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【花浅葱】三人と因縁の絡み合い

 ルノが王都中を周って、ヴェレニケを探している一方、セレーヌは───。


「休んでいる暇はないけれど……」


 立ち寄ったのは、王都だった。




 ***




 現在、王都にはこの物語を動かす『ルノ・セレーヌ・ヴェレニケ』の3人が集まっていた。


 それぞれが邂逅するのは別として、王都に集まっているのはなにかの運命だろうか。3人を結びつけるものは「因縁」だ。


 因縁という網に雁字搦めになったルノとヴェレニケ。


 その網に巻き込まれたのが、セレーヌであった。


 一度、この『因縁』の網に絡まってしまえば、抜け出すことができない。


 どちらかが、『因縁』の届かぬ場……、例えばパラダイスやゲヘナなどに行ってしまえば、その「因縁」の網も解かれるだろう。


 ───お互いがお互い、その「因縁」に縛られているようじゃ幸せになれないのだから。




 ***




 王都を走っていたセレーヌが、ふと足を止める。


「セレーヌ?」


 その場に留まった理由。


 それは、名前を呼ばれたからだ。



「久しぶり、ずっと会いたかったよ」


 セレーヌの名前を呼んだ、肌のキレイな人物───ヴェレニケは自らの護衛を退かしてセレーヌに近付く。


「ヴェレニケ……か」


 セレーヌは、そう呟いた。


 そして、こう叫ぶ。


「ルノをどこにやった! 解放しろ!」


 セレーヌの上品さが失われるほどに荒れた言葉遣い。


 だが、それはルノが失踪したことによる溜められた不安や焦りがセレーヌの心のダムを決壊させ、溢れ出た証明だ。


 ───だが、ルノの誘拐に一切ヴェレニケは関わっていない。


「はて、なんのことだが。私にはわからない」


「白を切るな! お前がルノを誘拐したことはわかっている!」


 荒々しくセレーヌはヴェレニケを糾弾する。


 ルノを誘拐されたという焦りが、セレーヌをただ突き動かしていた。


 キャラ崩壊とも言えるこの口調に、ヴェレニケは自分が知らない裏でどんなことが起こっていたの大半を察した。


 ───これが、絶望への1歩。



「ふふふ……バレてしまったなら、しょうがないか」


 ヴェレニケはやはり、いつものように嘘をつく。


「セレーヌ、ルノに会いたいか?」



 ヴェレニケはセレーヌに問う。


「もちろんよ」


 口調が若干戻ってきたセレーヌは、一度だけ頷いた。


「なら、私に付いてきなさい。」


「───ッ」


 そんな、命令。


 いや、従わなくてもいいので「命令」とは少し違うだろうか。


 だが、「提案」でも「司令」でも「提案」でもないので最適なのは「命令」であった。


 セレーヌは、一瞬迷った。ヴェレニケが、何をするかわからなかったからだ。


 セレーヌではなく、ルノに。「───どうして、あなたに付いていく必y───」


「付いてこないなら、ルノは殺す」


「───ッ! クッ」


 セレーヌは、一歩進む。


「これ以上、お嬢様に近付くな」


 護衛の一人が、セレーヌの腕を掴んだ。


 護衛の、丸太のように太い腕。


 セレーヌの細い腕など一瞬で折ってしまいそうだ。



「──付いていけば、ルノに会わせてくれるの?」


 セレーヌの質問に、ヴェレニケは歪な笑みを浮かべる。


「えぇ、会わせてあげるわ」


「───その言葉、忘れないから」


「では、捕えよ」


「「ハッ!」」


「なっ!」


 護衛の2人が、セレーヌの体を縄───否、鉄線と鎖で縛る。


 そして、簀巻きにされたセレーヌを担いだ。


 一体、こんなに重い鎖を体のどこに忍ばせていたのだろうか。


 セレーヌにはわからない。


「では、馬車まで戻って本邸にまで戻りましょう」


「「ハッ!」」


 ヴェレニケの後に続いて、護衛は着いていく。


「あ、セレーヌさん。私は、ルノの居場所を知りませんので。あなたを囮に呼び出します」


「───ッ!騙したな!」


 また、言葉が荒々しくなる。


 もう、セレーヌのメンタルは崩壊しているので性格だってブレブレだ。


「騙してなんかいません。あなたを囮に呼び出すのだから『いつかは』会えますね。それが、いつになるかはわかりませんし生死さえも不明ですけれど」


 ヴェレニケの脳内には、ルノとセレーヌの生首が2つ並んで自分の領地に吊るされている絵が浮かんでいた。


 持ち前の冷静さを失ってしまったセレーヌ。



「私の従者が一人逃げてしまったけれど、帰ってこなくても問題はないでしょう」


 持ち前の狡猾さを失わなかったヴェレニケ。


 ───その2人の差は大きかった。




 ***




 ルノは、王都中を歩き回っていた。


 もう、帰ってしまったのだろうか。


 サントを捨てて、領地に戻っていったのだろうか。


 そんな、迷いが胸によぎったその時だった。



「───!?」


 すれ違ったのは、余りにも見慣れた少女。


 縛られ、筋骨隆々とした護衛に担がれていた少女───セレーヌだった。


「───ッ! セレーヌ!」


 ルノは、少女の名前を呼ぶ。


 相手も、その声に気付いたのかルノの方向を見る。


「ルノ!?」


「おい、待て! どこに行く!」


 3者が、ここ王都で邂逅する。


 やはりルノ達3人は『因縁』に縛られていた。


 複雑に絡み合ったそれは、いつまでたっても解くことはできない。


「あら、お望みのルノに会えました。って、着てるのは私のいなくなった従者の服に似てますね」



 ヴェレニケはそんなことを言いながら、クスクス笑っている。


 ルノの考えた作戦は、全て水の泡になってしまった。



 そして、ルノがあげた4つの問題点……。


 1.誘拐犯から逃げる。

 2.セレーヌと合流。

 3.ヴェレニケを説得。

 4.サントを助ける。


 が、全て一つにまとまってしまった。


 1番と3番の問題点は、この前1つにまとめた。


 だが、そのまとめたものは、2つ目の問題点までも吸収した。


 後は、4番。


 それは、1番を否定することで解決する。



「んだよ……おい! 無視をするな、おい!」


「ルノ、私は待っている。もう一度きなよ、私の領土に。決着をつけよう」


 どこかデジャヴのようなセリフを、ヴェレニケは吐く。



「私のいなくなった従者も連れてきてくれると嬉しいかな」


 そう、ヴェレニケは付け加えた。


 ───そして、ルノを無視して先に進んでいった。


 ルノは、何もできなかった。


 ヴェレニケに何かを言い返すことも、セレーヌを救うことも。


「なんなんだよ、アイツのいいなりじゃないか……」


 そんなことを言いながら、ルノはサントのいる誘拐犯の馬車に戻った。


 ルノは、汗をグッショリかいていた。


 服を汗で濡らしてしまい、サントに怒られている自分が容易に想像できた。

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