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Q5-1 …ただ、圧倒せよ

お待たせして大変申し訳ございません…何かと税率改定前で忙しくて…本編も書き進めてますがもう少しだけお待ちいただけますでしょうか。



読み終わったら、ポイント評価&感想お待ちしております。…流石に、ノーリアクションだと虚無の暗黒に呑まれそうなので、ホント、お待ちしております…

 「……」(((じ〜っ…)))


 …町に戻ってから誰かに見られてるな。数は…軽く20を超える。何故、というのは余りに愚かな問いか。大方、森での「墓参り」を見られたのだろう………チッ、つくづく詰めの甘い…いや、違うか。半年かそこらでここまで鈍ったという事だろう。自分を殴りたい気分だ。


 (キュ…?)(じっとしてろ。良いって言うまでまで()()から出てくんな)(ギャアウ)


 小声でバックパックの中の双子に身を潜めるよう指示しつつ、急いでその場からの離脱を図る…が。


 「ねぇ、ちょっといいかな?」


 すぐ側にいた若い男に阻まれた。他の連中がぎょっとした表情をしているのを見ると…抜け駆けのようだ。欲に駆られたか。


 一応、他の用事の可能性もあるので返事をする。


 「…何だ」「いやぁ、実はね?この先の森でドラゴンの目撃情報があったんだ〜」


 ビンゴかクソッタレ。


 「ほぅ…ソイツは凄い。それがどうした」「それでね、目撃したプレイヤーはそのドラゴンをテイムしようとしたけど、出来なかったんだってさ。で、奇妙に思って観察してたら…なんとなんと誰か他のプレイヤーにすり寄ってたんだって!」


 ………やはり、か…


 「いやぁ、ドラゴンだよ?絶対強いじゃん?僕たち攻略組としては是非とも何処にボップする(でる)か教えて欲しいもんだよねぇ〜」


 …なるほど、な。確かにゲーマーとして、真っ当にゲームを攻略しようとする連中としてはそれは正しい選択だ。強く無ければゲームを進められん訳だからな。さらなる強さを求めるのは至極当然であろう。…だが。


 「そうか。それで?俺に何の用だ」


 コイツ等は攻略の為の道具じゃ無い。例えその主張(エゴ)が単なる俺の感傷(エゴ)だったとしても、アルフィナに託された以上…俺はコイツ等のことをゲーム攻略の手段としては見れない。


 「いやさぁ…そのドラゴン、君のでしょ?」「………まあな」


 ここで隠してもトラブルの元か。軽く指を鳴らすと、それを合図としてバックパックから双子のドラゴンが顔『だけ』を出した。


 「「「「おおー…」」」」「「カワイイ…」」


 目の前の男を含め、周囲から感嘆の声が響く。まぁ、一部違う感想が混じっているが。


 「ハハッ、やっぱりか!」


 そう言うなり奴は俺の背中に手を伸ばそうとする。が、


 ガブリ。「はんぎゃあああァァァ!??」


 そら見たことか。他人の飼い犬……ドラゴンか、ええいまあ良い、兎も角許可も何も無しに手ェ伸ばしたら噛まれても仕方が無いぞ。


 「お、おいっ!?これ、噛みっ」「さっさと手を引っ込めろ。食い千切られても文句は言えんぞ?」


 そう忠告すると、慌てて手を引っ込めた。どうやら素直に手を離してもらえた様だ。


 「イタタ…何て凶暴な」「無遠慮に触ろうとするからだ」


 大袈裟に痛がっていたが、ここはいわゆる安全区域(セーフティゾーン)。鋭い牙で噛まれようが、何なら食い千切られようが無傷だ。勿論、抜け穴もあるが。


 「だが、これではっきりした。君はドラゴンを独占するつもりだな!」「お前は何を言っているんだ」


 何でそっちに話が飛ぶんだ。痛みで脳内麻薬的ななんかが頭に回ったか?他の連中もそうだそうだと賛同してるし…


 「きっとそうだ!そうに違いない!そのドラゴンでスタートダッシュを切る気何だろう!自分だけ抜け駆けする気だな!」「コイツの鼓膜穴空いてんのか?」


 まるで話が通じない。この頭痛は気のせいだろうか。だがこの間にも演説は続く。


 「凶暴なはずのドラゴンがお前の言う事を聞いてるのもおかしい!きっと洗脳してるんだ!ドラゴンを使えば簡単にトップに」「おい」


 …おっと、自分で思ったよりかなりドスの効いた声が出たな。皆凍りついてやがる。…冷静になれ。心を冷やせ。


 「何か、不幸な行き違いがあるようだが…コイツ等はある人からの預かり物でな…一人前になるまで預かって育てて欲しいと、な…だから、何処にいるとか、どうやったら遭えるかなんぞ分からん…だから、幾ら俺に群がろうが、お前達の望むモノは永遠に手に入らない」


 異様に、場が静かになる。…が、目の前の男は諦め切れないようで。


 「な、なら!なら、僕がお前の代わりにっ」「貴様が?高々貴様如きが、この子達を立派に育て上げられると?貴様に、『彼女』の信頼に足るだけの根拠があると?」


 言葉と共に叩き付けられる殺気に思わずといった顔で男がたじろぐのを見て、俺は回れ右してまた歩き出す。…だがそう簡単にはこの場からは立ち去れないようだ。


 ====================

 「ゴトー」以下四名から決闘を申し込まれました。


  レギュレーション

   デスマッチ(敗北条件:HPが0になる)


  決闘を受けますか? yes/no

 ======================


 …あ゛?


 「フフ…どうしても譲らないなら、力尽くだ!僕たちが勝ったら、そのドラゴンたちをを僕たちにy」「やなこった」


 反射的にnoの文字を叩く。全く、そんなもん承諾する筈が無いのは分かり切ってるだろうに。


 「なっ…!君にはプライドというモノがないのか?!」「プライド如きで腹は膨れんし、命は助からん。この世界はそーいう風にできてる。いつでも自分の思い通りになると思いなさんなアホめ」


 大体プライドなんぞ持ってた所で足を引っ張るだけだ。人間最後は使える物は他人の死体だろうと使わにゃ生き残れんよ。少なくとも俺達はそうだった。


 「ぐっ…!」「もう、いいか?こっちもヒマじゃないんでな」


 無礼な男に背を向け、俺は歩き出す。その背中を、男は呆然と見つめていた。






 やれやれ、ゴミの様な時間を過ごしてしまった。あの後もしつこく食い下がって来るし…流石にGMコールを仄めかしたら引き下がったが。最も、去り際の未練がましい表情だと、まだ何か企んでそうではある。全部叩き潰すがな。


 さて…今、俺達は再び森にある目的の為にとんぼ返りしていた。と言っても、双子はバックパックの中に引っ込んでいる。


 「ふぅ…これで出来るだけの準備はした…さて、と…」


 後ろを振り返る。俺達が今いるのは丁度森の外周部なので、少し周りを見渡せば森の外が見えるのだ。そして、俺の視界に飛び込んだのは森の向こうに見える平原、そして……明らかに隠れきれていない阿呆共。さっきの連中、まだ諦めてなかったか。


 「ハァ…見るモンが見たらすぐ判るぞ、出て来い。それとも自分たちの隠れ方の粗を懇切丁寧に解説されたいか?」


 …どうやら得体の知れないプレイヤーに自分たちの隠密行動を批評されるのはゴメンだった様だ。茂みの中から、木の向こうから、潜んでいたプレイヤー達がゾロゾロと現れた。その数、30。


 「無駄だと思うが一応聞くぞ…何の用だ」


 返答は来ない。その代わりに誰かが打ち出した火球が俺目掛けて一直線に飛んできた。


 「ッ!問答無用(いきなり)かよ…!」


 回避が2秒遅れていれば俺の脳天をこんがりローストしていたであろうそれ(火球)が地面に当たって弾けるのを横目に走り出す。狙うは右翼。丁度今『こっちに来ると思ってなかった』って顔をしたお前からだ。


 「待っ…!」


 待ちません。サクッとダガーで眼球ごと脳をかき混ぜて町に送り返す。そのついでに隣の奴が一瞬呆気に取られたのが見えたので双子に攻撃指示。


 「ブチ抜け」「キュイ!」「ギュ!」


 次の瞬間、奴の顔がブレスの雨でハチの巣にされる。…随分狙いがうまくなったなァ。最初の頃はてんで威力も精度も話にならなかったってのに…


 「このぉぉぉぉぉ!!」


 焦って大槌を傍にいたプレイヤーが振り上げる。だが、遅い上に軌道が見え見えだ。余裕で回避し両腕を輪切り(スライス)にした上で、思い切り蹴り飛ばしてご退場願う。


 で、手近でアタフタしていた女性プレイヤーの首根っこを鷲掴みにして思い切り投げ飛ばす。…戦場で()()()んじゃないよ、と言うのはあまりに酷か。


 「キャッ⁈」「うをぅっ⁈」


 女性プレイヤーの身体で別のプレイヤーの視界が塞がれたのを俺は見逃さない。即座にダガーを手首のスナップを効かせて投げつける。クルクルと回転しながら飛んで行ったそれは狙い通り哀れなプレイヤーの脳天に突き立ったが、HPが2割ほど残っているのを見るとこれは致命傷にならなかったようだ。という訳で駆け寄って掌底打でダガーを押し込む。


 踏み込みのついでに投げ飛ばされた女性プレイヤーの頭を踏み砕いたので、これで4人倒したことになる。正確には4キル1ダウンだが、戦闘開始からこのペースならまぁ上々と言ったところか。


 「くそっ、なら遠距離だ!撃て撃て!」


 ふむ、その選択は正しい。飛び道具に対して俺は今のところ対抗手段を持ってないからな。普通なら遠方から飛び道具の飽和攻撃で圧し潰すのは有効な戦術と言える…だが、彼らは知らないのだ。


 「おいおい、いいのか?そんなに火ばっか撃って…」


 確かスキルレベルに対して一番火力出るのが《火属性魔法》何だっけ?まあ序盤の敵は大体火に弱いからな…大方序盤のレベリングで使い込んだから、今回も威力重視で持ち出したんだろうが…


 「俺に使うには…ちょいと悪手なんじゃないか?」

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