ラーメン?いえ蒲焼きです
ふと目が覚めた。
13時ちょっと前、朝方までだらだらとスマホを弄ってた割にはスッキリとした目覚めで気分が良い。
インスタントラーメンでも残ってないかと立ち上がり冷蔵庫側の戸棚に視線をむける。ベッドから冷蔵庫まで区切りのない狭い部屋ながら住めば都と狭さを苦にしたこともなく、戸棚に向かおうと一歩足を踏み出した。
―― コンコン
背後から明らかなノック音に動きがとまる。
ベッドの向こうはバルコニー、部屋干ししかしないし煙草も吸わない家庭菜園なんかも縁がない、入居してから風を通す以外に利用されたことのない場所である。
隣の人かな、、、
身構えたのは一瞬で、何かトラブルで部屋に戻れなくなったご近所さんかも知れないと振りかえりバルコニーをみた。
下からグラデーションになっているグレーのカーテン、その自分の胸元の高さにないはずの細長い濃いグレーの影。
「?」
人影がない。何かぶつかった音にしては
―― コンコンコンコン
考える間もなくまたはっきりとノック音がした。
どうやら細長い影の下側が当たっているらしい?ゆらゆらと揺れているのが見えるがさてはてゴミでも飛んできたか。物干し竿もおいていないが引っかかるところなんていくらでもあるだろう。
ベッドに膝をかけカーテンを開けながら鍵に手をかけようとして影の正体が目にはいった。
「………う、うなぎ?」
―― ガンッ!
「!?」
薄水色のうなぎが突然ガラスに頭突きしたもんだからビックリして開けかけの鍵を開けてしまう、いやいや開けちゃ駄目だろう!と慌てて閉め直す前にうなぎは器用に尻尾らしき部分でガラス戸をあけた。
『誰がうなぎであるか!!』
「?!??!」
するりと部屋に入り込みベッドにズッコケそうな俺の頭の上から声が聞こえた。うなぎじゃないならうつぼ、いやドジョウか?昔のマンガでこんなうなぎみたいな犬みたいな喋るのいなかったっけ、あれって実在した生き物がモデルだったのかな、いやそもそも流暢に喋るヒト意外の生き物って鳥ぐらいしかイメージも知識もないんだけど。
『聞いておるか?気絶されぬだけよいが固まられても困るのぅ』
見上げると頭の上をゆらゆらと泳ぐように回っている。やっぱりうなぎっぽい。
体を起こしてベッドに座り直し一度深く呼吸を吸い込んでゆっくり吐き出した。
「うん、腹減った」
『なんじゃ飢えで動けぬのか、待つゆえ満たすが良い』
ゆるりと微笑むうなぎに表情があるのかとひどくイラッとくる。のの字をひっくり返したような形で浮いたままこちらをみてくるので目があってしまった。なんだこれ。現実逃避で幻覚が見えてるのか。
それにしても腹が減って仕方がない。
「…かばやき…」
捌いたことないけど焼いたら食えるんじゃないかな。