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カイロの夜

 うわははは! ここが千駄山ロッカの奥の手ワールドだ。

 お釈迦様でも気がつくめいってね。




−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−


 のんちゃん、ここだよ。

 覗いてみた?って、かくれんぼみたいっしょ。

 馬鹿ですね。本当に。


5月22日昼


 サックスさんお元気ですか?

 あなたのはげましで、やっとこ生きてるロッカです。


 エージくん返事書いたんだけど、上手く送信できないんだ。ごめんな。

 今度有料ブログで「美那子倶楽部」再出発するから、そん時リンクとか、色々教えてちょ。



 ○×○×さんご愛読ありがとう。これ「なろう」の会員番号だよね。作品教えてちょ。読みます。「続・続・崩落の日々」も少し、かかりそうです。





ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


5月21日gooブログ停止された記念すべき日


 くっそー! 一月かけてシコシコ作ってたgooブログの「超電導美那子倶楽部」がパアになっちまった。

 書きかけの小説その他、甚大な被害だよ。

 

 べつにブロガーを目指してたんじゃないんだけど。


 ひ〜ん!


 皆様にも喜んでもらってたのに。


 ところで皆さんブログ小説なんて、絶対書いちゃイカンよ。特に無料ブログなんて、しょせん借り物なんだから。先様の都合で止められちゃうんだから。


 劣悪サイトとのリンクが頻繁だからか?


 うーん。ノクターンやムーンライトは公序良俗に反するってか?


 ウメちゃんアンタは偉い。18禁サイト止めるなよ。なれなれしい口きいてゴメン。


 まあ当方はジジイだから、年齢に免じてカンベンな。


 その筋の方に言いたい。活字エロなんてほっときなさいっての。

 

 一ページ読むごとに「警告」が出るなんて、歴史に逆行してるって思わないか?

 

 たかがエロ文書きと「BDSM」サイトなんかと同じ扱いなんて、理解できないね。


 最近、本当に酷くなってきたよね。




 ま、ぐちはよしましょ。


 お陰で「なろう」をつかう事、思いついたんだからな。


 これからは、ブログの文章もなるたけ「なろう」をつかう事にしよう。


 ノクターンと違って「警告」出ないからイーヨネ。

 

 ま、「なろう」でエロは書かないよ。ご心配なく。


「なろう」の大将のウメちゃんは、gooブログみたいに薄情な事はしないよね。


 あ、ウメちゃん、これ、エッセイですからね。ま、誰も読んでる訳ないけど。




 あんまり世の中が閉塞的になると、私のバンド仲間の山下党首みたいなのが幅を利かすようになるんだよ。

 彼をパロディにした「NKSRの世界」ってのを書いたけど、こんな世の中だと、党首の言う通り、


「千駄山、NKSR、休眠中だけど、今までこんなにニーズを感じた事ないよ」


 てな感じで、党首のようなファシストがのしてくる世の中になるかもね。


 ああ、党首の事はgooブログで、写真付で紹介始めたばっかりだったのに!


 何十人か見た筈だよね。


「あ、百人以上の筈だよ」


 と参照太夫。



「よおし、千駄山、俺が活動再開して、党勢が拡大したら、お前のgooブログ、停止した奴、調べ上げて、粛清してやる!」

 と、党首。


「あら、ウー様(右翼)って怖いのね。頼りにしてるわよん」


 とロッカが言った。












 ところで、……小説を始めなきゃ。


 はじまりはじまり。



このお話は「超電導美那子オルタナティブ36 カイロの夜」です。


ちなみにオルタナティブ35は「カイロへ」なのです。


これは書きあがっております。





 ──推敲中小説。カイロの夜──





 プラモデルのような質感の丸窓の外には、カイロの見事な夜景が続いていた。

 やっと到着したのだ。

 着陸の際に耳鳴りはしたが爽快な気分であった。


「ぬるい映画を我慢で二本見て、うんざりする程眠って、機内食を2食食ったらカイロって訳かあ。身体が固まっちまったよ」

 エジブト航空の旅客機のエコノミークラスは本当に狭い。


 そもそも飛行機そのものが小さいのだ。

 アメリカ軍の爆撃機B52と同じくらいじゃなかろうか?

 何の根拠も無いのだが、「B52に乗ったつもり」は、善行にとっては更に得をした感じがするのだ。


 

「このパイロット、着陸上手いよ。本当にスムーズだ。前にマドリッドで冷や汗かいた事があるんだよ」

 と、通路の向こう側の席の男の声が聞こえる。


「だけど、ネコおばちゃん、このクラスの飛行機のパイロットは軍人出身のような気がする。うん。腕はいいに決まっているんだ」

 どんな時でもオジンは自分なりの理屈に帰結したがる。

「善行さん、パスポートちゃんとしといてね」

 と、ネコおばちゃんが言った。


 空港施設から出るなり、植え込みの脇で、さっそくタバコをくわえる善行よしゆきとネコおばちゃんである。


「あなた携帯灰皿は?」

「あれ? ネコおばちゃん持ったんじゃなかったの?」

「もお。いい加減なひとね」

「なあに、吸い殻、ティッシュに包んで持ってきゃいいさ」

 見れば、一緒のツアー客の中年男も、スパスパと外タバコの真っ最中であった。


「良かったわあ。お仲間がいるわ。ブダペストでもウイーンでも、タバコ吸いは私一人だったのよ。肩身が狭かったのよ」

 とネコおばちゃん。

「やあ、どうも。同志がいるとは有り難い。頼もしい」

 と話しかけると、男はニヤリと笑って携帯灰皿を差し出して言った。

「よかったらこれ、使って下さい。私はもう二つ程、持ってきましたから」

 親切でしかも周到な男である。


 そうそう。ツアー客5人で成立したエジプトツアーであった。

 せんだってまで9名だった筈なのだが、カップル2組がキャンセルした為に、5名と相成った次第だ。

 その上添乗員まで付いている。

 しかも色気のある飛びっきりの美人なのだ。(本当だよ)

 善行は、用も無いのに、思わず目で追ってしまう。



 用意のバスでホテルへ向かう。

 車中、添乗員は、現地ガイドのフセインと運転手のカダフィを紹介した。

 フセインとカダフィはどうでもいいのだが、この添乗員、細野道子は紛れも無い美人だ。(はいはい解った解った)

 三十歳前後といったところか?

 ズバリ二十八歳と観た善行だ。

 この年頃の美人の場合は、むしろ三十代に見える場合が往々にしてあるからだ。

 どんな男から見てもそそられるタイプだ。

 身長は、ズバリ158センチ。

 間違いない。

 つまり、脂の乗り切った、それでプロポーションの良い、エロ可愛くて綺麗な女なのだ。



 ホテルはピラミッド・コンチネンタル・ホテルというリゾートホテルで、広大な敷地の中、ゴージャスな本館以外に、コテージ風の二、三階建てのビルが、あちらこちらにレイアウトされている。

 まあ此処は、一言で言うならばオアシスである。

 この界隈は本来ならば砂漠との境界線といった所なのだろう。

 大資本という名の人間の英知で、水と植物をふんだんに使って、部分的にでも砂漠を押し戻した人工楽園。

 といった所である。


 だが、そんな感想も、此処では新参者である異邦人の、傲慢な思考と言わねばなるまい。

 何故なら、ものの十分もたたぬうちに感じてくるのだ。

 そうだ。五感が感じるのだ。

 此処でのすべては、神の思し召しなのだという事を。

 だが異邦人は、その神がどのような神であるかは知らぬ。

 或いは、知らぬままが良いのかもしれない。





 「呪い」の入る余地が、無いじゃないか!

 どうすべい?






 広い中庭にはアラバスターの遊歩道が敷かれ、綺麗にレイアウトされた椰子の木が、これはエジプト風なのだろうか? エキゾチックなデザインの石灯篭の照明に照らし出され、絵葉書そのままの色あいで、よく映えている。

 ガラス張りの本館の正面入口の前には、大きな池の中に野外ステージが設置されていて、客席の丸テーブルとパラソルが並んでいる。

 噴水はあるのだろうか? 

 と、日本人としては、思わず探してしまうのだが、なんと、広い池はプールなのだという。

(大規模な豊島園みたいじゃないか)

 善行は、こんな有難みの無い考えを、なんとか振り払おうとしている。

(そうだ。せっかくのエジプトなのだ。椰子の木と、ああ、大量の水。ちょっと汚いんじゃないか? また余計な事を……私の馬鹿! 神の思し召し。すべては思し召しなのだ)


 ロビーでの添乗員によるガイダンスの最中に、あのタバコ仲間の中年男が話しかけてきた。

「やあ、小野寺さん。私は部屋へ入ったらすぐにシャワーを浴びちゃうんです。食事の後、団体なんかが引き上げた後は、一気に出が悪くなったりするんですよ。だから20分後に食堂集合ってのは、どうにもね。プラス10分くらいはほしいですよ」

 カラフルなパパスのジャケットが、全然似合わないのだが、なかなか旅慣れた感じがする男である。

 成田のロビーで全員、自己紹介し合ったのであったが、善行は女性客の夢路めぐりと、添乗員の細野道子以外、つまりオヤジ二人については、全然、覚えちゃいない。

 だいたい善行という男には、初対面の男の顔なんて、へのへのもへじにしか見えないのだ。

 すかさず、もう一人のオヤジが言った。

「20分あったらひと泳ぎ出来ますよ。どうです? 食事前のひと泳ぎってのは。小野寺さんも官野さんも、水泳パンツ持ってきたんでしょ?」

 中庭のプールは広く、こちら側の方では、白人男性が3人でバシャバシャやっていた。

「アレはやっぱり、白人女じゃなくっちゃ、さまになんねえな」

 と善行はつぶやく。

 二階建てのコテージの外装は、ビラミッド時代の建物を思わせるデザインである。

 善行達の二階の部屋は広く、空調も良く、シャワーの出も、今のところはまあまあだった。

 ベッドにひっくり返った善行が言う。

「しかし、あの二人のオヤジ偉いな。ちゃんと他人の名前を覚えてるよ。成田じゃ慌ただしい自己紹介だったのになあ」

 ドレッサーに向かっているネコおばちゃんが言った。

「あなたと違って、普段ちゃんとしたお仕事してる人なのよ。官野さん、あの人は、公務員かしら。それとも、旅慣れた感じからすると、何かの、公社にお勤めかしら? 普段は堅い仕事してる人ね。結構偉い人だと思うわ。鈴木さんは、自営業っぽい感じもするけど、まだ分からないわね」

 二人で廊下へ出ると、官野氏と美人添乗員の細野道子がなにやら話している。

「あ、小野寺さん、トイレ大丈夫ですか? ちゃんと流れますか?」

 とパパスの似合わない官野が言った。

「私達の部屋は大丈夫ですけど」

 とネコおばちゃんが答える。

「だから、ペーバーは流さないで下さいって、言ったじゃないですか」

 と美人添乗員の道子は、何故だか、顔をひくつかしている。

「だから、流してないってば! 最初から流れないんだ!」

 と、官野氏はムっとしている様子だ。

「とにかく、ホテルの人に見てもらいますから、その間、官野さんの荷物、私の部屋へ入れときましょう」

 と言った道子の顔は、まるで怒っているようにしか見えない。

 鼻の上のところが、小じわも荒々しく、ヒクヒクと痙攣しているのだ。

 呆気にとられて、じっと眺めていた善行の耳をつかんで、エレベーターに引っ張り込むネコおばちゃんである。

「じっと見ちゃだめよ」

「ありゃ、もしかして、顔面神経痛か?」

「私は成田で気づいたのよ。せっかく、綺麗な人なのにね。本人は気づいてないかもね。あなた喋っちゃだめよ」


 食堂では、夢路めぐりと鈴木氏が待っていた。

「小野寺さん、プール来なかったじゃないですか。結局、僕一人で泳いできましたよ」

 と鈴木氏が言った。

 どこから見ても団塊世代の「まんま」にしか見えないオヤジである。

(ズバリ六十一歳ってとこだな。プラスマイナス一歳ってとこだ)

 色白の夢路めぐりは窓の外をものうげに見つめている。

(背が高いわりに全く圧力感を感じない女だ。痩せてるからだ。しかも白くてきめが細か

い肌だ。透明感さえある。なんでこんな女が? 若いくせにキャピキャピしたところがま

ったく無い。妙に落ち着いている。やっぱり失恋旅行か? この娘は二十四歳ってとこか。

プラスマイナス一歳)

 更に想像を巡らせる善行なのだ。

(この、夢路めぐりといい、添乗員の細野道子だって、並以上の、いや、本当に美人じゃないか。日本にいたって滅多にお目にかかれない代物だよ。よりによって、ネコおばちゃんのお供で来ている時、遭遇するなんて。ああ、助平根性が疼くなあ)

「夢路さんって本当に色が白いのねえ」

 と、ネコおばちゃんが話しかけている。

「あら、龍造寺さんだって、とっても素敵ですよ。そのお帽子も、とっても可愛いらしくって、本当に素敵ですよ」

 と、夢路めぐりはポーとした感じのわりには、そつのない受け答えをするではないか。

「あら嬉しいわね。女はおばあちゃんになっても、褒められると嬉しいものよ」

「あら、おばあちゃんだなんて、龍造寺さん、まだまだお若くて、お綺麗ですわあ。それに、こんな言い方、失礼かもしれないけど、とっても可愛いらしいって言うか……」

「わあ嬉しい。ねえ善行さん、夢路さんって本当にお綺麗よね。お人形さんみたいだと思

わない?」

(ネコおばちゃん、褒められて、嬉しさ余って私に振ったか)

「ええ、本当に雪のように真っ白だ。恥ずかしがっちゃいけません。色白美人は日本の宝ですよ」

 と、善行の物言いも、思わずグローバルになっている。

 鈴木氏もしきりにうなずいている。

「新潟のほうですか?」

 と、ネコおばちゃん。

「いいえ、栃木なんです。日光のとなり」

 と、夢路さん。

「するってえと、もしかして……イマイチですか?」

 と善行。

「えーそうなんです。私イマイチなんです。もお、これを言うのが、いつも楽しみなんですよお」

 と夢路さんは笑った。

 とびっきりの笑顔であった。

 長年の付き合いのせいで、善行には分かるのだ。

 おおむね人間嫌いのネコおばちゃんは、夢路めぐりが大層気に入ったらしい。


「ええ二十代最後の思い出にって。ちょうど有休も溜まってたし。私達って、なかなか思い通りには、休めないんですよ」

 なんと、夢路さんは二十九歳の看護士さんであった。

 予想が見事におっぱずれた善行が言う。

「しかし、若くて可愛らしくていらっしゃる」

 官野と添乗員の道子が来た。

 さっそくウェイターがやってきて、飲み物の注文を取る。

 土地のワインだと勧めるので、男共はグラスワインの赤に決めたのだが、官野氏の提案で、割り勘でボトルを取る事にした。

 テイスティングの後で鈴木氏が言った。

「カイロのワインもなかなか旨いな」

「何しろピラミッド時代から盛んに造られてたんですから」

 と官野氏。

「歴史だな。うん。ボトルで正解」

 と善行。

 どうやら男三人は、人並み以上の飲んべえであるらしい。

「生水は絶対止めて下さい。それから、以外な盲点なんですが、生野菜も危ないんです。何しろ土地の水で洗ったものですから」

 と添乗員の道子。

「へえ、そんなに危ないの?」

 と鈴木氏。

「ええ。前のツアーのお客様が3日間、ひどい下痢をしたそうです」

 と添乗員の道子。

 隣のテーブルにいるガイドのフセインが、歯を剥き出しにして笑い顔を作って見せる。

 国辱的な事は、やはり、ばつが悪いのだ。

「まあ、自信のある方はどうぞ」

 と鼻をひくつかして道子が言った。

 コースは結局、スープが一番旨かった。

 メインのカバブはパっとしない味で、豆料理はまずかったし、パイ皮に包んだやつは、なんとも変わった味だった。

 添えてある飯は善行の苦手なサフラン味。

 食べてはいけない生野菜がふんだんに出たのが悔しい。

(くそっ機内食の方がマシだ。あ、私の馬鹿。すべては神の思し召し。神だ。思し召しだ)

 善行が無意識にタバコをくわえると、ウエイターが飛んできた。

 ネコおばちゃん以下全員が善行を睨む。

(しまったあ! だけどまだ、火をつけた訳じゃない)

 ウエイターはにんまり笑って灰皿を置いていった。

 君子豹変す。ネコおばちゃんと官野氏は、さっそくタバコを取り出す。

 間違いなくこの三人はヘビースモーカーなのだ。

 ちゃんとしたテーブルでの至福のいっぷく。

 この状態は、最近は日本でも得難くなっている。

「ふう、なかなかいい所じゃないか」

 と、善行。

 ネコおばちゃんと、同志官野が煙をくゆらして笑う。

「ああ、僕は羊が好きじゃないからなあ。こんなんじゃ欲求不満になりますよ」

 と鈴木氏が不平の口火を切った。

「でも、まあパンは美味しかったわね。チーズは……」

 とネコおばちゃん。

「もひとつですね。固いし」

 と官野氏。

「ああ、生野菜、ナツメなんかもついてて、美味しそうでしたね」

 と夢路さん。

「あら、私はナツメもオリーブも食べちゃったわよ。どうせ老い先短い命ですから」

 とネコおばちゃんは鼻から煙をふきだす。

 隣のテーブルでは添乗員の道子とフセインが、何やら楽しそうに盛り上がっている。

「善行さんは羊肉、好きなのよね」

 とネコおばちゃん。

「ジンギスカンのタレが必要だな」

 と善行。

 まくわ瓜の皮とスイカの皮と、いまいち不評なケーキの残骸を残して、ネコおばちゃんと夢路さんは、部屋へ引き上げるとの事だ。


「さて、日本男児の皆さん、ここで重大発表があります」

 と、笑いをかみ殺した顔の官野氏が、空になったワインボトルを高くかざして言った。

「え?」

「まさか?」

 と、鈴木氏と善行。

「ネーデルランドだ。わはははは」

 と官野氏は爆笑した。

「オランダじゃないか! 何が土地のワインだ!」

「いいかげんな国だ!」

「あははは、ボトル見るんじゃなかった」

「旨かった筈だ」

「あはははは」

 しかし、この事で三人共、何故だかぐっと、エジプトに対して、親近感が湧いた事も確かであった。


「やっぱりこの辺で、スピリッツが欲しくなりません?」

 と官野氏が提案した。

「ほおスピリッツ?」

 と鈴木氏。

「カッコイイ言い方だな。覚えておこう」

 と善行。

 飲み足りない男共は、勇んでバーに出かける事にした。

 円形カウンターのバーは格好よかった。

 高いイスに座り、振り向けばグランドピアノがあり、チョビ髭の優男がニヤけた顔で、弾き語りをしている。

 官野氏が話しかけてきた。

「小野寺さん、この曲、大好きな曲なんだけどなあ。何だかちょっと変じゃないですか?」

「あ、官野さん、そんなに大きな声じゃ……」

 と心配顔の鈴木氏がピアニストを見ながら言う。

「鈴木さん大丈夫だよ。日本語、分かる奴なんていないよ」

 と善行。

 注目されている事が嬉しいピアニストは、しきりに眉毛を上下に動かしている。

「うーん、キリング・ミー・ソフトリーなんだが、ちょっと違うんだよなあ」

 と官野氏は首をひねる。

「あのね、知ったかぶりしちゃうけど、セブンス以上のコードを使ってないんですよ。メジャー・セブンスやナインスを省略してるのも凄いけど、マイナー・セブンスが無いのが致命的だな。歌は上手いんだけどなあ」

 と、善行。

「成る程。分かります。単純なコードで弾いた結果の、間抜けな伴奏って訳ですね」

 と、納得顔の官野氏。

「そうそう。こんな珍妙な演奏は、滅多に聴けるもんじゃない。おおいに楽しみましょ」

 と善行。

「カイロで最初の夜ですからね」

 と鈴木氏。

 ピアニストは、これ以上はないほどのスマイルを浮かべて歌い上げる。

 円形カウンターに他の客は無く、バーテンは3人。

 皆、彫りの深い顔をした浅黒オヤジで、なかなか恰好良い。

 官野が、何か変わったスピリッツを。と言っているようなのだが、なかなか通じない。

「アハハハ。コイツら英語が全く通じない」

 と官野氏。

 してみれば官野氏は堪能なのだろう。

 一番太っているバーテンが、ドンブリ大の皿にアーモンドとカシューナッツを、どひゃっと山盛りで二皿出して、

「サービス。サービス」

 と言った。

「面倒臭いからウイスキー、ロックで飲みましょ」

 と善行が提案。

 何かスコッチを。と言ったところ、結局『J&B』になって、官野氏が幹事となり金を払う。


 サービスのナッツは驚く程安かった。

 鈴木氏はマティーニを注文した。

 善行と官野氏のスコッチがロックグラスで出てきた。

 官野氏が催促して氷とミネラルウォーターが出た。

 バーテン三人は何やら話し合っている。

「あ、僕のマティーニ、待ってないで、お先にどうぞ」

 と鈴木氏。

 善行はグラスに氷を入れて飲み始めた。

「夜はやっぱりスピリッツですな」

 と官野氏はストレートでぐいぐい飲む。

「お強いですねえ」

 と善行が言うと、

「なあに最初の一杯だけですよ。次からは水割りにしときます。しかし良心的ですよね。この値段で、ダブル半以上はある。シングル、ダブルって概念がないみたいだ」

 とロックグラスをかざして官野氏。

 空のグラスに氷とミネラルを入れて飲んだ鈴木氏が言った。

「あっこの水、タンサンだ」

「じゃあハイボールにしましょ」

 と官野氏は、さっそく二杯目を貰って氷を入れタンサンを注ぐ。

 カウンターの上に、バーテンが金を並べて何やら言っている。

 マティーニは無いと言って、返金しているのだ。


「だって棚の上にドライベルモットも、ジンだって、あるじゃないか」

 と、おあずけをくっていた鈴木氏はおかんむりだ。

「アハハハ、空ビン飾ってたりして。鈴木さん、観念してハイボール飲みましょうよ」

 と、ほろ酔いの官野氏はいい機嫌だ。

「うん。おかしいぞ。あのね、この人達はおそらく、本物のバーテンじゃないよ。つまり、留守番っていうか、第一、このドンブリ二杯のナッツが、合わして一エジプトポンドだろ? 百円以下じゃないか。どう考えたって安すぎる。これは……」

 と善行。

「あーもお、鈴木さん、何でもいいじゃないですかあ。飲めるもんを、飲みましょ、飲みましょ」

 と官野氏は金を出して、鈴木と善行の分も注文する。


「乾杯! 乾杯」

 仕切りなおしである。

「カンペー。カンペー」

 とバーテン達が笑顔で口真似をする。

「そりゃ、韓国だ」

 と、やっと飲めた鈴木氏。

「彼らから見れば、日本も韓国も似たり寄ったりでしょう」

 と官野氏。

「あはは、みそくそいっしょだあ」

 と善行。

「どっちがみそなんでしょう?」

 と鈴木氏。

「当然、残った方がくそって事になりますねえ」

 と官野氏。

「あははははヤバイヤバイ」

 と善行。

 演奏を終えたピアニストと、偽者のバーテン諸君にもコーラをおごってやって、(ビールをすすめたのだが、イスラムの手前がある為か、アルコールはいらないとぬかすのだ)

 とにかく、グラスを重ね、宴会は続く。

 いい調子の善行は、カウンターのピアニストに喋っている。

「なあチョビ髭、お前もっとコードの勉強しなきゃな。ビール飲めよ。酒飲まにゃあブルースは歌えないってんだよ」

「オオ! ブルース。〜ン〜ジョージア 〜ン〜」

 とピアニストは恍惚顔を作って一節。

 しらふのくせに、酔っ払いの雰囲気がよく分かってらっしゃる男だ。

 善行のテンションも上がる。

(ドンと来いってなもんだ。なんのこれしき。金満日本ここにありって、ま、これは官野さんと鈴木さんの事だよ。ね、神様)

「しかし、どうしてマティーニの注文、受けちゃったんですかね。最初から断ればいいのに」

 と、すっかり赤くなった鈴木氏が言う。

「あははは、誰かが作れるかもしれないって思ったんだよ。私にしたって、あなた達が、旅慣れてて、語学も堪能だと思えばこそ、異国の夜をこうやって、安心して満喫できるってもんです。勘定だって官野さんにまかせっきりにして。ね」

 と善行。

「そうだ。僕の部屋にウイスキーがある。清算がてら、飲んでって下さいよ」

 と鈴木氏が言った。

 偽バーテン諸君に、氷をどひゃっとタダで貰った。

 氷の入ったビニール袋をぶら下げた三人は、バーを後にした。


 その後、鈴木氏の部屋で清算を済まして、寝酒であろうバランタインを、ロックでしこたま飲んだ。

 素性は詮索しない事に決めて、お互いに納得したのであったが、飲んでいるうちに、どうしても少しずつ馬脚を現す。

 鈴木一郎氏は六十一歳。善行の予想、大当たりである。

 官野良太氏は五十一歳であった。

「あー。私が一番年下ですから」

 と言いながら官野氏は、皆の水割りをせっせと作った。

 さきほどから再三、

「憎まれ者の公務員ですよ」

とか、

「税金泥棒の公務員だよ」

などとおっしゃっている。

それから自分の部下の事を兵隊と呼んだりもする。

 市役所や区役所の、或いは、県庁や都庁の役人とは、ちょっと味が違うように思うのだ。

 話の断片を寄せ集めて結論が出た。

 官野氏は○○省の官僚であるらしい。

 しかも話ぶりからも、年齢からも、偉い人だという事が察せられる。

(流石はネコおばちゃんだ。大当たり)


 つまり、善行の目の前に、普段まったく馴染みの無い、高級官僚さんがいらっしゃるのだ。

 趣味は海外ツアーに出かける事だと言っている。

 仕事でも外国行きはあるらしいのだが、そんなものは旅行じゃないとおっしゃる。

 歴史が好きで、政治的な面でも、それなりの考えを構築している風だ。

 ともあれ、嫌味の無いストレートな性格の好漢である。

 似合わないパパスの洋服に、彼の心情が現れている。


(難を言えば、……

 他人の話を聞く時なんか、フンフン成る程。

 フン。

 成る程ね。

 といった感じの、

 さも急がしげな、

 頭の良さげな、

 ナナメ上から目線の、

 聞いてやるぞって感じの。

 つまり官僚っぽさが出るくらいかな? 

 あははは。しかし、

 実際に官僚なんだもんなあ。

 これはしょうがない。

 基本的には、真面目な人間だな。

 つまり、真面目な人間とは、

 労を厭わない人間の事だ。

 報われれば喜び、報われなければ腹を立てる。

 きわめて健全だ。……

 不真面目な人間ってのは、

 そもそも労が嫌いで、責任重く報酬少ない事には、

 近づくのも 嫌がる奴だ。

 きわめて不健全。

 ……まるで私じゃないか。

 ……健全な人間は人を騙そうとしない。

 だから、馬鹿な人間を、そのまま馬鹿じゃない?

 と言ったりしてしまう。

 そして、その事がよく問題になる。

 そもそも、悪い政治家みたいな奴は、馬鹿な奴を見つけると、

 遠くからでもわざわざすっ飛んできて、喜び勇んでさっそく騙しにかかる。

 官野氏に、そんな姑息さはない。

 これは愛すべき点だ。

 まあそんな風だから、ノーパンシャブシャブ接待に弱いんだろな。

 だけど、スレてる奴よりは余程マシじゃないか。

 ……良かった。こういう官僚がいる限り、日本はこれ以上は落ちない感じがする。

 まあ、良くならないにしても)


 鈴木氏は謎の人のままにしておいた。


「俺は悩まない! やる時はやるし、出来ない事はやらない。ぐだぐだと、のうがきをた

れる、そんなもん、言葉の遊びだ! 俺の同期は山ん中に埋まっている奴も、いっぱいい

るんだ! つまり、いわゆる、ひとつのこれは、くそっくそっ、つまみがほしいぜ」

 と、盛大に飲み、盛大に若返り、盛大に吼え、突発的に爆睡してしまった。

 すべてが団塊らしい。としか言いようがない。

 爆睡中の鈴木氏の傍らで飲み会は続く。

「いやあ彼ら(団塊)ときた日にゃあ。……小野寺さん、今日本の官僚は三倍に増えてる

んですよ。定年が延びたせいでね。しかも若い優秀な人材は外資に捕られちゃう。十倍の

賃金じゃ太刀打ちできませんからね。天下りだけが楽しみな、年寄り官僚がゴマンといる

わけですよ。ま、私もその一人なんですけど。そもそも、コイツなら事務次官になって、

しかるべきだ。という奴がなるならいいんです。しかし現実には、どうしてコイツなの? 

はははは、ま、私らの世界は狭いって事ですよ。しかも東大閥が更に狭い世界を作ってる

んだから。まったく、……やんなっちゃう」

 開き直った感の、官野氏は、それなりのストレスを抱えているのだろう。


「なるほど。いや、私にはまったく分からない事ですが、ただ私は、無理をしてパパスの

原色のジャケットを着て、ナップサックを背負っている官野さんを見てると、何故だか非

常に好ましく感じるんですよ」

 と、言葉が見つからない善行は、とりあえず喋っている。


「いや、私にしたって、ガラの悪いサングラスをかけて、派手なシャツを着て、トランク

スの透けてる薄地のハーレムパンツをはいた小野寺さんを見てると、頑張ってるなあって

思うんですよ」

 と、官野氏も、とりあえず喋っているようだ。


「いやいや、似合わない半ズボンをはいて、ナップサックじゃ飽き足らず、フロントポー

チから、もそもそとお金を取り出してる官野さんを見ていると、戦ってるなあって……」

「うははははは。このへんにしときましょう。楽しかったなあ。小野寺さん、もしかして、

おばちゃんがご立腹で、締め出されたら、私の部屋、遠慮なくノックして下さいよ」

 ここで鈴木氏がいきなり、ガバと起き上がって言った。


「おい。この部屋だってツインだよ。若いの! そっちのベッドに泊まっていけよ」

 こう言うなり、再び倒れ、イビキをかき始めた。

「ああ、いいなあ。『若いの!』だもんなあ。私、こういう浪花節に弱いんですよ。日本にいるときゃ大嫌いだけど」

 と酔っ払いの官野は、目をうるうるさせている。

「しかし鈴木さんって、酔っ払うと落差の激しい人だな」

 と善行。

「うわ! 小野寺さん3時半になっちゃう。退散しましょ。全部飲んじゃったし」

「そうだ。明日はピラミッドだ。朝も早い。退散しよう」


 こうして、第一夜は無事に終ったと思ったのだが……。



 朝食の時間である。

「じゃ、私、行くわよ。ねえ、少しは食べておいた方がいいんじゃないの?」

 と、心配顔のネコおばちゃんが言う。

「本当にすまん。後から行くかもしれないけど、とにかく先に行ってくれ」

 と、善行が答える。

 善行は便座に座ったままだ。

 あれから部屋に帰って、シャワーを浴びて、腰タオル一丁で、電気ポットでお湯を沸か

し(旅行中、電気ポットがあったのはこの部屋だけであった)インスタントコーヒーを飲んでいたら、にわかにもよおしてきたのだ。

 さっそくトイレに飛び込んだ。

 腹は、完璧に破壊されていた。

 液状化した便がほとばしる。

 強烈な腹痛、そして放水のような便。

 征露丸を四つぶ飲んで、便座に座ったままうずく

まる。

 お蔭さまで、便器の中にニョッキリ突き出している、人差し指大のノズル、イスラム式・ウ

ォシュレットの使い方が、めっきり上手くなった。

 このノズルは便器と連動している訳じゃない。単なる水道ノズルなのだ。だから冷たい

し、勢いと噴水の軌道はあくまで自分で調節する。

 お篭りの最中、ネコおばちゃんが起きて、トイレのドアに向かって言った。

「馬鹿ねえ、氷は土地の水で作ってるに決まってるじゃない。野菜どころじゃないわ。土

地の水をガブ飲みしたのと同じ事じゃない」

「うかつだった」

「うかつじゃないわよ。馬鹿なのよ。とにかく、一旦出てよ。私だってトイレ使うんだから」

 結局トイレ通いは四度に及び、合計十六つぶの征露丸を飲んだ事になる。

 さすがに、いささか秘結されてきたらしく、腹痛と便意は収まった。

 しかし、食物や液体を摂取した瞬間、元の木阿弥となる事、必至である。


「はあ。食欲はない。朝は、いつだってない。だからかまわない。しかしコーヒーが飲みたい。無性に飲みたい。せめて一口、なめるだけでもいい」

 7時過ぎなのにまだ暗い。

 カイロの朝のコーヒーを求めて、善行は食堂のある本館へと向かった。

 敷石の上をふらふら歩いていると声をかけられた。

「小野寺さん、おはよう。一緒にどうですか?」

 まだ薄暗いプールの中を、鈴木氏がバシャバシャと、抜き手を切って泳いでいるではないか。

(まったく、あんたは化けものか?)

「鈴木さん、お腹、大丈夫ですか?」

 と尋ねると、

「はあ? 何ですかあ?」

(もお、あんたには負けたよ)


 食堂の朝食はバイキングであった。

 夕べより旨そうな料理が並んでいる。

 コーヒーも紅茶も、ジュース類だって、パパイヤ、マンゴー、パイナッブルにトマト。

 オレンジもあれば、ラッシーまであるのだ。


 コーヒーを一つ持って、ネコおばちゃんのテーブルへ行く。

 夢路さんもいた。

「だんぜん朝の方が美味しいですよ。それに飲み物もいっぱい。あれ? 小野寺さん、朝は食べないんですか?」

 ネコおばちゃんが笑いながら言う。

「この人は、若い頃から放蕩を尽くしてきた人だから、完全に夜型なの。朝はまったく駄目なのよ」

「あのねネコおばちゃん、私は何もね、好きで食べないんじゃないんだよ」

「どうしたんですか?」

 と夢路さん。

 善行が答えようとすると、すかさずネコおばちゃんが割って入った。

「善行さん、食事時にふさわしくない話はダメよ」

 添乗員の奥野道子がきた。

「おはようございます。どうでした? ゆうべのバーは。楽しかった?」

「そりゃもう」

 とだけ言って、善行は退散した。


 今夜も宿泊はこの部屋なのだ。明日からは一カ所一泊の渡り鳥である。

 時間ギリギリまでトイレで絞り出した善行は、征露丸を更に三つぶ飲んで、着替えの中の一番厚手のズボンであるストレッチの、ジーンズもどきをはいた。股がみが深く、臍まで隠れるやつだ。 本日はキャリーバッグを置いて行くので、カメラバッグに、念のためにトランクスを二枚入れた。

 出発時間となり、ふらふらとバスに乗る。

 二十四席あるマイクロ・バスに、運転手も含めて総勢8名は有り難い。

 官野氏が、空気の抜けた風船みたいに、しょぼんと座っていた。

「おはようございます」

 と、ことさら元気に挨拶してやった。

 官野氏は、

「あれ? 平気でしたか?」

 と、露骨にがっかりした様子だ。

 善行は、もう少しからかってやりたかったのだが、そんな余力はなかった。

「いや、とんでもない、さっきまで、トイレに篭ってましたよ」

 と言うと、

「私もです。念のため、バンツ二枚、はいてきましたよ。あはは似合わない半ズボンはやめて」

 と官野氏。

「いやあ私も、透けると困った事になるから、臍上のストレッチですよ」

 と善行。

 官野が声を潜めて言った。

「しかし、鈴木さん、丈夫な人ですね。なんともないそうですよ」

「朝っぱらから泳いでましたよ。あの人、結構飲んでましたよね」

「氷なんかガリガリ噛ってましたよ。……我々が死に絶えた後も団塊の人は、元気に闊歩してるんでしょうかね」


 ガイドのフセインが喋り始めた。

 エジプトの面積、人口、砂漠の割合、経済事情、そして、ピラミッドの話になったとこ

ろで、メンカフラー王のピラミッドに着いた。

 ピラミッドとは、偉大な阿呆らしさの固まりだ。などと実感しつつ、善行は大三角形を

背景にネコおばちゃんの写真を撮りまくる。

 中の通路を頭をぶつけながら進む。白人男女でごった返していて、立ち止まっちゃいけ

ない。

 大入り満員の玄室へ着いて、へたり込む。

 この往復で、へとへとになった善行と官野は、スフィンクスの前では、バスから降りず

に眠っていた。

 ナイル川の船上レストランの中、

「ラマダン中だから我々もラマダン体験だ」

 と負け惜しみを言い、せっかくの昼食を横目に、陸に上がってタバコをふかす善行と、同志官野であった。

(同志よ、今は我慢、我慢ですぞお)

 午後からは「エジプト考古学博物館」へ行った。

 あらかたの時間を館内のベンチですごし、トイレに行く度に、番人にチップを払う。 こうして、やっとホテルへ帰った。


 ラマダンは、夜は解禁になるのだとばかり、夕飯の誘惑に負けた事と、我慢できずに飲んじゃったビールが引き金となり、善行も官野も自室のトイレに飛び込んだ。

 鉄人鈴木はまた、ひと泳ぎするとの事。

「金髪のボインちゃんがいっぱい泳いでますよ。どうです後でカジノへ行ってみませんか? 今夜は、美人添乗員さんも来るそうですよ。」

(ああ、悔しい。イスラミックウォシュレットよ、お前だけが友達だ)



 メモ



 博物館見学の最中、善行はミイラの呪いを彷彿とさせる事を体験する。


 或いは、ミイラを見学しながら、呪いに関係する事を体験する。


 呪いを受けるなら、飛行機の中の方がいい?


 着いた日の夜下った訳だし。


 着いてすぐ?




 とにかく呪いをキーワードにする。


 そして、こう落とす。

 呪いはまだまだ解けないらしい。



 こんな時は大人しく薬を飲み、明日の為に早寝をするのだ。

 それにしても、勿体ないカイロの夜である。


「ふん。ミイラだって何もしないで何千年も寝てばかりいるんだ」

 善行の負け惜しみを尻目にネコおばちゃんは、夢路さんと買い物に出かけた。








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