第5話
結局、華井まりが学校に復帰したのはその二日後。
風邪が完治したまりはるんるん気分で登校していた。
どうしてか。
今、まりはあるドラマにハマっていた。
帰宅後ちょうどの時間に始まる再放送のサスペンス推理ドラマ。
リアルタイムで放送されてるのをたまたま見たら見事にハマってしまったのだ。
なので、再放送の過去のやつにまで手を伸ばして楽しんでいるのだ。
今日の再放送は昨日からの続きでようやく犯人が分かるのだ。
学校が早く終わってほしくて仕方ない。
しかし、楽しみとは苦行の後だからこそ最も楽しめる。
話が長くて眠くなる高石先生の授業が最後の難関だが、乗り気ってみせる!
それくらいまりは息巻いていた。
だが。
靴箱で上履きに履き替えようとしたまりは気付いた。
また視線を感じる。
思わず伊達眼鏡を触る。
靴の砂を払うふりをしながらまりは辺りに視線を走らす。
三年生の靴箱の影でサッと隠れた誰かが居た。
不安な気持ちが沸き起こる。
私、何かしたかしら?
それとも……。
「華井」
「きゃー!」
急に呼ばれてまりは悲鳴を上げて飛び上がった。
バクバクする胸を押さえて振り替えると。
「奥井君!」
まるで気配を感じさせない立ち方で奥井龍一がそこに居た。
そしてまりに声をかけたのを忘れたかのように、そのまま上履きに履き替えて立ち去ろうとしていた。
慌ててまりは奥井龍一の名前を呼ぶ。
「お、奥井君!」
「ん?」
「何か用があったんじゃないの、私に」
その時、まりは何故か自分が奥井龍一と会話出来て喜んでいる自分がいることに気付いた。
その事に疑問に思っててつい返事を聞き損ねてしまった。
「え、ごめん。もう一回お願い」
「……風邪良くなったみたいで良かったな」
「あ、ああ。ありがとう。心配してくれて」
「別に心配はしてない」
「はあ⁉」
まりは思わず声を上げた。
心配していないのに、一体どういう意味で⁉
その間に奥井龍一はスタスタと廊下を歩いて行ってしまう。
まりの事を気に留めた節もない。
「一体どーいうことよ、もう!」
上履きを叩き付けてまりは思わず叫んだのだった。
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