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【雨城蝶尾】今ここにいる理由とその過去

「なぁ、セレーヌ。これいつ着くんだ?」


「さぁ……。私もヒュンハルト王国に帰るのは久しぶりだからわからないわ」



 すでにドレスロードは出て、ほかの町々を経由しながらヒュンハルト王国にむかっている。


 ドレスロードから出て数日、といったところだろうか。


 ルノもセレーヌも、ヒュンハルト王国側にバレないようにこっそりと帰らなければならないのだ。


 またあの領主から使者が来たならば、たまったものではない。


 だからこそ、ルノは聖女の仕事ができない。


 足あとを残してはいけないのだ。



「さすがに仕事できないのはきついってぇ……なぁ…………」


「仕事がしたくない人なんて山ほどいるわよ。幸せな悩みね」


「ちがう。俺が言っているのは金の問題だよ」


「あぁ、それはわからなくもないわ。でも私のかせぎがなくはないじゃない」


「そうだけどさぁ〜」


 やはり、セレーヌのかせぎは少ない。


 そして、魔物が出てこないときはかせぎはなくなる。


 非常に不安定な職業なのだ。


 さすがにセレーヌの魔物狩りだけで二人を養うことはできない。


 現在、ルノとセレーヌは『貯金切り詰め状態』なのだ。


 また、宿もできるだけ安いところを選んでいるため、悲惨なのだ。



「その、ルノ……」


「なんだ?」


「例の件については……」


「あぁ、昔の話な。話したほうがいいのか?」


「私はルノが聞かせたくなければ聞かなくてもいいけど、聞きたいとは思うわ」


「じゃあ、話すか……」


 どこか空気が重くなったような気がした。


「俺はさ、元々貴族だった。これは言ったよな?」


 そうルノが言うと、セレーヌがコクコクとうなずいた。


「貴族っていうのも、男爵子息だったんだ。五爵では最下層な」


「それでも、すごいじゃない」


 貴族は絶対権力だ。


 セレーヌはすごいと感じたようだが、ルノは聞こえなかったかのように話を進める。


「で、今は平民と同じような生活をしてるわけ。なんでかって言うと、男爵家を勘当されたから」


「…………」


 セレーヌにはわからなかった。


 勘当される、それも親に勘当されることが理解できなかった。


「俺ね、子爵令嬢と婚約してたんだよ」


 すべて、セレーヌにとって初耳だった。


 婚約者がいたことも、聞いたことがない。


「でも、一方的に婚約破棄されたんだ。今考えたら子爵家ってとこでなにかの罠だったのかもなと思ってる」


 ただ伝えられる淡々とした事実に、セレーヌは声が出ない。


「まぁ、子爵家の力に頼っていたっていうのもあるんだけれど、男爵家は没落しかけたんだよ。だから原因は俺とされた」


 そうか、罪をおしつけられたのか、とセレーヌは思ったのだ。


 かけらもルノは悪くないと。


「ルノは、悪くないじゃない。男爵家から勘当するのはおかしいのではないのかしら?」


「さあな。俺にはわかんねぇ。俺はもう男爵家の身じゃないからな」


 ルノは『設定上平民出』と言って、ぼんやりとしている。


 どこか、重苦しい空気を感じた。

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