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俺はキミがどうしようもなく好きだ。  作者: クールホーク
3/10

うちの母親と兄は最低だ。

キュッキュッ! と、体育館に、靴のこすれる音がする。


俺は実は、荒冬夜のいるテニス部に入部することにした。


雨が降ったせいで、テニス部の練習はなんか中止になった。


中止にするんじゃなくて、他になんか策とかあんだろ。


そうイライラする気持ちを抑えて、

俺は暇だからバスケ部の練習を見学する。


テニス部はもう帰っていいと言われて、荒冬夜はもう帰った。


けれど俺は、家に帰ってもすることないから、バスケ部の俺の友達でも見てようかと考えたわけだ。


靴と床がこすれる音。

妙に気分が悪くなる。


バンバンッと、ボールをつく音が、

体育館中に響く。


そういえばやけに……女子が見学に来ている気がする。

なんだ?


女子の目線は、黒板を見つめながら授業を受ける生徒たちのように、一点に集中している。


その目線の先を探す。



なんだ。男……か……。


その目線の先は、皆、三年の先輩に集中していた。


夜魔月やまづき 叉毅さきだ。


強そうな名前だが、マジで強い。

ヤンキーっぽくて、イケメンで、

女子には優しくて、だけど決してデレデレはしない。


弱いものいじめをしている男子は、

間違いなくボコボコにする。


なんつーか、正義感が強い。


一回、女子にナンパっぽいのをしてる男子を殴って、病院送りにさせたことがある。


ちょっとしたことでもすぐ手が出るタイプだから、(いい方にね)

だから、ちょっと危険なんだよ。


けど、当然女子には好かれるわけで……。


ま、夜魔月先輩の話はどうでもよくて、俺のダチはどこだ?


キョロキョロ周りを見渡す。

しかしなかなか見つからない。


近くの女子に聞いてみる。

「なぁ、ちょっといいか?

らい(俺のダチ)って知ってる? 」


その瞬間、夜魔月先輩が、ダッシュで俺の方に走って来た。

(ダッシュで走るってどういう意味だろ笑)


「おい、男が女につっかかってんじゃねぇよ」


ん!?


……。なんか勘違いされてる!?

女子たちに、違うと言ってほしくて、

助けの視線を送る。


しかしそんな俺の目線なんか気にせず、女子は夜魔月先輩を見つめている。


な、なんなんだよぉ〜!


その瞬間、後ろから声がした。

「大丈夫か? 凍樹〜」


この声は……。


あ、荒冬夜!!

嬉しすぎて跳ねそうになるのを抑える。


でも、この惨めな状況を荒冬夜に見られるって、なんか屈辱……。


荒冬夜がこっちに、せっせと走ってくる。


「夜魔月先輩、俺の友達の凍樹を離してください」

夜魔月先輩は、少し目を細くした。

コレはなんだ……?


キ、キレてる?


案の定キレていた。


「あ? 女に手を出しといて、離すわけねぇだろ。部外者が口出しすんじゃねぇ」


荒冬夜は、夜魔月先輩にイライラしそうな言葉を言われても、

ずっと真顔だった。


「手を出したって……。

話しただけで手を出したに入るんですか? もしかして、夜魔月先輩、

彼女できたことないでしょ? 」


荒冬夜の口角がわずかに上がる。


夜魔月先輩は、その言葉にカチンときたのか、途端に俺の胸ぐらから手を離し、荒冬夜の胸ぐらを掴んだ。


「あ? んでてめぇにんなこと言われなきゃなんねぇの? 」

「だっていたことないでしょ。

実際」


なんと言われても、淡々と話し続ける荒冬夜。その姿に、何か少し、ドキンとしてしまった。


「てめぇ、俺が手を出さないからって調子乗ってんじゃねぇぞ! 」


夜魔月先輩は拳を思い切り振り上げる。


ここで時間は、一度ストップする。

ん? 待てよ?

普通の男なら、怪我しておしまいだけど、荒冬夜って、忘れてたけど……。


女じゃん。


高校生の女って、だってもう、かなり男と力の差とかがついてるぜ?


殴られて、果たして怪我をする程度で済むのか?


しかも女だったら、傷なんか残っちまったら、将来困るじゃあねぇか。


おい、ヤバくね?


そこで時間が動き出す。

急いで止めようとしても、もう遅い。


荒冬夜の頬に、夜魔月先輩の拳が

当たった……。


と思ったその瞬間、

荒冬夜は片手でパチンと抑えた。


「人を簡単に殴ろうとしてんじゃねぇよ、この雑魚が」

荒冬夜が夜魔月先輩を睨んだ。


夜魔月先輩は、驚きを隠せない表情をしている。


「しらねぇか?

『一寸の虫にも五分の魂』ってことわざ。僕みたいに体の小さいガキにも、すごい力はあるんだよ。

てめぇ、なめてんじゃぁねぇぞ! 」


急に荒冬夜は怒鳴り上げると、

夜魔月先輩のことを持ち上げた。

こんなに体の大きいやつを持ち上げる、体の小さい女子って……。


思い切り地面に夜魔月先輩を打ち付ける。


バンッと、大きな音がなる。

気づけば、ボールをつく音なんてなってなかった。


みんなの視線が荒冬夜に注目していた。


荒冬夜は息を吐き出すと、俺に向かってニッコリ笑いかけた。


「なぁ、もう帰ろうぜ〜。

助けてやったんだから、

オレンジジュース奢れよ〜」


全身に電流が流れるみたいに、

ピリリッとした。


心臓も、なんかドキリとした。


**


「荒冬夜ぁ、帰ったんじゃねぇの? 」

俺がふいにそう言うと、荒冬夜は

ムッとした表情で、俺の心臓を貫くような言葉を言った。


「帰ってほしかったのか? 」

オレンジジュースのフタを開けていた俺は、思わず缶を凹ましてしまった。


そんなわけないだろ!


そう、ぶっきらぼうに言いたくなったが、なんだか子供っぽいような気がしたから、口外には発しなかった。


「違うよ、てっきり帰ったのかと思ったから、ちょっと驚いただけ」


子供をなだめる時のような口調で言うと、荒冬夜はなぁんだと言い、

ニッコリ笑った。


キュンとする。

これはきっと恋だ。


そっからは、二人とも一言も話さなかった。


ずっと黙ったまま、ただただ目の前に永遠と続く道を並んで歩いていた。


俺たちの影が、後ろに伸びる。

日がだんだん落ちてきた。


日中は暑かったのに、夜にもなると、すっかり日中の暑さを忘れさせるぐらい、涼しくなる。


いや、夏だから、涼しくはならないが。


気づいたら家についていた。

荒冬夜は手をヒラヒラっとさせて、

自分の家に入って行った。


俺はふと、武藤さんの家を眺める。

頭をくしゃっとさせ、俺は家の中に入った。


家は、不思議なほどに静かだった。

耳が痛くなるほど静かだ。


どうしたのだろう。


自分の部屋に入ると、カバンを乱雑に置き、兄ちゃんの部屋に入る。


兄ちゃんの部屋には、カバンも部活でたっぷり使われた、汚れた服も、

何もなかった。


再び髪をくしゃりとさせ、髪にしわをつくる。


リビングにも、キッチンにも、トイレにも誰もいない。


イスにガタンと座ると、テーブルの上に置いてある紙に目がいった。


『豹魔へ。

抽選会で、ハワイ旅行が当たったの!

だけどハワイ“ペア”旅行だったの〜!


お父さんは単身赴任でヨーロッパまで行ってるでしょ。


だから、ちょっと塊狸かいり(俺の兄ちゃん)と二人で行くことにしたの!


一週間行けるらしいから、ちょっと行ってくるわね〜! 』


眉間に皺を寄せる。

字と言葉遣いからして、母が書いたものだろう。


紙の右下の方には、ハワイとかにありそうな木が描かれている。


はぁ。こっちの気もしらねぇで。


ふとスマホを取り出す。

ラインを開く。

ラインには、あの兄の事件のあとに追加した、『みっちー』という名前を押す。



みっちー『んじゃ、よろしく笑』

ヒョーマ『ん。よろ』


みっちー『で? どうだった?

テニスは。難しかったか? 』

ヒョーマ『まーまーだな』

ヒョーマ『けど、相手が荒冬夜じゃなければ勝てた』

ヒョーマがスタンプを送信しました。

みっちー『けっ。よく言うぜ笑』

みっちーがスタンプを送信しました。



こんな会話しかしていない。

そこに、俺が文章を追加する。



ヒョーマ『なんか、うちの親とうちの兄がハワイに行ったんだが』

ヒョーマ『マジ笑える笑』



はぁ。と一息つき、ラインの返事を待つ。そして10分ぐらいだった時、スマホが震えた。



みっちー『え、どういうことよ笑』

ヒョーマ『抽選会的なので当たったらしい驚』

みっちー『おいてかれる凍樹笑』

ヒョーマ『一週間も暇なんだけどー』



そこで、しばらく会話が止まる。

どうしたんだろう。

既読マークは付いている。


けれど、返信がこない。

しばらく待ってみる。


再び10分ほどだった時だった。



みっちー『一週間、うち泊まる?

僕一人っ子だし、暇だったから。

あ、けど、お母さんがいる。

お父さんはいないけどっー』



イスから落ちそうになる。

スマホを二度見してしまう。


思わずその荒冬夜の言葉をコピーしてしまう。


荒冬夜の家に……泊まる?


夢のような言葉だ。


急いで荷造り的なのを始めてしまう。

行くに決まってるじゃないか!


返信するのも忘れて、荒冬夜の家に行ってしまう。


勢い余ってピンポンしてしまった。

ドアがガチャリと開く。


頭にタオルをかけ、口にアイスを咥えている女の子が出て来た。


ん? だれ?


荒冬夜、一人っ子って言ってたよね。

けど、出て来た子は、半袖にショーパンの、色白で髪の長い、普通の女の子だった。


髪の毛からは水が垂れている。

お風呂上がりなのだろうか。


けれど顔は荒冬夜に似ている。

お姉ちゃん?


いや、でも一人っ子なんだよなぁ。


ん?


「どうした? 外にいると暑いだろ?

中に入れよ」

その声は、確かに荒冬夜だった。


口を動かしているのは、口にアイスを咥えている女の子。


ん?


頭が混乱してしまう。

目の前にいる女の子はだれ?


そして、荒冬夜はどこなの?


荒冬夜の家のお泊まり会(笑)は、

なんだかすごい楽しくて、

たくさん秘密を知ることになりそうだ。

読んでくださりありがとうございます!


実は、第三話はもう少し、

いや、かなり違うお話にする予定だったのですが、書き終わった瞬間に書いた本文が消えてしまって……。

(なぜ!? 笑)


なので、予定とはかなり違うお話にしてしまいました笑

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