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第10話

「まぁそうですね……」


「うんうん」


 興味深そうに司の顔を覗き込む琴葉はわくわくしながら彼の次の言葉を待った。


「琴葉さんってそんな子どもっぽく見えるかなって思ってますけどね。凛としていて、話し方も落ち着いていて、気配りも上手で、誰とでも平等に仲良く接しますし、仕事とプライベートのオンオフ切り替え上手いですし……しっかりしている人と言いますか……」


「……」


「一言で言うと素敵な女性だなって思ってますけど。あ、でも、飲み過ぎなのはダメですよ」


 司がそこまで言うと琴葉はグラスを置き、ガタっとその場で立ち上がった。どうしたのかと三人の視線を集めた琴葉は手を口に当ててから苦しそうに言った。


「すまない。トイレはどこだろうか?」


「え?」


「う……君の言う通り……飲みすぎたかも……は、吐きそう……」


「……! ここ出て右側にあります!」


「あ、ありがと……行ってくる……」


 そう言って琴葉は小走りで部屋を出て行った。無事トイレを見つけられたのか、ドアを開ける音が聞こえ、何とか間に合ったかと司は安心する。


「まったく、どんなタイミングだよ。普通に僕、凄い恥ずかしいんだけど」


 照れ隠しをする為に司はグラスにジュースを注ぎ、それを飲む。


「司くんってああいう事照れずに言えるんだ~」


 ニヤニヤしながらマキナはジト目で司を見る。


「そう思ってくれるならポーカーフェイス維持できたみたいだね。内心恥ずかしかったよ、普通に。でも琴葉さんが部署で普段から望んでいない見られ方を周囲の人たちからされていると思うと、そんな事無いって伝えたくてさ。彼女に伝えた言葉はどれも僕の本心だし」


「ふ~ん。まぁ琴葉ちゃん、色気あるしスタイル良いし、大人びてるし、私から見てもあれで子ども扱いされるんだ~って感じ」


「年齢の壁はやっぱり大きいのかもね」


 当然転生協会はユエルのような少女であっても実力が高ければ評価されていく世界ではあるが、それとこれとは話が別というやつだろう。


 琴葉も言うようにどれだけ優秀であっても年齢が若ければ子ども扱いしてくる人だって居る。それは別に不思議な事では無いし、琴葉もそれを分かっているからこそもどかしい気持ちを抱いているのだろう。


 司たちが琴葉の事を話していたその一方でトイレに駆け込んだその話題の人物はと言うと、吐いたらスッキリしたのか、少しだけ酔いが醒めていた。今はトイレのドアに背を預けて呆然と立っている。


「うう……さすがに飲み過ぎたな……はぁ……」


 正直な話、琴葉は自分がどれだけ飲んだらダメになるかをしっかりと把握しているのだが、今日は久し振りのパーティーという事もあって楽しさのあまり思わず限界まで飲んでしまったのだ。


「……。うへへ……それにしても司くん、私の事あんな風に思ってたのか~。うへへへへ」


 琴葉は恥ずかしさとまだ若干残っているアルコールの半々の理由で顔を赤らめ、嬉しそうな笑顔で体を左右に揺らしていた。


「冗談半分で聞いたのに、まさか本気で答えてくれるとは思ってなかったな。いやー熱い熱い」


 琴葉は照れ笑いを浮かべながら両手で顔をパタパタと扇いだ。

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