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俺はキミがどうしようもなく好きだ。  作者: クールホーク
9/10

俺は荒冬夜が好きだ。

「叉乎ちゃん、悪いけど今疲れてるから、寝させてよ」

叉乎ちゃんに荒冬夜の家に行ってきたことを言い、ベットにそのまま直行する。

叉乎ちゃんは俺がベットで横になったことを確認すると、俺の隣にくる。


「荒冬夜って、二組の男の子でしょ?

そうだよね、もう高校生だもんねー。

年上の幼馴染より同級生の友達を優先するよね」


え、なに? 嫉妬っすか?

ってか、荒冬夜は女……ってことを言ったら、もっと嫉妬しちゃいそう。


ってか、とても21の大人が言うセリフとは思えねぇ……。


「で? どうよ。教師としての調子は」

折角来てもらったから、(頼んでないけど)何となく質問をしてみる。

特に深い意味はない。


「お、私のことを気にかけてくれるのか! ありがとう!

調子はまぁまぁだよ。

というか、豹ちゃんと私が同じクラスになれてほんとよかった! 」


最後の方のセリフは何となく流しながら、棒読みで「よかったね」と言う。

自分から質問しといてって感じだけど。

ふと、堀芭のことを思い出す。

こういうのは、言わないほうがいいよなぁ……。


でも、叉乎ちゃんのどこがいいんだろうか。

目がパッチリしてて、

顔は小さくて、眼鏡はかけてない。

ポニーテールの、肌は白い。


少女漫画のヒロインみたいだ。

んー。


確かにモテるわな。

距離感が近すぎて、好きとかっていうのは良くわかんない。

女子で特別可愛いって思う子が滅多に登場しないのは、幼馴染の叉乎ちゃんが可愛すぎるからだろうか。


「ねぇ、叉乎ちゃんはさ。

告られたこととかあるの? 」

少しでも堀芭の手助けが出来るようにするために、一応告白されているのかを聞いてみる。


「当たり前じゃない。

あるに決まってるでしょ。

21歳の女をバカにしてんじゃないわよ!? 」


意外にあっさり返ってきた。


まぁそりゃそうか。21歳にもなれば、

モテ期の1回や2回は経験してるか。

「ちなみに好きなタイプは? 」

「勇気があって、実は優しくて、

男らしい人かな。

つまり豹ちゃんみたいな人! 」

「ふーん。じゃあ……」


俺は堀芭のことをどう思うかを聞こうとした。

その瞬間に、叉乎ちゃんがいきなりツッコミを入れてきた。


「ちょいちょい!

今の私、告白したつもりなんだけど!? 」

あぁ。

告白ですか。


!?


ちょ、は?

告白……は!?

意味分からんし!


「さ、叉乎ちゃんは無理! 」

咄嗟に最低な言葉が出てしまった。

叉乎ちゃんは少し驚く。

その後に、苦い顔をしたあと、

静かに俺の部屋から出てった。


うっ……違う……そんなんじゃなくってだな……。

あぁ。

最低だ、俺。


だって考えてみろよ。

俺が荒冬夜に頑張って告白した時に、

荒冬夜から、「凍樹は無理! 」

って言われるのと同じだぞ!?


何て俺は最低なんだ……。


ただ俺はっ! 堀芭のために……。

こんなのただの言い訳じゃねえかよ。


まぁいいや。

堀芭に、諦めろとだけ言っとくか。

なんせ叉乎ちゃんは俺のことが好きなんだからな。


なんか俺、どんどんクズになってる。


**


放課後、堀芭を6年1組のクラスの廊下の前に呼び出す。


「堀芭、叉乎ちゃ……前川先生は諦めろ」

俺がそういうと、堀芭は一瞬顔を引きつらせ、その後に

「んでお前にそんなこと決められないといけねぇの? 」

と、かなり怒り気味に言った。


そりゃそうなるわな。

いきなり大して仲がいいわけでもない奴に、好きな女を諦めろなんて言われたら、キレるに決まってるか。


「前川先生は、別に好きな人がいるんだとよ」

「は? 」

目を細めさせて、低い声で堀芭は言った。


「なんでオメェはそのことを知ってんだよ、嘘っぽいぞ」

俺は大きくため息をつく。

そのため息に、堀芭は余計イラついている。

「このこと言われて、嫉妬すんなよ」

「あぁ……(? )」

「実はな……。

叉乎ちゃんは、俺の幼馴染なんだよ」

「え……!? 」


堀芭はマジで驚いている。

そりゃ信じられねぇか。


ってか、嫌いな奴の幼馴染が好きな人ってどんな気持ちになるんだろう。


……。

絶対に嫌だな、俺だったら。

嫉妬するなんてレベルじゃねぇぞ。

あぁ。言わなきゃ良かった。


「マジかよ……。前川先生が?

お前の? 幼馴染か。ふーん。

信じると思うか? 」

「信じろよ」


だよなー。

このことを伝えてる相手が、よりにもよって堀芭だもんなー。


ここで何か決定的な証拠が生まれたりとかしないと、堀芭は信じねぇな。


と、そこに……。


「し……凍樹君……。

と、堀芭君? 」

「前川先生……」


うひょー! タイミングが完璧すぎる! これぞ奇跡!


「まっ……前川先生!? 」

堀芭の顔色は、一気に赤になっていく。好きなんだなぁ……。

窓から、太陽が沈んでいく様子が見える。


「叉乎ちゃん、昨日は悪かったな。

俺が無神経なこと(? )言っちまって」

堀芭が軽く驚いているのが、視界の端の方にうつる。

「気にしないで。私こそ昨日急に……あんなことしちゃってゴメンね。

それよりも、堀芭君は良いの?

聞いてるよ? 」

「えっあ……」


堀芭は慌てる。

どうだ? 好きな人と嫌いな人が目の前で自分が聞いたことない話をしてるって。どんな気持ちだ? ん?


堀芭が慌ててるけど、同時に叉乎ちゃんも少し慌てている。

冷静なのは俺だけか。


「叉乎ちゃん、

堀芭にはもう言ったよ。

俺らが幼馴染ってことは」

堀芭はまだ驚いている。

さっき言ったろうが。

俺らは幼馴染って。


「で、叉乎ちゃん。

堀芭が叉乎ちゃんのこと……」

「お前殺すぞ」

低い声で堀芭が制してきた。

そして更に、堀芭が自ら口を開いた。

「前川先生。

俺、前川先生が好きなんすよ」

「えっ!? 」


叉乎ちゃんは少しキョどる。

最近あんま告白されてなかったのかなぁ。

「でも私は凍樹君が好きなの。

その……ゴメンね……」

「は? ……。

そういうことね。だから豹魔は俺にそんな風に諦めろとかって言ってきたわけね。すんげームカつくんだけど」


ムカつくっつったって、

俺には魅力があるけど、堀芭に魅力がないからフられたんだろ。


ま、叉乎ちゃんに魅力がないから俺も叉乎ちゃんはフるんだけどね。


「わり。叉乎ちゃん、俺、別に好きな人がいるんだわ」

もう言うことにした。

荒冬夜には悪いけど、荒冬夜が女だということもバレてしまう。


まぁいいや。


「俺、荒冬夜が好きなんだ。

ゴメン」

そう告げた瞬間、叉乎ちゃんが目を見開いて驚く。


「荒冬夜って、男の子……。

ホモ!? 」

「荒冬夜は女の子だよ」

「え!? 」


叉乎ちゃんは二度驚いた。

まぁそりゃそうなるわな。

誰でも驚くな。


「俺やっぱり荒冬夜視亞が

好きなんだ。

だから叉乎ちゃんの気持ちには答えられない」


真剣な眼差しで答える。

その瞬間、耳を疑うような声が聞こえた。


「えっ……!? 」

小動物のような声。

意外に高め。幼い。


その声の方へ向く。


まさか……。




「荒冬夜……!? 」

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