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【雨城蝶尾】さしずめ戦利品の見せ合いっこってとこかしら?

「おぉ〜、あったけぇ……。外観と内観のギャップについては文句しかわかないが、囲炉裏はいいな」


 囲炉裏を囲んで、セレーヌが夜ご飯を作る。


 セレーヌはご飯も作れるし、有能なのである。


 そう、なんてセレーヌは有能なのだろうか!



「なによ、最初は『な…………なんで……囲炉裏?』なんて言ってたのに」


「それについてはすまん、セレーヌセレクトだからな。文句を言って悪かった」



「ちょうど囲炉裏なんだから、おかゆでも作ろうかと思って。お味はどう?」


「うめぇ!」


 シンプルな卵入りのおかゆ。


 だが、それが一番おいしいものなのだ。


「もうちょっと味わって食べなさいよ」


 がつがつと食べるルノをセレーヌは諌める。



「ごちそうさま! うまかった」


 ルノはカランと軽やかな音を立てておわんを囲炉裏のふちに置いた。


「あら、それはよかった」



「そういえばさ、セレーヌはなにを買ったんだ? 俺さ、いまいちまだ見てないんだよね」


「あら、さしずめ戦利品の見せ合いっこってとこかしら? いいわよ、受けて立つわ」


「なんで戦いになってんだよ。でも、いいぞ。俺からも受けて立つ」


 なぜか競争心がわいている二人である。



「じゃあ、まず俺からだ。その一、無理矢理買わされたリップ二つ」


「ああ、あったわね。いいじゃない、使いなさいよ」


 ルノがうえー、という顔をしたが、おかまいなしなセレーヌである。


「使うのはヤダー」


「あら、もったいないわね。あ、次は私のターンだわ。その一、ネイルシールよ」


 セレーヌがラメが入ったキラキラと光るネイルシールをかかげる。


 淡い桜色の、セレーヌとルノの瞳の色と同じ色のものである。


 茶髪のセレーヌによく似合うものであった。


「……なあ、それ、どうやって使うんだ?」


「こうやって、爪に貼り付けて使うのよ。ルノにも貼り付けてあげるわ」


「うわあああいらねぇからこっちくんな」



 ルノは抵抗したが、どうやら意味はなかったようだ。


 少し経つころには、すでにルノの爪はラメが入った桜色に染まっていた。


「だから俺は男だっての」


「そういう問題かしら? ふふ」


「ひでぇなぁ。あ、次は俺のターンか。その二…………もうない」


 紙袋をごそごそとさぐったあと、悲しそうにセレーヌを見る。



「ルノはリップの店で時間食っちゃったものね。じゃあ私のばんだわ。その二、カラコンよ」


「カラコン? なんだそれ?」


 セレーヌは紙袋をごそごそとやってカラーコンタクトを見せた。


 黒のカラーコンタクトである。



「カラーコンタクトの略よ。これを目に入れて、目の色を変えるの。なぜか二人前あるわ」


「うへぇ〜、痛そう」


 カラーコンタクトを手渡されたルノは目を細めて顔をしかめた。


「あっ、やべ! なんか折れた!」


「ちょっとルノ、なにしてるの! 私のお金で買ったものなのに!」


 カラーコンタクトはくにゃりと折れていて、目に入れて使えるようなものではなくなってしまった。


「うーむ……すまん」



 姫騎士であるセレーヌはルノまでとはいかないものもそこそこもうけてはいる。


 剣を使って、魔物や魔獣を狩っているのだ。


 いろいろな村をうろうろするルノとできるだけ広範囲で魔物や魔獣を狩りたいセレーヌでは、利害が一致する。


 それによって、ルノとセレーヌは一緒に行動するようになったのである。



「私が頑張って貯めたお金よ! はらってちょうだい!」


「すまん……ほら、この前の荒れ地のところのお布施で足りるか……?」


「ええ、それでいいわよ」


 それにしても、片方だけになってしまったカラーコンタクトはどうするのか。



「…………そういえばこれ、片方だけだからオッドアイになるんじゃないかしら?」


「オッドアイ? なんだそれ?」


「両目の色が違うことよ」


「……ふぅ〜ん」



 興味がなさげなルノは、まだ知らないだろう。


 このカラーコンタクトに救われることがあろうとは……。

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