


 司に気付いたカムリィの方から彼に話し掛け、その後コーヒーを一口飲む。


「さすがに彼女も異性に寝起き姿を見られるのは恥ずかしいと思いましてね」


「はは。そうか」


 司は金を投入し、ミネラルウォーターを一本買う。


「……なぁ司」


「はい?」


 司は自販機からミネラルウォーターの入ったペットボトルを取り出しながら、カムリィの呼び掛けに答える。


「今からお前に変な質問をするが、気にせず答えてくれ」


「何ですか、藪から棒に」


「司。お前から見て、皇真ユエルは『才能あり』だと思うか?」


「……!」


 カムリィのその質問に司は息を呑む。彼が何を訊きたいのか、その意味を理解してしまったからだ。

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