Q1 突然長旅に出る羽目になった場合の出費の最大値を求めよ。(なお、おやつは500円までとする)
…(←土下座の構え)
…大変申し訳ございませぬ…
病気や笛吹き男やらなんやらで執筆が滞ってしまいました…
そんなこんなで新章開幕です。
…週一ならいけるかな…
ゴトゴトゴト…
レックスたちを乗せた馬車がゆったりとした速度で平原を進む。目的地の《タブリエ王国首都・リストア》までは徒歩で約10日、馬車で約一週間の旅路である。
そして、レックスたちはと言うと…
「ハァァ…暇」「「ZZZ…」」
この通り、馬車の中で暇を持て余していた。
(全く…なんかこう、襲撃イベとかみたいなの期待してたけど呆れるほど平和だし、貸し切りだから誰も話し相手いないし…はぁ、暇。超暇。双子も爆睡してるし…)
現状やる事が無いレックスは馬車の中で寝っ転がりながらこうなった経緯を思い出していた。
(簡単に言えば、あの狒々爺はアンタの実力を知りたがってるのさ)
ギルマスの椅子に腰かけ、訳知り顔で-事情は全て知っているから当然なのだが妙に腹立つ表情だ-ジャクリンは続ける。
(数十倍の兵力差を引っ繰り返す『個』の力…その『底』はどんなもんだ、ってね。あと、若干のビビりも含んでるかもね。キレた奴だったらどうしたものかって)
なぁんだ、そっちだったのね。てっきり自分たちの腹の中まで引き込んで殺す算段かと…うん、いつもやられてるもんだからその発想は無かった(泣)…思い出すだけで腹立って来たから止めよう。ええ、そうですとも。「騙して悪いが」で地雷原に誘導された時の事は忘れませんとも。次会ったら殺る。
(…なんか他の事考えてるみたいだけど続けるよ?で、アンタには総本部まで行ってあの狒々爺に一発カマしてきて欲しいのさ)
(…良いのか?カマしてきて。そもそも俺はどうすれば…)
単にとんだ跳ねっ返りとして認識される気が…だが、彼女はその言葉を待っていた、という顔をして、
(あぁ。大方、何かのクエストを吹っ掛けられるだろうが、アンタなら楽勝さ。アタシが保証するよ、アンタはあの狒々爺の想像より遥かに強い)
「って話だったわけだったが…」
それがゲーム内時間で一昨日の話。今は遠くに森が広がるのどかな平原地帯をのんびり馬車に揺られている。
「なー、後どん位で着くんだよー」「旦那ァ、もうこれで両手じゃ数え切れねぇくらいは同じこと聞いてますぜ。あと一週間は掛かるってさっきから言ってんじゃあないですか。旦那は異邦人なんだから適当に寝てりゃ良いでしょうに。どうせこらえ性のない人なんだから」「うるへ」
こちらとあちらとは時間の流れが異なる。具体的には仮想空間は現実世界の2倍の速さで時間が流れている。到着まで一週間かかるなら、その期間ログインせずに家のリビングでまったりしていればいい。
だが、その発想は俺としてははっきり言って「無い」。
このやる事の無い期間…その間に後回しにしていたことが山ほどあるので、やれることはやれるだけやっておきたい。存外時間は余っていないのだ。
さてさて…現在、40人ほどのアホ共を挽肉や三枚おろしにしたことで、レベルが6まで上がった。お陰でスキルポイントが10もたまっているので、とりあえず筋力と敏捷に半分ずつ振る。これで《血流活性》を使った時の戦闘力が爆上がりだ。
そんな感じで今のステはこんな感じ。
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HP:95
MP:105
1stjob:盗賊 Lv.2
2ndjob:テイマー Lv.2
筋力:25
耐久:10
敏捷:40
知力:15
技量:20
幸運:10
メインスキル
《血流活性Lv.2》《短刀術Lv.2》《弓術Lv.1》《鍵開けLv.1》《隠密行動Lv.2》《従魔術Lv.2》《魔力譲渡Lv.1》《医術Lv.2》《調剤Lv.1》《トラップマスターLv.3》
サブスキル
《アルフィナの祈りLv.−》《暗殺術Lv.1》《血の狂騒Lv.1》《血の狂乱Lv.1》《殺戮加速Lv.1》《軽業Lv.1》
称号
《過保護》《託されし者》《殲滅者》《慈悲無き者》
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…何やら物騒なスキルや称号が山程…どれどれ。確認してみよう…
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《アルフィナの祈り》Lv.−
レア度:レジェンダリ
とある母親の祈りの具現。託された祈りは守護者に無窮の力を与える。
スキル《アルフィナの加護》の所有者の被ダメージダウン
〃 のHP・MP回復量アップ
〃 への攻撃者に対する特攻効果(50%)
筋力ボーナス(15%)
幸運ボーナス(50%)
《暗殺術》Lv1
レア度:アンコモン
闇討ちや不意打ちに関するスキル。
レベルボーナス:スニークアタックダメージが更に上昇(20%)
《血の狂騒》Lv1
レア度:エクスクルーシブ
血だ!血だ!殺戮の時間だ!さあ、物言わぬ血袋へと成り果てるがいい!
HPが50%以下のプレイヤーに対する特攻効果(14%)
レア度:レア以下の装備に対する耐久度ダメージ増加(40%)
与ダメージ吸収(4%)
《血の狂乱》Lv1
レア度:エクスクルーシブ
走れ、走れ、獲物が逃げる!獲物が逃げたら大変だ!……楽しい追いかけっこのはじまりはじまり。
HPが50%以下になった瞬間、最後にダメージを与えたプレイヤーは以下の効果を得る。
①『状態異常:ロックオン』付与
②当スキル保有者の視界に『ロックオン』状態のプレイヤーがいる場合、敏捷ダウン(15%)
③『ロックオン』状態付与から60秒後、『状態異常:手招き』付与
『手招き』状態のプレイヤーのHPを一撃で0に出来る
《殺戮加速》Lv1
レア度:レア
殺戮者は血を求める。流れ落ちた血は殺戮衝動を加速させる燃料となり、そして殺戮者は哀れな獲物を求めて歩き出す。
倒した敵の数に応じて敏捷の数値加算(1%)
《軽業》Lv1
レア度:アンコモン
身軽になれば、どこへでも、どこまでも。
武器を装備していない時の移動速度アップ(15%)
〃 跳躍距離アップ(15%)
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……なんじゃこのヤベースキル。《軽業》…はいい。《殺戮加速》も…まぁギリ許容範囲内だ。
ただし《血の狂騒》と《血の狂乱》、テメーらはダメだ。
特に《血の狂乱》。何がやばいって『特定条件下での即死』が群を抜いてヤバい。対プレイヤー専用なのと、対象が一人限定なのを差し引いてもこの効果は破格だ。一対一じゃ最強だぞこれ。それに取得条件がなァ…十中八九『一度に一定人数の敵の殺害』辺りだろうし、取得の為にアホやろうとするアホ共が出るやも。…迂闊に表に出せん。塩漬け確定だな…
気分は沈むが、馬車は変わらず進み続ける。
目的地まで、あと一週間───