荒冬夜と蜜の裏事情。
頭にバスタオルをかけながら、
荒冬夜が戻ってくる。
蜜をちらりと見る。
頭にバスタオルをかけている。
もう風呂に入り終わったのか?
「じゃあ、おふろ入らせていただきます」
荒冬夜にそう言うと、
荒冬夜はコクリと頷く。
ああ。可愛い。水も滴る荒冬夜……って、何想像してんだ!
俺は少し顔を赤くしながら風呂場に向かう。
俺は記憶力がいいから、さっき蜜に三階へ連れてこられた時に、この家の見取り図は大体分かった。
風呂は二階のはず……。
二階の広々とした空間の横にある、細い通路を通り手当たり次第に扉を開けて行く。
奥から三番目の扉が風呂だった。
俺は最近ハマっている歌を口ずさみながら、風呂場に入り込む。
風呂の中は、そこそこ広い。
グッと手を伸ばす。
風呂の中からは、いい匂いがする。
「ふぅっ〜……」
**
三階に登ると、何か嫌な声が聞こえる。
「んっ……。
蜜っ……。キモちぃ……。
もっとっ! やって……」
!?
な、な、な!?
な、なぁ〜にやってんだ!?
恐る恐る扉の前に近づく。
「はぁっ……。
ふぅっ……。キ、キモちぃか?
もっとやってあげようか?
でもっ……俺もう……疲れたっ」
「でもっ……キモちぃからっ……
はぁんっ! 力……入れすぎ……」
ゴクリ。
喉を鳴らす。
もう我慢ができない。
俺の荒冬夜を……!
(俺の発言が変態だよ)
「な、なぁにやってんだ!
恥を知れ、恥を!! 」
そう怒鳴り、思い切りドアを開ける。
あ?
目の前に見えた光景は、
別に変なものでは無かった。
荒冬夜がうつ伏せになっていて、
蜜が荒冬夜の上に座っている。
勿論服は着ている。
「えっと……? 」
俺は恐る恐る二人に尋ねる。
今二人は、ナニ……してたの?
二人は少し不機嫌そうな顔をして、
そしてそのあと、大笑いをした。
「なっハハハハッハハハ!
なに? 変なことやってるとでも思った? やっぱ豹魔くん、君、男だねぇ」
な、、、!!
なんだよ! 勘違いして悪かったな!
あー! イラつく! ってか、
じゃあなにやってたんだよ!
「まぁまぁ、凍樹、怒んなよ。
今僕は蜜にマッサージしてもらってたの! massage!
アーユーオーケー? 」
な……ぬ……。
荒冬夜の、やけに発音のいい、
“アーユーオーケー? ”
に、ヤケに……イラつく。
「二人で俺を騙したのか! 」
俺は二人に怒鳴る。
すると二人は、いかにも不思議そうな顔をして、
「は? なにと勘違いしてるんだ? 」
と、口を揃えて言った。
と……とぼけんな……!
心の底から、無性にイライラが込み上げてくる。
まぁいい。
「で? 風呂にも入って、
美味いシチューまで食べて、
なにする? 」
俺は、二人に問いかける。
二人は、少し悩み面にになる。
で、俺らが出した答えは、
「寝るか」
**
「勿論、俺ら男子二人と
荒冬夜一人っていうチームで寝るんだろ」
当たり前だがそんなことを聞く。
少し、荒冬夜と一緒に寝れるのではないかなんて思ってしまった。
「んー。別になんでもいいぞ?
今日は僕は蜜と寝る。
明日はじゃあ、凍樹な」
ブフォーーーッ!
思わず喜んでしまう。
最&高!
でも、なんで一緒に寝ることを許してくれるんだ?
少し悩む。
すると、頭上から声がする。
「視亞は一人が苦手なんだよ。
事情は知らねーけどよー」
へぇ。
蜜の言われたことを聞き、
納得する。
一人が怖いなんて、なんて可愛らしいんだ。
見た目男なのに。
蜜と荒冬夜は二人で別の部屋に移動している。
「あ、凍樹の部屋はこのコタツの部屋の前の部屋だからな。
僕らは凍樹の部屋の隣」
そう一言言い放つと、
二人は(一時的な)俺の部屋の隣に行く。
はぁ。
なんだかなぁ……。
なにか……つっかかる……。
少し心にモヤっとしたものを気にしつつも、俺の部屋に入る。
割と広い。
二人寝れるぐらい広い布団に、
天井から床までの、大きいカーテン。
小さめのテレビまでついてる。
ふーん……。
**
しかし、やけに広いせいか、
なかなかねれない。
んー。
どうしたもんかな……。
人の家なんて、慣れねぇからな〜。
荒冬夜のとこでも行こうかな……。
**
静かに扉を開ける。
蜜と荒冬夜が隣同士で寝ている。
ズキッ! ……。
な……に? 今の……。
その部屋は、異様に静かで、
耳が痛くなりそうだ。
目を静かにつむり、ゆっくりと扉を閉める。
はぁ。
なにか……なぁ……。
**
その日はなかなかねれなかった。
慣れないってのもあるし、
あの二人がきになるし……。
はぁ!?
べ、別に荒冬夜と蜜の間に何かあるなんて……思わねぇし!
あいつらはただの幼馴染……。
はぁ。
やけに、ため息の数が……多い。
頭をぐしゃりとする。
頭痛がしてきた。
早く寝よ。
俺はこの時、直感で感じていた。
荒冬夜と蜜の間に、何かあるのではないかと……。