昼の部③ 出発
今回説明回です。
結論から言えば、私は勇者一行に無事加わることができた。
どうやら二人とも私に気付かず、その隠密能力が実力として取られたらしい。
…隠密に自信があるのは確かだが、実際は二人が夢中過ぎてこちらを見なかった、というのが正しいだろう。
が、せっかくの勘違いを利用しない手はない。ので、その場は適当に合わせておいた。
「………」
そして、今。
私は、街(なんでも、魔王軍に襲われたらしい)に向かう勇者一行をストーキングしている。
理由は簡単。隠密能力を買われすぎたからだ。
どうも勇者から見て私は一緒に行動するより後ろに潜み敵が出た時は奇襲する、という運用が一番いいらしい。
その通りですありがとう。
正直直接戦闘はそこまで得意ではないので、こちらとしてもありがたいことだ。
…別に、肉弾戦が出来ないわけじゃない。ただ少し…いやかなり納めた拳法が、女として恥ずかしいのだ。
閑話休題。
ここらで勇者一行について詳しく述べたいと思う。
まず先頭を行くのは勇者。名はセタンタ。雷魔法全般が得意だそうで、一通りの神話も納めているとのこと。万能すぎるナイスガイだ。
次に剣士。名はアーサー。
特に魔法を使えないらしいが、生まれつき魔法に極めて強い耐性を持つとのこと。理想的なメイン盾、と言ったところか。
後ろには魔法使い。名はモルガン。
威力は無いものの高度の幻術を使いこなす。師匠直伝とのことでほとんど彼女オリジナルの魔術と言っていいだろう。高性能なデバッファー。
最後尾には僧侶。名はメイ。
聖女と謳われる最優の癒し手で、アフロディーテ由来の美の癒しとやらを行使する。おそらく彼女を潰さなければ勇者一行に負けはないだろう、凄まじいヒーラーだ。
……と、ついでに魔法についても語っておこうか。魔法とはその名の通り魔力を行使して使用する術のことだ。
やり方は大別すると二つある。
一つは、大昔の神話や伝説からそこに宿る所謂“憧れ”、読者たちの羨望を利用して大威力の魔法を行使する方法だ。
最もスタンダードで、魔法と言ったら普通こちらを指す。高威力でお手軽だが、よく知られすぎている為に対処もされやすい。
そしてもう一つが、モルガンの使うようなオリジナルの魔法だ。“憧れ”による補正がないためにその威力は極々小さいか、魔力消費がバカにならないものが多い。かなり工夫しないとピーキーな魔法しか出来ないが、相手に知られないというメリットはかなりデカイ。
相手は常に初見の解析を強いられるわけだ。
……勇者一行が街に着いた。