その後
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「俺は……俺は君になんて謝れば……」
クリフォード殿下が項垂れたまま、呻くように仰います。
先ほど殿下と互いの想いをつ、告げあってからその、……わたくしが目を覚ますと、そこは恐れ多くも殿下の寝台でございました。
さすがにあらぬ誤解と醜聞を避けるため、寝台にいる間はエヴァン様と我が家の侍女であるマリーナが側で控えてくださっておりましたが今は退出し、わたくしも応接間のソファーに戻っております。
殿下は、口下手で辿々しいわたくしの話を根気強く聞いてくださっていたのですが、他のご令嬢の話題になった途端、力無く項垂れてしまわれました。
「殿下、どうかお気になさらないでください。わたくしの態度が頑なだったのは事実ですし、他のご令嬢方が大変すばらしい方々であるのもまた事実ですので……」
先ほど、殿下から行動の意図をご説明いただきました。
わたくしとしては殿下のお気持ちも痛いほどわかりますし、むしろ不安にさせてしまったことに心を痛めるばかりです。
お姉さまへの中継ぎのつもりだったとはいえ、さすがに至らなかったと反省しております。
しかし、殿下にとってはそうではないようで
「リア、これからはきちんと正々堂々、君に気持ちを伝えることが私から君への誠意だ」
そう仰いながら傍にいらっしゃったかと思うと
わたくしの頬に触れながらとろけるような笑みを向けてくださいました。
「この白磁のような頬にずっと触れたかった。リア、これからは疑問や不安に思うことは全て話して」
いいね?と念を押してくる殿下はとても素敵で、わたくしからは輝いてすら見えるのですが……!
頬に熱が集まるのを感じながら、わたくしは精一杯頭を垂れ、了承の意を示します。
……ああ、どうしましょう。
殿下は先ほどああ仰ってましたが、お姉さまと両親の件は何も解決しておりません。
両親があれほど頑なにお姉さまを推す以上、“その前提”で動いていらっしゃる諸侯もいらっしゃるでしょう。
殿下との未来を、諸手をあげて迎えられる道筋などまだまだ立っていないのです。
それなのに、心が通じ合ったというだけで、その上で殿下に触れていただけるだけでわたくしは天にも昇る気持ちになってしまうのです。
殿下はわたくしの顔を見て、くすりと微笑まれました。
「リアのその顔、ずっと見たかったんだ」
そう仰いながら口づけを落とす殿下のお顔が幸せを噛み締めていらっしゃるようで
「わたくしも、殿下のそんなお顔が拝見できてとても嬉しく存じます」
殿下と2人なら、なんとかなると思えたのでした。