”銃狩り”
パァン パァン
トリガーに指をかけ、……引く。
人体を貫く弾が発射され、人は大きな傷を負う。
『こらこら……』
そういう優しい言葉では止められるものじゃない。
世の中には様々な常識がある。世の中の常識を見比べれば、非常識もある。
誰もが簡単に人を殺める。それも過敏に恐れるほどのこと。
パラァッ
「安産桃尻時代だったか忘れちまったが。猿秀吉っていう総理大臣が”刀狩”ってのをやったらしい」
「どこの世界のお話をしているんですか?山寺光一。テキトーな歴史を教えないでください」
「役職も時代の名もなんでもいいだろうが、ギーニ」
日本の社会で危険物といったら刃物があり、それを取り締まる法律、罰則もある。
故に日常生活において人を殺める道具を持つ人間と出会う事は少ない。あくまで防犯レベルの玩具までだ。誰しも平和を望んでいるから、それが目に見える犯罪と言える。
一方で銃社会が当たり前である、国家から見れば。
そんな事があり得るのかと、疑うべきこと。夢の国って言ってもいい。
「日本人には分からないでしょうね。……我々に限らず、正義の機関が必ずしも国民の正義に沿ってくれるか分からない。銃を手放さないのは己を護るため。暗殺もあり、殺人もあり。そうして教養された者達にとって、銃を持たないとは裸で歩くと同じ」
「そーなのか。じゃあ、脱いでみろ。お前は大してエロい身体してねぇだろ」
パァンパァンッ
「ぶち殺すぞ、ニホンザル」
「あーあ。これだから銃社会は、怖くてからかえねぇし。嘘も許されねぇーな」
言葉よりも先に発砲が来たもんだから、おっかない。
丁度読んでいた週刊誌に2つの穴が空いて、もう読めもしない。
光一はさっき話した続きをジェルニー・ギーニに続けた。
「”刀狩り”ってのは一揆を抑えるためってのが有力で、武器を奪えば幕府に逆らう気持ちを抑えられるとな。農業に専念できるとも言われてるが……」
「我がアメリカは自由社会、移民国家。光一をこの政府上層部に入れているのも、こうした社会だからです」
パァンパァンッ
そう言いながら、ギーニは悪ふざけ半分で銃にこめられた残りの弾を彼に向かって撃ちつくした。光一を悪く言いながらも、その腕を買っており、重役のボディガードなどを任せている。
「見事です」
「弾のムダ撃ちはよくねぇぞ」
ペッ、と。口から銃弾を吐き出す光一……。
その彼を褒めたギーニは、彼が生きていたから次の理由を語った。
「私から見ても、政府とは正義ではないです。正義とは国民がそれぞれ思うことです。証言の1つや2つをもみ消す事が当たり前なのです……そして、それが無闇に政府に向けられない弾除けの一人として、あなたがいる」
役目は護ることと、上から降りる指示でのやりたくもねぇ暗殺、……派手な戦闘は好きだけど。
「お前等がしっかりしねぇと、国民に銃で撃たれるんだからな。ちゃんとやれよ?」
「分かってますよ。偉そうにするな」