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第13話

キイ、キイ……。

華井まりはブランコを漕いでいた。

夕日が沈んだ、公園で静かに一人ブランコを漕いでいた。

まだ涙を流したばかりの目は赤かったが頭は冴えていた。

視界は、やっぱりクリアだった。

まりは今、伊達眼鏡のスペアをかけていた。

こんな時の為にスペアはまだあと二本はあったのだ。

学校へ出かける時もスペアは必ず用意していた。

だが、あの日体育の授業があった。

バスケの授業だったから、誰かとぶつかった拍子にレンズの螺子が緩んだのだろう。

奥井龍一に指摘されるまで誰も気づかなかったのは、もしかしたら幸いだったのかもしれない。

まりの胸はそこできつく痛んだ。

そう、奥井君には、見られてしまったのだ……。

そして激しく動揺して泣いて、気付いたのだ。

自分の()()()()()()()…………。

何故、あんなに動揺したのか。

奥井君には見られたくないと思ったのか。

推理サスペンスドラマみたいに、一つひとつの事を拾っていけば自ずと答えに辿り着けたのだ。

「私は、好きなんだ……。奥井君のことが」

呟いて、ブランコを漕ぐのを止める。

そしてもう一度はっきりと空に向かって言った。

「奥井君のことが、好き」

しかしこの気持ちに気付いたからには、どうすればいいんだろうか。

告白?

有り得ない、そんな漫画みたいなドラマみたいなそんな展開。

ブンブンと思いっきり頭を振る。

今、頭の中でまりは奥井龍一に告白する場面を思い描いたのだ。

顔が自然と赤くなる。

華井まりは大変初心であった。

その手の話は、小説としては大好物だったがボッチのまりには相談する相手も、話をして意気投合する友達も居ない。

まさか、母親にも言えない。

「ああ、どうしよう」

「何がどうしようなんだ?」

突如声がして、まりはブランコから飛び上がった。

「奥井君!」

奥井龍一がブランコを一つ挟んだ距離で立っていた。

街灯に照らされた瓶底眼鏡の奥は窺えない。

だが、まりはホッとした。

眼鏡は壊れていないようだ。

「いや、直してもらったが?」

「そうなの⁉」

まりは慌てて肩のポシェットから財布を出そうとする。

「待て待て。金なんか受け取らないからな」

「だって、私のせいじゃ」

「財布なんか出したら帰るからな俺は」

「そ、そんな!」

まりは奥井龍一の方に行こうとした。

が、

「痛っ!」

三つ編みが片方ブランコの鎖に引っ掛かっていた。

「おい、外してやるからブランコに座れ」

そう言って、奥井龍一がまりの傍に寄って来る。

「全くそそっかしいな、華井は」

「面目ない」

「ハハッ、武士みたいだな」

まりの胸は弾んだ。

短いが奥井龍一の笑い声が聞けたのだ。

「ほら、取れたぞ」

奥井龍一の視線を感じて、何だか照れくさくてまりは顔が上げられなかった。

しばらく、二人の間に沈黙が落ちる。

どれくらいそうしてただろう。

ぽんぽん。

「ひえっ!」

頭を撫でる感覚に思わず変な声が出た。

まりはバッと奥井龍一を見上げた。

瓶底眼鏡の奥の瞳が、はっきりと見えた。

そしてその表情は、とても優しかった。

出会った時はいつも憮然としている顔が柔らかく笑っている。

「大丈夫だ」

「……何が?」

「俺はお前の瞳が原因で、揶揄ったりも」

そこで言葉を切ると奥井龍一がグッと顔をまりに寄せた。

()()()()()()()()()()()

「っ!」

まりの目からまた涙が溢れた。

「うん、うん。ありがと奥井君……」

それからまりが泣き止むまで、奥井龍一はブランコを漕いでいたのだった。



お読みくださり、本当にありがとうございます‼

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