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芝犬ウィッチ  作者: syu
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芝犬魔女誕生のお話

 ツバの広いとんがり帽子。とんがりの先っぽは少しへたっている。

 襟の大きなマント。裾は地面で擦れてボロボロ。

 帽子もマントも外が黒で内側が真っ赤。

 それを着ているのは茶色の芝犬。

 口にはちょっと欠けた星飾りがついた魔法のステッキを咥えているぞ。


 芝犬魔女(ウィッチ)のメメさん。

 メメさんの仕事は困っている人を助けること。

 今日も困っている人がいないか散歩パトロールしているぞ。


 いつもの散歩道パトロールロード

 顔馴染みになり挨拶する人、撫でる人、遠くから見守る人。それぞれの楽しみ方でメメさんを愛でている。流石は芝犬魔女(ウィッチ)人気者である。


 メメさんの散歩パトロールのおかげでここ最近困っている人はいないぞ。

 困った!!困っている人がいないと何も話すことがない!!

 私を助けて!!メメさん!!


 と言う事で今日は私の自己紹介とメメさんが芝犬魔女(ウィッチ)になった経緯をお話しましょう。

 ん……いきなり自己紹介と言われて驚いてますか?

 最初から私がお話ししていたんですよ。 


 では改めまして。私は天使のケレブエルって言います。ケレちゃんって呼んでくださいね。

 普段はフヨフヨ、フラフラしている私達てんしですが、困っている人……人には限らないのですが便宜上そう表現します。そう困っている人がいれば、なんとかしようとします。

 今メメさんがしている事と同じですね。


 そう何を隠そう天使は困っている人を助けるのがお仕事。でも世界は広い。そして天使の数は少ない。無理ですね。圧倒的に無理。なのでお手伝いさんが必要なのです。

 そうです!!そのお手伝いさんが魔法使い(ウィザード)です。女性は魔女ウィッチと表現される場合もあります。

 芝犬魔法使い(ウィザード)。語呂が悪いですね。そんな時には芝犬魔女(ウィッチ)と表現すれば、あら不思議。キュートでスマート。

 名称はそんな感じで使い分けている訳ですが、この魔法使い《ウィザード》は天使が良さげな人を捕まえて任命します。そんな感じです。


 はい、自己紹介は以上です。

 ここからはメメさんが如何にして芝犬魔女(ウィッチ)となったのかお話します。

 

 とある一軒家。メメさんは飼い主のおじいさんと暮らしていました。

 二人の仲は大変良く、いつも一緒にいました。病める時も、健やかなる時も、ご飯の時も、寝る時でさえ同じ布団です。

 そして散歩も毎日欠かさず行っていました。雨の日も雪の日も……さすがに台風の日はお休みです。

 そんな仲睦まじい二人ですが、別れの日はやってきます。


 おじいさんが亡くなったのです。

 メメさんはその時もおじいさんに寄り添っていたといいます。


 その後おじいさんの息子に引き取られたメメさん。

 食事もまともに食べず、今では考えられない程に痩せてしまっていました。

 私がメメさんを見つけたのはその頃です。


 メメさんから困っているオーラをビンビンに感じた私は少し様子を見ました。

 新たな飼い主の息子さん夫婦もメメさんの様子を心配して病院に連れて行ったり、餌を変えたりとメメさんが元気になるよう頑張っていました。

 息子さん夫婦の会話からすぐにおおよその経緯と事情は察しがつきました。


 私はすぐにピンと来ました。この子は魔法使い《ウィザード》になるべきだと。

 この子の願いはまたおじいさんと一緒に暮らす事。しかしいくら天使とておじいさんを生き返らせることは出来ません。

 現世でメメさんの願いは叶わないのです。では来世では? 生まれ変わってまたおじいさんと過ごすことは出来るかもしれません。

 しかし天使が使う魔法では生まれ変わり先を決めることは出来ないのです。


 そこで魔法使い《ウィザード》になって困っている人を助けて貰うことを私は提案したのです。

 魔法のステッキで人を助けた時に、ステッキに込めた想いをちょっとだけ貰います。そうして魔法のステッキに想いの欠片を集めて行きます。

100個……いや50個!!あっ、でも、30個くらいかも……そのくらい欠片を集めると神様に願いを叶えて貰えます。

 魔法使い《ウィザード》の特権です。


 生まれ変わって再びおじいさんと暮らすためにメメさんは魔法使い《ウィザード》になることを決めたのです。

 こうして芝犬魔法使い(ウィザード)……いえ、芝犬魔女(ウィッチ)が誕生したのでした。


 ツバの広いとんがり帽子を被り。襟の大きなマントを羽織って、口に星飾りの魔法のステッキを咥える。

 いつものメメさんのスタイルとなりました。


 困っている人を助けるため、そしてもう一度おじいさんに会うために……

 芝犬魔女(ウィッチ)のメメさんは今日も元気に散歩パトロールだ。

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