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悪魔との契約

 かなり前に書いた物ですが、新たに様々な要素を入れて、投稿しようと思いました。暇潰しにでもなればと思います。

 この村は貧しい、人々は日々の食事にも事欠く次第。親は子を売り、家族を養う。何故俺がこんな世界に来たのかと言うと、それは悪魔に魂を売った代償だ。


 それは俺がまだ日本と言う国で暮らしていた時の事だ。国を怨み、家族を怨み、世の全てを呪った。

 俺は親の顔を知らない、知って居るのは親の代わりをしていた夫婦だけだ。そいつらは里親制度と言う制度で支給金欲しさに俺を引き取り、俺を奴隷の様にこき使っていただけだ。

 そいつらは凡そ考えられない悪事ばかり働く屑だ。保険金詐欺を日常の様にしながら、国の生活保護を受給し、俺に万引きをさせていた。とりあえず保護士から目を逸らす為に辛うじて俺を学校には行かせていたが、そんな物ただの茶番だ。

 

 やがて俺はグレて奴等に負けない程の屑になった。そして俺は、極道の幹部でありながら、親父の仮面を被るあいつを殺す術を得た。それは魔法、つまり黒魔術だ。あの世界は魔法が無い筈だが、実は有った。俺はその黒魔術を使い、あの夫婦を殺した。


 だが代償は有った、悪魔は俺にとある条件を出した。どうせ屑の命だ、幾らでもくれてやろうと思ったが、悪魔が出した条件とは、俺にとある世界で魔王となる事。

 俺はその響きが面白くて、その条件を受け入れた。どうせこの世界で一度なった屑だ。その屑の王になるのも良いだろうと思った訳だ。


 悪魔は俺に契約魔術を施した。悪魔は契約に従い、俺の仮初の両親を殺す。それを見届けた俺は、逆に異世界に行って魔王となる契約だ。

 なれるかどうかは解らないけど契約だから出来るだけ頑張ると言うと、悪魔は俺なら魔王にその世界でなれると言った。

 理由を聞いたが行けばわかると言うだけだった。


 契約は成された。俺は仮初めの両親の死を見届けたと同時に、その世界での生を終えた。悪魔は俺を異世界に送ると言う禁忌を犯した事で絶命した。それ程異世界召喚とかは代償が大きい様だ。

 気がつくと、俺はこの村の子として、新たな生を得ていた。そこは魔族達の住む村、人と言う種族に支配された、魔族の住む村だった。


 俺はその村で、鬼ヶ(おうが)の子として産まれた。両親も当然オウガだ。俺は契約のせいか、前世の記憶を持ちながら生まれることが出来た。そして、何故この村が人の支配を受けて居るのか最初理由がわからなかった。

 年月が過ぎ、俺が3才になる頃に、ようやく理由がわかった。

 この世界にはかつて勇者と呼ばれる者がいた。それは異世界人だった。恐らく異世界から召喚された勇者が、この世界のバランスを崩したのだと俺は認識した。


 古い伝承によると、この世界には、魔人、人、獣人の3種が居て、其々覇を競い有っていたと言う。魔人は人の知恵を持ち、魔族の魔力を有して居る者。これは一番強いらしい。

 人とは叡智有る者、賢者と呼ばれる者になると、凡ゆる魔法を使いこなし、魔人と同等の力を得る。

 獣人とは、叡智は無いが、それを補って余り有る身体能力を得て居る。獣魔人ともなると、優れた身体能力と、身体強化魔法を使い、やはり魔人並みの戦闘力を得ることが出来る。この三者が、魔王、賢王、獣王として、それぞれの種族の王として君臨していた。


 だがかつての賢王は、このバランスを崩した。禁忌とされる召喚魔法を使い、異世界から勇者を呼び寄せた。その勇者は人であった。だが人の身でありながら、魔王を凌ぐ魔力を持ち、獣王を凌ぐ身体能力を持ち、そして賢王を遥かに凌ぐ叡智を持っていた。

 やがて勇者は獣王国を蹂躙し、魔国をその支配下に収めた。そしてその勇者はこの世界で子を成し、その子孫達は、勇者に匹敵する力を持ち、今に至るまでこの世界に君臨している。


 獣族と、魔族はそれ以来、人族の奴隷として、この世界に有る。俺はそんな世界に飛ばされたって訳だ。この世界で魔王になる、それはつまり、勇者の一族を倒せと言う事だ。


 


 この魔力の無い俺に、一体何をしろって言うんだよ? あの糞悪魔め!


「リゼル、早く行かないとまた先生に怒られるよ!」


「え? ああ、今行くよ、リンゴ」


 今俺はリゼルと言う名を親から与えられている。俺の上に姉が居たらしいが、それはとっくに人の貴族の奴隷として売られて居る。俺が産まれた事で、食っていけなくなったからと言う事だ。

 この魔族の村では男は労働力、女は性奴隷としての受容が有るらしい。だから男はある意味しっかりと育てられ、女は売られると言うのが一般的だ。特に容姿の良い女は直ぐに売りに出される。まあブ◯は売られずにこうして…..


「何….人の顔ジロジロ見てるのよ!」


「あ、いや、なんでも無い」


 売られずに俺たち労働力の子を産む役割を与えられると言う流れだ。今俺は生まれてから6年の月日が流れて居る。本来魔族なら、このくらいの年齢になると、生活魔法の一つは使える物だ。ところが俺には魔力が無いらしい。本来あり得ない事らしいのだが、そんなもん知るか。無い物は無いんだ。

 通常魔族で魔力が無い者など存在しないらしい。人ならばそれなりに魔力が無い者は存在しているらしいのだが、俺は両親のどちらかの先祖に人がいたのだろう、それの遺伝だろうと軽く片づけられた。

 その昔ならとっくに村から追い出されて居たらしいが、今は人の支配が及んでいる。オウガは力が有るので、労働力としては使い道があるし、俺に子が出来れば魔力が無いオウガで色々と使い道があるだろうと、人種の村長が俺をこの村に置いて育てる様にと取り計らったらしい。


 この村には俺たち魔族が通う学校が有る。それは隣町にあるのだが、勿論人種の子も通って居る。立場は当然人種の子の方が上で、俺たち魔族は人種の子のパシリとして学校に通わせて頂いて居ると言う事だ。勿論そこには同じパシリ役として、獣人も通って居る。よく有るラノベの金看板で有る、人と魔族と獣人が手を取り合って仲良く暮らす世界がここには有る訳だ。当然それはそんな甘い物ではなく、人に支配されて居る、魔族と獣人族と言う構図だが。



「早く用意して来なよ、もう行くよ!」


「ああ、わかった。今用意してくるよ」


 この世界で俺は初めて親の優しさと言う物を味わった。確かに両親は姉を売った。だがそれは貴族に逆らえないからだ。実は両親は非常に優しい者達だった。


「行ってくるよ」


「お弁当は持ったの? リゼル」


「ああ、大丈夫」


「じゃあ気おつけてね、人様には逆らっちゃ駄目よ」


「判ってるよ」


 人様と言うのは人間種の事だ。俺は以前人の子に逆らってぶん殴ろうとした。だがリンゴに必死に止められた。もし手を出してしまえば両親が俺の代わりに裁かれる。下手をすると死罪だ。だから抑えた。だがこの世界は理不尽極まりない、つまり、俺が以前召喚した悪魔はこの世界の者だったのだろう。だからこの世界で俺を魔王にしようとした。この境遇を変えたかったのだろう。

 残念な事に、俺には魔力が無い。魔力が無ければ俺は力の強い人間と何も変わらない。奴は俺に言った。俺ならこの世界で魔王になれると。だが魔力が無いのにどうやって魔王になれと? 無理だ。確かに俺には向こうの世界の知識が有る、だからこの世界でその知識を使えば多少の事は出来るだろう。だが人種との戦闘にその知識が役に立つかと言えば、それは無い。アニメや小説の様には行かないんだ。


「リゼル、行くよ!」


 この村から隣り町までは歩いて30分程だ。リンゴも俺もオウガだ。体力は人以上に有る。だから30分走れと言われれば問題なく走れる。

 また人の子よりは体力も有るし、身体も発達している。背も大きいので、同学年の人種と喧嘩した所で負けはしない。ただ見た目はツノがある以外は人種と変わらない。魔族とは人種の変異体だと言うが、言われればそうなのかもしれない。またそれは獣人も同じだ。特徴的な耳と尻尾などはあるが、それでも外見は人種と大きく変わりは無い。


 ロアンの町に着いた。ここはレンブラント ロアン男爵の治める町だが、元々は魔族の町だったらしい。学校の教師は皆人種で有り、現在は言語、歴史、活字なども全て人種の物を教えられる。両親に話したが、特に歴史については人種側の全て捏造で有り、人種に都合の良い偏った物だと言う。まあ歴史何て物は何時でも勝者側に都合良く捻じ曲げられる物だ。


 学校に着くと、さっそくムカつく野郎と出くわした。以前俺が喧嘩したロアン男爵の次男、ソレル ロアンの取り巻きで、ファインだ。


「おいリゼル、教室まで鞄を持て」


「….はい、ファイン様」


 つまりこう言う具合にパシリ扱いして来る訳だ。俺は以前あまりにも酷い要求をされたので、断った。それで喧嘩になった訳だ。


 教室に着くと、ムカつく3屑トリオが揃い踏みしていた。3屑トリオとは、筆頭にソレル、アニータ、ミリアと言う屑達だ。

 アニータは、アニータ マーセナルと言う。準男爵の娘で、ロアン男爵の一族だ。ミリアはロアン男爵家の筆頭騎士の娘で有り、騎士爵位に有る。リンゴは特にこのミリアに虐められていた。身体の大きなオウガの娘なだけ有り、剣の練習台をさせられて居る。


 俺はいつか爆発して、コイツらを殺すだろう。俺の前世がそう言って居る、早くコイツらを殺せと。


「ハイ席につきなさい!」


 教師だ、教師も人種で有り、やはり貴婦人が勤めて居る事が多い。


「今日は教科書の86ページからです。リゼル、読みなさい」


「ハイ、召喚された勇者ヒロヤ様は、大賢者マーリン様、大魔法士ミリー様、聖女セナ様を共に加え、大魔王ロゴス討伐を決意した。大魔王ロゴスは、多くの人を無慈悲に殺害した、極悪非道な魔王だった。虐げられる人々、女性は弄ばれ、年寄りは殺され、若者は奴隷として扱われていた。

 獣王ダイスもまた、同様に人々を弄んだ。大賢者マーリン様は、この様な残虐非道な魔王や獣王を野放しには出来ないと、禁忌とされる秘術を使い、敢えて汚名を自ら被る事にし、勇者ヒロヤ様を召喚したのだ」


「ハイそこまで、この様に、かつての大魔王ロゴスは、無慈悲に人々を虐殺し、また凡そ人を人とも扱わない非道を行っていました。これはまた獣王ダイスも同じです。ですが心優しきヒロヤ様は、元凶はあくまでも魔王や獣王、そしてそれに従属する者達で有り、魔族や獣族の一般民衆では無いとし、現在こうして魔族も獣族も共に平和に暮らせる世の中を造られたのです。つまり魔族や獣族は、特にこの勇者様に感謝し、この平和な世界に貢献しなければなりません」


 全て捏造だろう、だから魔族や獣族は人族の奴隷になれってか? 仮に歴史が正しいのなら、お前らは立場が入れ替わったに過ぎないだろう? くだらねえ……


 その時、教室のドアが勢いよく開かれた。 


「大変です!」


「何事ですか!?」


「ロゴスです! ロゴスの連中が徒党を組んで町で暴れています!」


「何ですって!?」


「直ぐに避難してください!」


 ロゴスと言うのは、魔族や獣族の一部が結集して組織された、反人族を掲げた秘密結社だ。魔王ロゴスの名を冠して居る。だがあいつらがこんな田舎町まで来る事は普通有り得ない。何故こんな田舎町に奴等が現れたのか? だがこれはチャンスだ。俺はどさくさに紛れて、3屑の奴等を抹殺する事にした。


 避難は遅々として進まなかった。皆がバラバラで、それぞれ好き勝手に逃げて居たからだ。普段ロゴスがこんな所まで来る事は無い、なのでこう言う時の避難訓練などやっていないからだ。


「早くしなさい! こちらです! 獣族と魔族の男子はか弱い人種の女子をおぶりなさい! 獣族魔族の女子は荷物を背負いなさい!」


「もうそこまで来ています! 早くして!」


 校庭を見ると、複数の顔を布で巻いた者達が、教師達を殺害していた。教師達も応戦して居るが、当然体力では獣人に及ばず、魔力では魔族に勝てる訳がない。それに戦闘訓練をして居る者ならまだしも、平和に慣れた教師達が戦う術など知る筈も無い。戦いは一方的な物だった。


 

「何故こんな学校になど!? 皆早くしなさい!」


「リゼル! 私をおぶって走りなさい!」


「わかりました、こうですね!」


 ガァァン!


「ギャァぁぁぁ!」


 俺はアニータを思い切り蹴飛ばした。アニータはそのまま吹っ飛んで、木のロッカーを壊しながら教室の外に突っ込んで行く。見ると頭からは血を流し、右腕が曲がってはいけない方向に曲がって居る。


「おいリゼル! テメエ!」


「ファインか! 死ね!」


「ゴファ! あぁぁぁぁぁ!」


 ゴロン!


「キャァァァ!」


「簡単だ! 簡単に首が折れるな! お前ら人間は弱い癖に! いつまで俺たち魔族を従えられると思って居る!」


「そこまでだ!」


 リンゴの首元に魔力光が見える、教師の1人がリンゴを人質に取っていた。


「動くな! リゼルを取り押さえろ!」


「ファ….ファインの仇だ!」

 

「よ、よせ! ソレル!」


 ソレルが炎魔法をリンゴに放った。俺は咄嗟にリンゴの前に走り、リンゴを押さえつけて居る教師を思い切り蹴り飛ばし、腕を交差させて魔法を防いだ。当然俺は腕が丸焦げになる、筈だった。


 パシン!


「な!? 何!」


「何だよそれ?」


 ソレルや教師達が驚くのも無理は無い。俺自身も何が起こったのかわからない。だがソレルの放ったファイヤーボールが、俺に触れる前に弾け飛んだ。いや、まるで掻き消えたと言う感じで、文字通り消えたのだ。


「アンチマジックフィールド!? 馬鹿な、あんな古の古代魔法を何故貴方が!?」


 知らない、俺はアンチマジックフィールド何て魔法も知らなければ、そもそも俺に魔力は無い。


「そんなもん偶然に決まって居る! お前たち! リゼルを一斉に攻撃しろ!」


 だが結果は同じだった。全ての魔法は俺に触れる事無く、目の前で全て掻き消えた。文字通り、俺は魔法に対して絶対的な耐性を持っていた。


 



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