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Q5-3 …ただ、圧倒せよ

導入としてはあと2~3話くらいかな?それを過ぎたら登場人物紹介を挟んで、新章となりますのでお楽しみに…



読み終わったら下のポイント評価の欄から評価してもらえると。作者が泣いて喜びますので感想の方も良かったらぜひ。

 「クソっ、何なんだよアイツ!」


 レックス達が居る場所からもう少し森に分け入った辺り。ここで『彼』は彼のパーティーメンバーに喚き散らしながら、更に森の深部へと向かっていた。……もう読者諸君にはお分かりだろう。少し前にレックスに言いがかりを付けたのも、掲示板で『ドラゴンが手に入る』とデマを流し、襲撃するメンバーを募ったのも、それをライブで配信する事で晒し物にしようとしたのも、全て彼の仕業である。


 …最も、その全てが尽く失敗した訳だが。


 「まぁ駄目で元々だったし…」「うるさい!あの人数ならボコって吐かせる事位簡単な筈だったんだ!それを…!何なんだよ畜生!役立たず共め!絶対チートだ!アイツより、俺達の方が断然良い装備使ってるのに…!!」


 傍らのメンバーに当たり散らしながら、彼は茂みをずんずんかき分け進んでいく。


 「ねぇ…」「あ゛あ゛?!」「ヒッ…!こ、これ、あたし達何処に向かって…?」


 おずおずと、背の低い…装備からして魔術師と思しき少女が迷い無く突き進むリーダーに問い掛ける。すると、怒りに濁り切った彼の顔が途端に下種な笑みで歪んだ。


 「決まってんだろ…ドラゴンが目撃されたのはこの先、森の最深部だ。ならそこに『何か』がある筈。ソイツをかっ攫ったら…アイツ、どんな顔するだろうなぁ…フヘヘ…フヒハハハ!!」「ほーん。それってこんな顔か?」


 聞こえるはずの無い声に思わず振り返る。そこにいたのは、彼らの行く先に眠る儚げな美女ではなく、今彼らが…正確には『彼が』最も会いたくない人物の姿が…否、これも正確ではない。正しくは…


 『今、彼が最も会いたくない人物が、全身血みどろで、鬼神の如き表情(笑顔)で立っていた』である。


 「な、何でここが…!」「勘」


 そんなことは無い。不埒者パーティーが残した足跡を追ってきただけである。


 「滑稽だな…出し抜いたと思った相手の掌で踴らされていた気分はどうだ?さぞいい気分だっただろう?」「ぐ…ぐっ…!」


 不埒者がじりじり、と後ずさりすると、レックスもじりじりと距離を詰める。


 じりじり。じりじり…


 「どうした?随分と足が震えているじゃあないか…もしや怖気づいた、とでも言うのか?」「ふ、ふざけんな!だれが、そんな事…」


 じりじり、じりじり…


 が、結局目の前の『化け物』への恐怖には打ち勝てなかったようで。


 「…チィッ!」


 パーティーメンバーを置き去りにして、そのまま森の奥へと走り去ってしまった。



 「ハァ、ハァ、ハァ…」(クソクソクソっ!こうなったら、絶対に森の奥へ…!)


 後ろを振り返る事も無く、置き去りにしたパーティーメンバーを顧みる事も無く、彼は進み続ける。そうすれば、『アイツ(レックス)』をぎゃふんと言わせる事が出来ると信じていたからだ。



 だが、レックスはそんな甘い考え程度を見抜けない男では無かった。


 ズボッ。「グゲラバァ?!」


 地面が落ち込む。急に空中に投げ出され、その勢いのまま穴の底へと落ちていく。…いくつもの木を削って造られた切っ先が敷き詰められた穴の底へと。


 「(プツッ)クソがあああああああ!!!!!」


 が、この男、見た目より根性のある男のようだ。穴の途中で両手両足で踏ん張り、見事串刺し刑から脱却したのである。


 「ハァ、ハァ…落とし穴だと…?!ふざけやがって!(ゴゴゴ…)こんなもん、さっさと脱しy」グシャッ!


 最も、すぐに上から降ってきたダメ押しの大岩にプレスされる事になったのだが。




 《《プレス式ジェネリック剣山落とし穴》が発動しました。再設置しますか?  y/n》

 「勿論yes…っと」


 ハイ、終了〜。よりによって一番テキトーに作った罠に掛かるとは運がないなアイツ。オマケに即死罠(初見殺し)に引っ掛かるとは…もう少し甚振ってやりたかったがまあいいや。


 俺が振り返ると、そこには奴さんのパーティーメンバーがいた。さっきまでやってた生配信の視点から考えると、大方彼女たちの内の誰かのアカウントで配信していたのだろう。

 もし仮に批判され、アカウントを消去される様な事になっても自分が配信した訳じゃないから関係無い、と言い張れるとでも考えたのだろうか。つくづく見通しの甘い…


 「クソがあああああああ!」「ん?」


 何だ?いきなりさっきの男が現れたぞ?…あ、また駆け出してった。どういうカラクリだろうか…


 「『集結の御旗』、です…」「?なんだそれ?」


 俺の傍らにいた奴さんのパーティメンバーがそう告げた。…「まだいたのか」って言いそうになっちまったよ。あぶねー。


 「え、ええっと…あるシークレットクエストの報酬で…通常より重いデスペナルティを受けるのと引き換えに、このアイテムの所持者の周りにリスポーン出来るようになるんです…」


 へー。ゾンビアタックが捗るねぇ…


 《《プレス式ジェネリック剣山落とし穴》が発動しました。再設置しますか?  y/n》


 おぅ、またか。同じ罠に引っかかるなよ…まぁ、普通一度発動した罠が遠隔で再設置されることはないから、もう発動しないと思って通過しても当然か。


 こんな事が出来るのは、偏に《トラップマスター》のスキルレベル3で習得できるアーツ《再設置》のおかげだ。このアーツ、一度発動した罠をもう一度設置出来るようになるアーツなんだが、発動に特に対価が要らないのである。オマケに近くにいる必要が無いんだよな…一遍に何度も発動する事は流石に出来ないが十分強力。因みに最大連続使用回数は10回だ。そんで10回使い切ると、10分間使用不可になる。勿論途中で回数をリロードすることも出来て、その場合は使用回数×1分となる。


 「畜生!なんなんだよさっきから!どうしてさっき嵌った罠がまた…!」「よう」「あ゛あ゛⁈」

 

 俺が声を掛けると、奴さんが反射的にこっちを向く。そして、その表情が恐怖に歪んでいくのをバッチリ見せつけてくれた。


 「ひ…く、来るな…」「NO(ダメだね)


 少なくとも、俺と取引するまではお前の恐怖は永遠に消えない。どこにいても何をしていても、お前に平穏な時は永遠に訪れない。


 「取引だ。お前は今後、俺たちに一切関わらない。その上でこれまでの事を全て始末を付けろ」


 否とは言わないよな?目で俺がそう問いかけると、奴さんはコクコクコクッ!と狂ったように頷いた。


 「よろしい。やれ」「え…え?」「や・れ。今すぐだ。俺はそこまで気が長くない」「は、はいぃ!」



 結局、騒動はコイツが自分のアカウントで行った配信で釈明&謝罪を行った事で一応手打ちとした。勿論、また何かやったら相応の制裁を加えるという通告もしておいたので、コイツが何かする事はもうないだろう。掲示板の方も悪質なデマや見間違い、流言飛語と言った方向に傾いたようだし、シエルとノエルの事も特殊なクエスト報酬という事で結論付けられ、事態は終息へと向かっていった。


 それでも、諦め切れない連中は噂を信じ、手掛かりを求め森の深部へと足を運んだみたいだが、森に設置した軽く百を超えるトラップ―その辺にある木や石で作っているが十分効果大―が反応しているあたり、悉く返り討ちに遭っている様だ。


 …これで、アルフィナの所に行ける者は居なくなるだろう。…静かに静養してもらいたいものである。





 後に、この森は時々レックスが帰ってきては新規のトラップを仕掛けまくった事で、大量の(それも即死系・初見殺し系がふんだんに混じった)罠がそこらじゅうに設置された「罠の森」と化し、初心者立ち入り厳禁のデスゾーンになったのだが、それを冒険者ギルドが把握し、最深部に入るのにランク制限を掛けるようになるのは少し先…具体的にはどこぞの長身の白黒プレイヤーが降り立つ前後…となる。

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