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この追放王子、顔もやることも凶悪すぎる


ベルンハルトとアウレールの視線に耐えながら黒歴史ノートを開くと、これまた直視し難い内容が飛び込んできた。


「うっ」

胸が痛い。恥ずかしすぎてみてられない。なんか十字架マークで挟んであってもうそこからしていたたまれない。助けて欲しい。

思わず胸を抑えると、ベルンハルトの眉がぴくりと動いた。

「どうした」

「あの、これ、ほんとに第二王子が読んだんです……?」

「恐らくはそれを解読したのだろう。それは神殿に収められていた書だ。ほぼ毎日祈りを捧げる折に目にしていたはずだが、ある日反応が変わったのだ」

「えっ神殿?祈り?この黒歴史ノートが?」


──公開処刑かよ。


内容を解読できる人間が今までいなかったのが幸いだが、そうか、第二王子くんは読んでしまったか。私が万死、塞翁がアスモデウス。


「それってもしかして、落馬の後ですか?」

「ほう、さすがは創造主殿。よく知ってらしゃる」

「ヒエ」


ベルンハルトの凶悪な笑みに心臓が止まりかけた。

異世界は大変危険だ。AEDを持ってきてくれ、全身が心室細動状態だ。俺の屍と黒歴史ノートを超えてゆけ。  


「つかぬ事を何点かお聞きしますけれども、今の状況って、どんな感じなんですか……アッ顔が怖い」

「ベンノがクヴェル第二王子にやり込められて約三ヶ月、ここに来て一週間ってところだよ。ここに来る前は塔に幽閉されてたかなぁ」

笑顔のアウレールに対し、ベルンハルトは不快だ、と凛々しい眉毛がこれでもかと寄っていた。


「……なるほど、ええ、」

よく生きてましたね、こんな所で。その言葉は必死に飲み込んだ。小説として書いただけとはいえ、辺鄙なところで生きねばならない理由の99パーセントは作者である自分にあるのだから。


気を取り直して黒歴史ノートのページをめくる。



 ✝︎登場人物✝︎

  ・ベルンハルト 長男の王子、高身長、かっこいい、つよい、剣と魔法すごい完璧超人特に火の魔法やばい。そんな見た目してる。

   └隣の国から戦争を仕掛けられるけど、ベルンハルトがちょうつよいから勝てる



「…………もっと頑張れよ当時の自分」

つらい。これを嬉々として書いていた子供の頃の自分に微笑ましさを感じられる心の余裕はない。ついでに言えばベルンハルトの名前は迷いに迷ったあとがあり、消しゴムで何度も消したあとがあり少し汚くなっていた。



  ・アウレール 乳兄弟ってやつ。幼なじみ的なやつ。魔法すごい。かっこいいけど優しそうな顔。ベルンハルトの理解者


  ・クヴェル ベルンハルトの弟。病弱泣き虫。青い髪を長く伸ばして女の子みたい。頭がいいけどすぐ疲れる。戦争反対。


  ✝︎あらすじ✝︎

 かんぺきな王子ベルンハルトは、完璧すぎてうらみをかう。政治に介入して不正をバンバンあばく。

それで元の濁りの田沼恋しき状態の人達に嵌められる。

戦争特需を狙って隣国同士の戦争が起きるように工作されてるのを気づくけど止められず。

ベルンハルトの国も戦争に参加するけどベルンハルトが強いから勝利。

実はクヴェルが王太子の座を狙ってベルンハルトを陥れるために動いていたことが発覚して、クヴェルは処刑される。




「……これを第二王子のクヴェルくんが読んだら……そりゃ……ええ……うーん……」                

なんだか背中がむずかゆいクオリティ。

処刑エンドを回避しようと頑張ったんだろうな、と転生者のクヴェルくんにちょっと同情した。

これはボツにした案だから、本編に処刑エンドは存在しないし、発動しない処刑エンドを思って眠れない夜もあったかもしれないなんて、可哀想。いやいちばん可哀想なことになっているのはベルンハルトだけれども。


思わず天を仰いだ。なんか多方面に謝りたくなってきた。見えた天井は汚かったけれど。

「なんと書いてあるのか言え」

「ちょっと……なんとも言えない感じで……」

「はぐらかすな」

「いやだってこれ……」

「詳らかにせねば食事は抜きだ」

「あっ酷い」


状況を見るに、食事どころか生活のあれこれが期待できそうにない。

だってベルンハルトとアウレールの他に人の気配はないし、食材が簡単に手に入りそうな雰囲気ゼロ、廃城をキャンプ地にサバイバルしてるのかな、と言った言ったでお前のせいだと怒られそうだが、見た感じはそんな感じだ。


「タイトルは満月の女神と炎の竜と書いてあります」

「それはさっき聞いた」

「これ以上はまず、お二人の状況をもっと詳しく知ってからでなくては言えないですねぇ」

「その満月の女神とは? 炎の竜は隣国の竜のことですか?」

「おっアウレールさんするどい!けど惜しい!ですが色々と現在の情報が足りてない今はちょっと言えないですごめんなさい!」


そもそも、自分はただの作者だ。ベルンハルトが返り咲き王となるストーリーを書き上げたとしても、ここは物語の中。

中からどうやってストーリーを世界に反映させたら良いのだろう。

パソコンもないし、作者は登場人物として描かれていないので魔法の力を持っている訳でもない。

ちょっと売り言葉に買い言葉でおねしょを世界に反映させてやるとか啖呵を切ったものの、やり方なんて知らない。


この黒歴史ノートに物語を書けば良いのだろうか。

試しに何か書いてみようか、と胸ポケットに刺さっていたボールペンで書き足してみる。


<ベルンハルトがくしゃみをした>


「っくしゅ」

「おっ?」

顔怖い男前が可愛いくしゃみをした。これはもしかして成功?

いやいや偶然かもしれない。しっかり検証しなくては。


<三人が使える大きさのテーブルセットが、ここに現れる>


「……」

出てこない。

<ベルンハルトの頬が痒くなる>


書き終えてじっとベルンハルトを見ていると、睨まれた。

なんだ、くしゃみはたまたまだったか、と残念に思っていればベルンハルトが頬をかいた。

「……」

我慢したてのかな、効くのはベルンハルト限定?

「何を書いているのですか?」

「ちょっと、ええ、作者……じゃない、創造主としてどこまでお二人に干渉できるか確認しています」


<アウレールがあくびをする>


じ、とアウレールを見ると、ぎゅ、と口に力が込められほんのすこし小鼻が震えた。

あくびをこらえたのだろう。

──多少抗うことは可能なのかな。


<私たちは夕食の話をする>

「干渉、ですか。あなたは創造主なのですから、僕達を操ることくらい容易いのでは? ところで、そろそろ夕食を調達しないといけませんね」

「……なるほど」

「どうしました?」


ノートを使えば創造主としての仕事が出来そうである。

物理法則を無視するのは出来ないみたいだ。質量保存の法則、等価交換、一は全で全は一ってばっちゃが言ってた。


「なんでもないです。このノートは私が預かりますね」

「それは、俺の要求を飲むということか?」

「えー、善処します」

善処します、頑張ります、答えはぜーんぶイイエですけどね!日本人だもの、さくしゃ。

「私がこの世界に降り立つ前、えーと、お空の上から歴史を紡ぐならまだしも、さすがに地上じゃあ星も月も輝けません」

砂の中の銀河はちょっと埃っぽい。風の中の昴はちょっとよく分からない。けれど地上の星はなんかいいこと言ってる感でるね、無責任です。


「なので私を元の世界に返していただくわけには」

「できるがまた生贄が必要だな」

「ヒエッ」

出た生贄!一体何を代償にしたんですか!アッやっぱり聞きたくない怖いよおかあさーん!!


「あー……ほぼ一週間使ったもんね、生贄捕まえるの。二千体くらいは刻んだ気がする」

「ヒエッ」

「おかげで血なまぐさい匂いがまだ取れないな」

「わ、私のために血を流さないで……」

おかしいな、似たような言葉でもっと憬れるような言葉があったはずだ。こんな血みどろじゃない、女の子の夢が詰まった言葉が。


「まあ、創造主殿が望むなら、また多くの血を「大変申し訳ありませんでした現地から頑張らせて頂きます!!!!」


くく、と凶悪な顔でベルンハルトが笑った。

くそ、もうお前は魔王にしてやる!魔王だって王様だ。レッツゴー魔界の王座!!

お前が魔王になるんだよ!!!!ベルゼがバブー!!!!!!!!




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