【雨城蝶尾】魔力暴走の為せる技
そこからは、本当に早かった。
ルノの魔力が暴走したのである。
ルノは仲間が傷つくことが嫌いだった。
セレーヌは無益な殺生が嫌いだった。
ルノはサントに魔力を渡したため、まだ少ないはずだったのだが。
サントの首から流れ出た魔力がルノに吸収されたのだ。
そして、サントの死を理解したルノの魔力の増幅。
ゆらぐ空気が、瞳に映るかのようだった。
檻のロック。
セレーヌの拘束。
部屋の鍵。
すでに『ルノではない』ものに近づきつつあったのかもしれない。
すべてすべてを破壊の限りを尽くした。
部屋の魔力で作られたものはことごとくルノの魔力によって溶かされ、そしてルノの魔力へと変わっていったのである。
「…………! ルノ!」
セレーヌは止めようとしているようだが、この状態では止められまい。
このままでは、あまりに強い気配が、ヴェレニケを呼び寄せてしまう。
「ルノ! 起きて……」
近くにいるセレーヌとしては、息が苦しい、ただそれだけに尽きる。
「……ノ! ルノ…………。ル……」
だんだんと声は小さくなっていき、それに合わせて断頭台から解き放たれた身体を動かして、次第とルノから離れていった。
セレーヌが、苦しげに顔を歪める。
「……もう、やめて……。はやく……」
そう言って、暗室の隅へと寄る。
「…………まぶしいよ。おちついて……」
ルノの魔力が少しずつ発光し、暗室にいた目と合わずに眩しいようだ。
あまりに強大な魔力は、制御が必要である。
抑える力がなければ、人死にも出かねないのだ。




