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Review.10:回進。

はい。第十話ですね。

お付き合いしてくれている方、本当にありがとうございます。

もうしばし、お付き合いください<(_ _)>

では、どうぞ。

「あづい…」

「暑いな」

相も変らぬ暑さに不平不満を挙げながら、オレは空島と登校する。

さいわい、昨日は被害者は出なかったようだ。

授業を受けるも、内容が頭に入ってこない。


頭に浮かぶのは、野獣関連のことばかり。


酷似しているという〈ジェヴォーダンの獣〉。

黒き霞を引き裂いた時の、あの感触。

藍造時先生の言葉。

椿さんの言葉。

仲ジィの言葉。

玖刻市は昔からの学園都市。

常平学園の前にあった高天原高校。

その代から紡がれ続いてきた超常現象。

それは古からの思想思念。


――色々な思いが、オレの胸中に渦巻く。


「こら間、ぼやっとするな」

その思考が断絶された。

国語科の教師である若森が、こちらを睨んでいる。

「最近、まともに話を聞いていないようだな。……よろしい分かった、個人指導がお望みなのだな。それでは放課後、職員室に来るように。いいな?」

「……はい」

有無を言わさぬうちに、若森は授業を再開した。

あぁもう、また面倒臭いことに――



――んで、放課後。

綾瀬も、どうやら保健室に呼ばれているらしい。

それならおそろく、部長もだろう。

綾瀬に遅れると言伝してもらう約束を取り付け、オレは職員室に向かい、嫌々ながらも若森の名を呼ぶ。

「お、ちゃんと来たか間。よし、来い」

職員室から出てきた若森は、オレをそのままの足で応接室へと連れて行く。

正味、畳二畳半ほどの狭い部屋である。

そこには一人がけの茶の皮製ソファーが二脚。

若森と机を挟んで座り、向かい合う。

十秒ほど無言で睨みあっていると、若森の表情がふっと緩んだ。

「まぁそう睨まないでくれよ間。今日はお前を怒る為に呼んだんじゃあないんだ。さっきは皆の前で叱ったりして悪かったな」

脈絡がさっぱり分からない。

どうして若森がこうもニヤニヤしているのかも。

「話はだいたい創流から聞いている」

……藍造時先生から?

少し、衝撃を受ける。

――こいつ。

何を、どこまで知っているんだ?

「創流は、後輩でね」

若森が、藍造時先生の?

って事は、この人も高天原の生徒だったのか?

「さて、創流に呼ばれてるんだろ?ほら、行こう」

今回、オレ翻弄されてばっかだな、と心の中でつぶやきながら、オレは若森の背中を追った。



「失礼」

若森先生は、そう言いながらも、失礼なんて感じさせない態度で、保健室にズカズカと入り込む。

「あぁ、先輩ですか」

藍造時先生が席を立ち、親しげに若森先生を迎えるのを、先についていた部長と綾瀬の二人は胡乱な表情で見つめる。

オレはその二人に近づき、こそこそと藍造時先生と若森先生の関係を教える。

オレの説明が終わるのを見計らってから藍造時先生が、喋り出す。

「今日お前たちを呼んだのは、この若森先生と、もう一人紹介したい人がいたからなんだ」

小柄な身体に、よれよれの白衣の先生は続ける。

「もう一人にも連絡はつけている。これから若森先生が連れて行ってくれるから、会ってこい」

急な展開に戸惑いながらも、オレたち三人はついてこいと合図する若森先生の後ろを歩き始めた。


「……さて、十分解決の糸口はやったからな。あいつら、はたして気付いてくれるかね?」


独りになった藍造時先生が、そうつぶやいたのを、オレたちは知る由も、無い。



玄関前に止めてあった、若森先生の紺のセダンに乗り込み、オレたちは、常平を出た。

白石造りの坂を下り、玖刻市のメインストリートの一つである(とき)(わたり)通りを北上する。

「先生、何処へ向かうのです?」

助手席に座る部長が言う。

「ん、ちょっと玖日にな」


玖日。


〈玖刻日報〉の略である。

玖日は地元密着型の大手新聞社だ。

歴史も古いと聞く。

つー事は、藍造時先生が紹介しようとしているもう一人は、玖日の人か。


――オレたちを乗せた紺のセダンは、中央区に向かって、市内をひた走る。


今作品では、サブキャラの大人たちが続々と登場します。

それぞれが、自分の処女作品のキャラクターなんですね。

その作品では、高校生だった彼らも今では社会人。

作品の中で、時代の流れも書ける文士になりたいです。

…うわぁ、まじめなアトガキ(笑)

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