表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/8

誰かこの凶悪王子に道徳教えてあげて。


「いせかいーのー森の中ーベルさんにーでああっ…………た」

廃墟寸前のお城のお庭、森と原っぱの境目を歌いながら歩いていると、信じたくないものを見てしまった。


「なんだ、起きていたのか、顔は洗ったか?」

「おはようございますベルさん、お聞きしますがそれは一体なんですか」

「グリズベルの足だ」

「クマの魔獣じゃん」


ずり、ずり、と引きずる毛むくじゃらの何か。

鬱蒼とした森から現れたのは、顔が良いけど顔が怖い、ベルンハルト。と、ベルンハルトが引きずるグリズベルという魔獣の大きな足。


「ほかの部位はうっかり魔術で消し飛ばしてしまった」

「……おっほ、そうだった魔力上がりすぎて調整効かないんだったこの人」


ベルンハルトから魔力を貰う案は、ボツで。

スプラッタ肉塊どころかチリも残さず消えそうだ。

つゆと消えにし創造主。


「アレンに焼いてもらえ。果実は全滅だと聞こえていたのでな」

ほれ、とグリズベルの足を差し出すベルンハルトからじり、と、後退り丁重にお断りする。


「そんな大きいの持てませんし、私は朝食不要なので」


クマの魔獣グリズベル。クマはクマでも魔獣なのでバカでかい。足の太さはそこらの町娘の腰くらいはある。胴体が足。長さはそれこそベルンハルトの身長くらい。多分二メートル近い。

さすがベルンハルト、クマを倒す者という名前なだけある。倒すと言うよりは吹き飛ばしたのだろうけど。


「食わねば大きくならないぞ」

「また子供扱い……」

「事実子供であろうが」

「へーへー。子供でいいですよーだ」

嫁き遅れと言われるよりは。歳頃の娘はな、その辺敏感なんだよ。


 ずるずるとグリズベルの足を引きずりながらアウレールの元へ向かう。血抜きされているのか、それとも傷口がやき固められているのか、不思議と血は出ていなかった。


「それ美味しいんですか?」

「正直あまり食いたくはない」

「なるほど把握しました」


 しかし食わねば生きられない、と言外に感じ取りそれ以上は言わないことにした。 ごめんなさい、諸悪の根源が神名乗って本当にごめんなさい。


「ベルさん、ベルさんが魔力を回復するために心がけていることはなんですか」

晶石ごっくんと譲渡以外で何かないのか。寝ても回復しない創造主に愛の手を!

「魔力の回復……? そんなものが必要になったことは無い」

「……デスヨネ」


クソッ!魔力過多コンビめ!羨ましい!半分くれ!


「なんだ、回復していないのか?」

「ええまあ。なので回復方法を探しています」

「早く言えば良いものを。俺の魔力を分け──「だが断るッ!!」


上限1000ぽっちの私に蛇口ぶっ壊れ53万(未だ成長中)を注がれたら?答えは単純明快ハイ死んだー。物理で爆散、指も残らない。


「何故だ」

「グリズベル吹き飛ばすほど調整効かない高出力大容量の魔力注がれたら死にます」

「何を大袈裟な」

「紛れもなく真実ですよ、悲しいくらいの現実……」


ベルンハルトは解せぬ、といった表情で眉間にシワがよっていたが、ため息と共に鋭い言葉で私の胸を貫いた。


「世界をつくりあげたほどの其方がヒトの魔力程度で死ぬはずがなかろう」


「そうだったら良かったんですけどねぇ」


ヒトの魔力にしては随分と多いですねぇ。魔王かなってくらいベルさんには魔力が満ち満ちている。


「ああ~魔力回復したーい」

ああもう頭が痛い。魔力が回復していれば、そもそももっと沢山あればメロンパンを不思議な創造主パワーで出したように食料問題はあっという間に解決。


そして短絡的ではあるが最短ルートのベルンハルト王様物語として「わはは、我は全知全能の神であるぞー!ベルンハルトが次の王だぞー!」と降臨してやるのに。とカザミはちょっとだけ考えた。

魔力MAX1000程度でそんなことをしたら邪神としてサックリ退治されそうではあるが。


「昨日……メロンパン出して、そのあとから魔力回復してなくて……」


しょんぼり。そう見えるように眉を下げ斜め下を見、肩を落とした。

「ベルさんたちにこちらに呼ばれてみたら、なんか魔力の量までガクッと落ちてて……」


いや元々魔力なんて持ってなかったけれど、そこはほら、そうしといた方が都合が良いのだ。

切々と訴えればベルンハルトは目を瞬かせ、ふ、と笑った。なんだ可愛い仕草しやがってコノヤロー顔が良い。


「なるほど」

「アッアッ馬鹿にしたような顔! 王族ならもうちょっとポーカーフェイス頑張ってください」

「ポー?」

「宝石の名前が一緒なのにえいご通じない訴訟」

「もう俺は王族ではないが」

「元王族だろうが現王族だろうが私にとっては変わりませんよ。ベルさんを王様にするんですから」


ベルンハルトは目を見開いたまま固まった。

「……ベルさん?」

なにかまずいことを言ってしまったかとカザミはグリズベルの脚を持つベルンハルトの腕をつついた。


「王様になりたい気持ちは変わりませんか?

もし変わったならベルさんがベンノさんとして第二の人生を歩めるように協力しますよ」


追放された王子が辺境でスローライフします。

その方がなんかラノベっぽくて黒歴史ノートに書いたら捗りそうな気がする。


「ああ。其方を喚び出した時より変わっていない。俺は王座につく──クヴェルを殺してな」

「いやいやいや、無血で行きましょう、殺人は犯罪です!」

「俺が王になれば弟の一人や二人首を刎ねた所で」

「セイセイセイ。だめですよ、ソーゾーノメガミ、ブッソウ、キライ。リピートアフターミー」


はぁ?という目で見下ろされているけれどこればっかりは譲れない。

僕らはみんな生きている。生きーているからいのちだいじに。

物語の中の、文字で表された登場人物たちは今や血の通った体を持ち魂の宿る人間だ。

命を大事にしないやつなんか大っ嫌いだ。こちとら一粒のお米に宿った神様にだって感謝しながら食べる民族だぞ、米粒大事にして人間を大事にしないで平気でいられるはずがない。


「ならばどうする。彼奴の首を取らずしてどう俺を玉座に導くつもりだ」

「そうそれが問題なんですよね。一応何パターン……何個か考えてみたんです」


おや、とまるでカザミが計画など小難しいことを考えているとは思っていなかった、とベルンハルトの片眉があがった。


「まずは一つ目、私が過去に行ってクヴェルくんが一念発起しないように引っ掻き回してくる」

「さっさとやれ」

「だから魔力がですね」

まあ全回復したところで異世界タイムスリップ魔法に消費される魔力が1000以上なら詰むけれども。


「二つ目、ベルさんが王座への執着を捨ててまったりスローライフを送っていると棚ぼたで王様になれちゃうコース」


「まどろっこしい」

「わがままさんめ。三つ目、クヴェル王子失脚のために暗躍コース」

ぴくりとベルンハルトの眉が動いた。

「……具体的には?」

「そこはほらー、私よりよほどすごい教育受けてるベルさんとアウレールさんが考えるべきでは」

「欠片ほどでも期待した俺が愚かだった」

「えーん、神に対して未来の王様がひどいよー」

両手で顔を覆い棒読みで泣き真似をする。顔を隠したまま少しだけ考える。

仮にも世界を創った神を召喚したのなら、この扱いは一体なんだ。


もちろん、ハズレとして魔獣溢れる森の中に放置されずに食事も分けてもらったのは幸いだけれども、それでも王族として身分差の存在する世界に身を置いていたのなら、この扱いはなにかおかしくないか。


ほんの少しの違和感。

そういうものだと見過ごして良いのだろうか。


「やれやれ、我が女神はどうにも頼りなくて困るな」

「うるせえですよ。そもそもむりくり召喚したベルさんのせいですよ、そう、私は翼をもがれたようなもので」

「翼があっては逃げられてしまうからな。鎖には繋がれたくないだろう?」


顔をおおっていた手の小指と薬指を掴まれ剥がされて、片目だけがあらわになった。すぐ側に凶悪な王子の目が迫り、あまりの眼光鋭さにぞわりと肌が粟立った。


「グリズベルの皮を剥ぎ、肉を削ぎ、焼きながら、これからの事を話そうではないか。」


あっこれは役立たずのままだと次はお前がこうなるぞって事ですかね、ベルンハルトは帝王学の前に良い子の道徳を学んだ方が良いね、最初はメロンパンじゃなくて和菓子を出すべきだったかな?

美しい国ニッポンチャチャチャ。ワタシシニタマフコトナカレ。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ