寝て起きたら異世界と人参
目が覚めると、森の中にいた…なーんていうお伽話はよく聞くけど、
「まっさか私がこんなことになるなんてな・・・」
と言ってもここに来たのはおそらく3時間くらい前だろう。
ふと肩に重みを感じる…またアイツか。
「しょうがないじゃないですかぁ」
肩からひょっこりと顔(?)を出している人参のような何かが言う。
「僕からしたらご主人様の言われた通りに、
聖女様を連れてきたら双子の姉の方だったんですからぁ」
「だったらさっさと元の世界に戻せやこの人参野郎」
少し睨んでやると、ヒィとあまりにも情けない声を出して、
必死に言い訳をしている。
「で、ですから元の世界にお送りするためにもご主人様の許可が必要なんですぅ
それなりに大きな魔法なので……う〜ん、
やっぱりダメですねぇマナ切れでご主人様と連絡が取れません…」
マナ切れか……確かご飯食べるとよくなるんじゃ無かったっけ?
「それにしても、本当に広い森ね。
少しづつ賑やかになってるから街はこっちであってるはずなんだけど……って」
人参野郎は私の髪を咥えていた。
「おい、何人様の髪食ってんだ離しやがれ」
またヒィと情けない……コイツ大丈夫なのか?
「すみません、お腹が空いて……」
「私の心配はなしか。」
「心配されたいんですか?」
「お前だけにはごめんだな」
「ですよね」
まさにコントのような会話をしながら進んんでいくとそこには……
「でっか」
「ここは首都ではないですねぇ。
今日は感謝祭だからどこの領地も賑やかですね。」
聞いてみれば、この領地……正式には{グロリア地方ビート領地}というらしい。
しかもその大きさは首都の4分の1にも満たないという。
「これよりデカいのか……ってどこ行きやがる人参!!」
噴水に向かっているのか?人の間を上手走り抜け、
なんとか追いついた時にはすでにその姿は無かった。
「どこ、いきやがった……」
周りを見てもあの目立つオレンジは見えない。
無理もない、あの小ささだ。ここで帰りを待つのが良いだろう。
「この噴水が街の中心なのね」
改めて街を見回してみると、
噴水を中心にして色々な方向に道や店が広がっている。
ふと、影が落ちた。
「僕の友人が君に世話になったようだね。」
ふわりと彼は噴水に…私の隣に座った。
鮮やかな金髪に青よりも深く、黒に近い瞳の青年。
身なりからしてどこかの領主だろうか?
「僕の顔になにかついてるかい?」
しまった!ついジロジロ見てしまった。
「いえ、そうではありません。それであのにんじ…ではなく、
ご友人はどこに?彼に少々お話があるのですが……」
「ああ!それで彼が早くマナを回復させたがってたんだね。
昔から色々急な友人でね。彼なら馬車の中で待ってるよ。」
さあ行こう、と手を差し出されたがここで気がつく。
この人は知らない人なのだと。
確かにあの人参の友人でなければ、
全くの他人が私が彼を探しているとわからないだろう。だけど……
「不躾ですが、素性がわからない方には、
ついて行ってはいけないと言われているので。」
青年は少し考えてから私に向かって跪き、私の右手をとって甲に口付けた。
「自己紹介が遅れてしまいました。私は{ルーミア帝国}
第一王子のユウ・リコイス・ルーミアと申します。この度は友人のため、
どうか本国首都へご同行願いたい。そして、貴女の名はそこで耳にしたい。」
王子殿下でしたか……領主のその上をいく存在に私は今跪かせているのか?
「わかりました。でもまずは首都の美味しいものが食べたいですね。」
ここまで歩きっぱなしでお腹も空いたし、これくらいなら許されるだろう。
「もちろんです!この国には美味しいものが山ほどあるんです。
さあ、馬車へ行きましょう。」
また、手が差し出される。
私は今度こそ、ユウ王子の手をしっかり握ったのだった。
はじめまして!愛華です。今回初投稿の「ニセイジョ冒険記」楽しんでいただけたでしょうか?
雰囲気や感情が色として見えるって相当便利なことを詰めんこんだなと個人的には思っています。
1話ではあまりそこには触れていないのですが、
2話からはどんどん触れて濃厚な内容にできれば良いなと考えています。
同時にこちらは完全に私の趣味なのですが、キャラクターのデザインも製作中です。
完成次第pixivの方に上げていこうと思います。
ここまで読んでいただき、本当にありがとうございました!!