2話・アイラとカル
暴力シーンあります カル頑張れ・・
陽も上がり人通りも増えた路地を男チビが、びっこを引き引き通り過ぎる。
背中に女チビを背負い泣き泣き足を引きずる様子が気になった。
街の者は、見て見ぬ振り野良に、関わると後々面倒だ誰もが、チラリと視線を向けるだけだった。
街道馬車の中継地だが、この街の金持ちと貧乏人の差は大きい。
モーブ男爵領だが、国外れ山々に囲まれてる。荒れた盆地では、魅力も無く街は寂れていた。
男爵家から役人が、派遣統括されてはいるが、実態は一握の権力者の支配下にあり金持ちが肥えていくばかりだ。
国を越え一攫千金を目指す冒険者の多くもこの地方で夢破れ。
目先が利く者は、サッサと余所へ行き、行き場の無い野良が、その日暮らしをしている。
食い詰めた流れ者に捨てられる子供。
孤児などは、国営の孤児院に引き取られるが、全てでは、無くガキの野良も多くいる。
その多くは冒険者・商人の下働きで小銭を稼ぎ食い繋いでいた。まぁ俺達も似たような育ちだ。
この世界は弱い者は生き残れず、他人の心配をする余裕も無い。
しかしこの時の俺はどうかしてた。顔見知りのガキの様子に我を忘れ駆け寄り声を掛けてた。
「おいどうした」
アイアン達も異常に気付き店を出て来た。
意識の無い女チビを抱き受け店へと運び長椅子に寝かす頬を腫らした女チビは、魔力切れを起こし気絶していた。
魔力切れは、命に関わる。
急ぎ首筋に手の平を当てゆっくりと俺の魔力を注ぐ。
手当をしながら男チビを怒鳴りつけた。
「どうして、約束を守れ無い。魔力切れをさせるなとわたしは言ったはずだ」
魔力を使い過ぎると魔力切れを起こし最悪命に関わる事があるのだ。
水売りを初めた頃 自分の限界を知らず倒れた事があった。その時に魔力切れの恐ろしさを教えたばかりなのに、なぜだと何度も男チビを責めた。
「市場で事情を聞いてくる」ラウルが店を出て行く。
「あいつらが、大きな壺に水を入れろと・・いやだと言ったらふたりとも殴られて」
鼻血と口の中を切って血だらけの顔をゆがめ泣く男チビ。腕も足もおそらく体も打撲だらけだろう。
薄く血の気が、戻って来た女チビの手当てをアイアンに頼み。
男チビの薄汚れた服を脱がし体を触診する。
「痛っ・・」腹回りを見たが、内臓は大丈夫だった。
全身アザだらけの体を見たアイアンが唸る。
「ガキ相手に許せねぇ」
「おれが、殴られ続けたからアイラは・・」
水を浸した布で、顔の血を拭き取り傷を確認。
「口をすすげ・・どれ・・少し不味いぞ」
二度口の中の血を洗い落とさせ切れたところに軟膏を塗った。「うえっ・・不味い」 俺も不味いと思う。
「あいつら絶対・・許さない」
落ち着いてきた男チビが、震えながら呟くその目は怒りに燃えいた。
「カ・・カルちゃん」意識を取り戻したアイラが、弱々しく手を差し出す。
その手を両手で握りしめカルは号泣した。
「わ・・わたし平気・・カルちゃんが・・痛い・・のは嫌」「おれ・・絶対あいつらに、仕返して・・やる」
「聞いてきたよ。ひどい話し」
戻って来たラウルの情報とカルの話しを合わせ確認する
事のはじめは、朝いつもと同じ市場の隅で、水売り・コップ一杯5角を初めた。
市場では、元締めに場所代を支払うのが、決まりだが、カルとアイラは許可を取らず水売りをしていた。
定期的に街道を往復する商隊の護衛達に連れ込まれ馬車に乗せている。壺に水を注ぐよう強要されたが、魔力切れを心配したカルは、アイラの手を引き逃げ出した。
その背を足蹴りされ転倒するカルをさらに蹴る男達。
泣きすがるアイラの襟首を捕まえ頬を叩き男は言う。
「こいつの腕・・へし折られたくないだろう」
「やめろ~アイラ・・いたい」カルの手首をつかみ軽々持ち上げ男は、アイラに命令した。
「水瓶を満タンにしろ」別の長身の男に脇を支えられたアイラは大きな水瓶に魔力を込め水を半分満たし意識を失った。
「隊長~こいつ使えないよ。魔力切れた」
男は意識を無くしぐったりしたアイラを道に投げ捨てる。「水売り呼んで来い」
カルをつかみ上げていた隊長は、アイラの上にカルを放り投げた。「野良は隅で、ゴミでも拾ってろ」
「ひでぇ・・」アイアンがテーブルの脚をける。
「みんな見て見ぬ振りさ」ラウルは、細い目をしかめつぶやく。俺は呟いた。「何時もの事だ」
回りに居た者達も日常よくある事と見て見ぬ振りをし
誰も男達をとがめなかった。
市場の元締めに場所代を払っていれば警備の者も動くが、潜りの水売りまして野良では見捨てるだけだ。
この世は弱い者ものは、泣き寝入りするだけ、泣きたく無ければ、強くなるしかなかった。
俺達もそうしてのし上がってきた。
作中人物の名前 考えるの大変にゃ~頑張る少年悩んで 愛猫(虹の橋渡りました)の名前つけました。
本編のヒロインの名前まだ決まらず 3冒険者=スミス~後ふたり 増える脇役決まらぬ名前