Review.11:解明。
「ついたよ」
玖刻日報本社ビルの地下駐車場にセダンを停め、オレらは中に入る。
白を基調にした、シンプルかつ精練とした内装だ。
若森先生が、受付の令嬢といくらか言葉を交わした後、エントランスから更に奥に入る。
エレベータに乗り、三階へ。
そこの、会議室らしき場所で待たされる。
「その方も、高天原の生徒だったんですよね?」
綾瀬が、会議室に漂う静寂を破るように言った。
「まぁそうなるね」
先生がそう言った直後、
「お待たせいたしました」
一人の妙齢の女性が、会議室に入ってきた。
グレーのスーツをビシリと着こなし、いかにもキャリアウーマンといった風情だ。
どうにも記者には見えない。
「初めまして。玖日広報部の扇夕です。よろしくね」
にこやかな笑顔。
――うん、職上柄だな。
オレらもそれぞれ自己紹介する。
「藍造時君からもちろん話は聞いているわ、〈現象研究会〉の皆さん。私に出来ることなら何でもするわ。遠慮なく言ってね」
「だそうだ」
扇夕さんの台詞に、和歌森先生が絡んでくる。
「この人は、編集・情報収集のプロだ。過去の記事の検索なんかもちょちょいのちょいだよ」
先生の説明に苦笑いしながらも、扇夕さんは否定しない。
自信もあるようだ。
――ならば、頼んでみるか。
「すみません。じゃあ頼み事、良いすか?」
オレは、手を上げる。
「もちろん。何でも言ってちょうだい」
どんと胸を叩く扇夕さん。
ユーモアあり。結構気さくな人みたいだ。
「過去の記事の中で戦争に関わるものを、洗い出してくれませんか?」
「……分かったわ。やれるだけやってみる。一日の猶予をちょうだい。あ、アドレスも交換しておきましょう」
無理難題に不平も言わず、怪しまず、扇夕さんは頷いてくれる。
ありがたい。
「じゃあ、帰るか」
正味四十分ほどの対談。
実に実りあるものとなった。
これで、上手くいけば、解決の日はそう遠くは無い。
――深夜。
オレはみんなに秘密で、常平学園を訪れていた。
保健室へ向かう。
ノック。
すぐ扉は開く。
「来るんじゃないかとは思ってたんだよ」
藍造時先生は、いつもの白衣姿でニンマリとした。
薄暗がりの中で、紅茶を手にオレは先生と向かい合う。
「先生、まだ色々と知ってることありますよね?」
オレの刀をじろじろと眺め回す先生に問う。
「ん……そりゃあ、な」
曖昧な答えだな。
ま、それならそれで良い。
「野獣は、元は誰かの〈犬〉でしょう?」
先生の動きがぴたりと止まる。
「そして、奴が探しているのは、今は亡き飼い主だ。――違いますか?」
先生は、刀をオレに返しながら溜息をついた。
「大西を上回る発想力だな間」
その目は、嬉しそうに輝いている。
「その通りだよ。正解だ」
降参とでも言うように両手を挙げる。
「扇夕先輩に調査を依頼したんだろう?詳しくは明日にでも分かるさ。それより、その発想は何処から来た?」
「突飛な発想なんかじゃないですよ。仲ジィが色々と調べてくれたおかげでね、ばら撒かれていた符号が繋がったんです」
へぇ、と先生は素直に感心する。
「お前、町の裏の有力者とつながりがあったのか」
くつくつと笑い、先生は紅茶を傾ける。
「ま、解決は近いな。気をつけて帰れよ?――奴、今夜は、出るぜ」
藍造時先生の注意に覚悟を決めながら、オレは刀を握り締め、席を立った――
学園モノとか言っているクセして、その要素がまるで無いのではないかと危惧してます(笑)
大人の比率が高いような気も(^_^;)
…………ま、いいや(いいのか)




