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1日目
初日。
敵方に動きはない。
誰が敵かわからない以上、私まで街に入るわけにもいかない。
となると依然街の外に待機する他なく、細やかな監視が出来ないのが辛いところだ。とはいえ、私にはサーチがある。
勇者に直接干渉があるかないか、程度であれば把握は容易い。…街一つ離れてなければ、だが。
思考が、逸れた。
早くも疲れているのかもしれない。
「……んっ」
顔を叩いて気付けする。
さて、勇者は今、部屋で鍛練中のようだ。
おそらくだが、今回の敵は直接戦闘を得意としない。あるいは、そのレベルが勇者一行には及ばないのだろう。
でなければここまで回りくどく周到な方法を採る必要がない。
……むしろ、その方が厄介だ。
十中八九相手はこのままはめ殺しに入る。
どんな動きをするかわからない。それが一番の問題で、私が後手に回らざるを得ない理由だ。