【雨城蝶尾】ヴェレニケの正体を知っている者
この世で『ヴェレニケの本当の性格』を知っている人は、ごく少数に限られる。
ヴェレニケの両親も知らないこと。
さらに、ルノの婚約者でもあった、姉のペルラも知らないことなのだ。
まず、ヴェレニケの側近である。
ヴェレニケは、自身の側近にきつくあたっていたのだ。
些細なことで足蹴にしたり、暴言を吐いたり。
それが周りにバレないよう脅したり。
親にも、姉にもそれが見つからないようにギリギリまで加減したり、見つかりやすいような傷は作らなかったり。
もともとヴェレニケは頭がよかったから、行き当たりばったりなことはしなかったのだ。
だからこそ、『ヴェレニケの本当の性格』を知っている人は少ないのかもしれない。
それ以外で知っているのは、ただ一人に限られる。
それはルノである。
ルノの観察力は、時にして極まるのだ。
見抜き、そしてなるべく被害を被らないように気をつけたのである。
ただ、ルノはルノなのである……。
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「で、ヴェレニケ探さんとだな」
王都をうろうろとしながら買い物をして、一目見た程度では騙せるような、サントの格好によく似た姿に変わっていた。
ルノは金髪であるがサントは赤髪であるため、かつららしきものを買い。
さすがに貸してもらうことができなかった靴、下着のたぐいを買い。
サントの瞳は茶色であるため、ルノの桜色の目を隠すためにカラーコンタクトを買い。
ルノが持っていたお金はずいぶん減ったが、ヴェレニケが捕まるなら安いものだ。
で、ヴェレニケを見つけてなんとか護衛を撒いて、ヴェレニケに正体をバラしたまま逃亡し、刺客を向かうことによってセレーヌにルノが見つかったことを伝えさせる計画だったのだが……。
だったのだが!
まず、ヴェレニケが見つからない。
もしかしたらこの街にはまだ入っていないのかもしれない。
「な〜、セレーヌがいたらな〜」
と。
どこかフラグのような言葉をつぶやいて……。




