男に惚れた!? いや、女に惚れた!
ボーイズラブ要素を入れてみましたー。
安心して、ボーイズラブが苦手な人でも読めるから。
安定のクールホーク要素を入れていきます!
みんな。ひかないでくれ。
キモいなんて言わないで。
俺、凍樹 豹魔は、好きな人がいるんだ。
え? 全然キモくないって?
……。俺の好きな人、荒冬夜 視亞は、
その……。男……なんだよ……。
ホm……。そうなんだ。
でもどうしようもなく好きなんだよ。
本当に好きなら、性別も何も関係ないだろ? うん。ない!
俺の惚れたところは……。
「わりぃ! 荒冬夜のとこ行った! 」
「オッケー! 」
荒冬夜はテニスボールをラケットの中心に当てる。
力強く腕を振る。
バシュッと、気持ちのいい音がコート中に広がる。
アウトになるか、ならないかのギリギリのラインでボールが跳ねる。
審判の様な人が、セーフの指示を送る。その瞬間、荒冬夜は満面の笑みを見せた。
そう。荒冬夜は、テニス部なのだ。
テニス部の一年のくせに、二年、三年にも負けないぐらい強い。
俺が惚れたところは、
顔は小動物みたいに可愛いのに、
運動神経バツグン、上の学年の女たちにもモテモテ。
なんか、すごい……イイ!
「あ、あの……。私……!
凍樹君のことが、す、好きでした! その……これ! が、頑張って作ったクッキーですっ! もしよければ……その……た、食べてください! 」
女の子は、顔を真っ赤にしながら、
手に持っているクッキーの袋を俺にさし出す。
まぁ、俺もこんなふうにモテるだがな笑
「無理」
そう。俺はこんな風にとても女に対しては冷たい。ドライアイスをマイナス6兆°にしたぐらい。
とにかく俺は女に全う興味がない。
女なんてメイクすれば化ける。
どんなに顔がイケてなくても、
メイクすれば変わる。
この女もそうだ。
つけまつげなんてつけて、顔真っ白に、バケモンレベルに染めて(? )
口紅的なのつけて、制服の胸の部分のボタンを必要以上に開けている。
正直言って、気持ち悪い。
そういうことをしないと可愛くなれないからそんなことをしてるのか?
絶対俺はすっぴんの女子に告られる方がいい。まぁ、告られても付き合わないが。
それに比べて荒冬夜。
男だから当たり前だが、無駄に自分を変な感じにしない。
趣味に没頭……まではいかないが、
自分の好きなことを、好きなだけやる。そんなところに、より深く惚れたんだ。
凍樹は校庭を……いや、荒冬夜を
眺めながら、自販機に売っていた、
オレンジジュースのフタを開ける。
パシュッっとフタを開ける、いい音がなる。
突然、荒冬夜は凍樹のところへ走ってくる。
「おい、凍樹! それ、果汁何%だ!? 」
突然話しかけられ、驚いて吹き出しそうになるのを抑える。
そのせいで、鼻に変な違和感を感じる。
「100%だが……。なんでだ? 」
果汁100%だと何になるんだ!?
「くぅぅ! 羨ましい! ねぇ!
それ、一口くれよ! なんなら、もう一個買ってくれないか? 」
な、な、な!
の、飲みたいのか……?
そうか。荒冬夜はオレンジジュースが
好きなのか! メモメモっと。
もちろん荒冬夜の願いならなんでも聞くが……笑
荒冬夜と凍樹の前に、緑色の網の様なものがある。
おそらく、テニスボールとかサッカーボールとかが校舎の方に飛んでこない様にするためだろう。
その網に顔をべったりと引っ付かせ、
荒冬夜はおねだりをしてくる。
コクリと凍樹は頷き、
「またあとでな」
とニッコリと笑いながら荒冬夜に
手をヒラヒラとさせる。
荒冬夜は、網の跡がついた顔で笑い、
「絶対な! 」
と一言凍樹に言う。
……。こんなことが、地味に俺の毎日の楽しみだったりする。
とにかく、とにかく、荒冬夜が好きだ。周りから見たらキモいのかもしれないが、この気持ちは誰にも止められねぇ!
部活の練習が終わったらしい。
廊下が少しばかりうるさくなる。
俺は教室で一人で椅子をギコギコさせながら、夕日の沈んでいくのを眺める。
その途端、「凍樹! 」と言う、聞きなれた声で、バッとドアの方を向く。
「お、荒冬夜! ほら。オレンジジュース買いに行こうぜ」
二人きりというのは……その……ドキドキする……。
どうしよう。俺、どんどんいけない方向に進んでいる気がする。き、気をつけないとやべえぞ。
「ほら。何してる? 早くいくぞ!
僕はテニスで疲れた。だから凍樹の奢りだ! 」
まるで、奢りが当たり前の様にそう言い放つと、荒冬夜は
自動販売機の方向へ歩いていく。
「ちょ、おい! 自分で買えよそんぐらい。ったく。荒冬夜君はお子ちゃまですなぁ」
荒冬夜は、少しイラついた様な顔をして、のちに顔を、さっき見ていた夕焼けの様にオレンジ色……いや、赤色に変えていく。
「う、うるさい! 分かったよ!
オレンジジュース一個も奢ってくれないぐらいお前は心が狭いのかよ! 」
うっ! なにか……何か詰まる感じがする。申し訳なくなる。
いや、自分で買うのは当たり前だ!
申し訳なくなんかなってたまるか!
「しょ、しょーがねーな……。
半分……出してやるよ」
くうぅ……。どうやら俺は、
荒冬夜には甘々な様だ。
荒冬夜は再びニッコリして、
片手に100円を持ちながら自動販売機の方へ行く。
俺はふと不思議に思う。
オレンジジュースって、100円だったぞ? 半分ずつなら50円でいいんじゃねぇか?
「おい荒冬夜! オレンジジュースは100円だぞ! 50円だけでいいんじゃぁねえか? 」
すると突然荒冬夜は笑いながら、
こう言う。
「はぁ? あの自販機、50円硬貨
使えないだろ? 僕が100円で買って、
あとでお前から50円貰えば、
半分こにしたことになるだろ? 」
な、なるほど! よほどジュースを買い慣れてるのか!? 知らなかった!
荒冬夜はジュースのことに詳しい。
メモメモっと。
荒冬夜は、ジュースのフタを開けようとする。しかし、カリカリカリカリやって、なかなかフタを開けられないでいる。
なるほど。荒冬夜は不器用。
メモメモっと。
「おい。かせよ」
オレンジジュースをひょいと取り、
パシュッっとフタを開ける。
そして、勝手に一口ゴクリと飲む。
さぁ、どんな反応するか?
「……えせ。かえせ……。
僕のオレンジジュースを返せぇ! 」
な、そうきたか!?
そんなに好きなのか?
荒冬夜は若干泣き目になる。
とても罪悪感が心の底から湧き出てくる。
なんだか俺も泣きそうになる。
「わ、わりぃ! そんなに好きだとは知らなかったんだ! 」
すると荒冬夜は、突然シンとなり、
黙ってジュースを飲んだ。
ちょ、それ……。間接キスじゃぁねぇか! (注)同性♂です。
「ん? どうした? 凍樹、顔が真っ赤だぞ? 」
荒冬夜は身長が低いから、
下から目線で俺を見つめてくる。
どうしようもなく可愛くて、
抱きしめたくなる。
ギュッと荒冬夜を抱きしめる。
スンスンッと匂いを嗅ぐ。
男のくせに、少し清潔そうな匂いがする。胸がキュンッとなる。
ん? 俺は足に違和感を感じる。
荒冬夜は身長が低いから、
男には誰しもついてる、アレ(ち〇〇)が俺の足に当たるはずだ。
ん? な、無い!?
突然荒冬夜がパッと離れる。
顔を真っ赤にしている。
もしや……。薄々思っていたが……。
俺の腹のあたりに、さっき、小さいながらも柔らかいものが当たっていた。
「荒冬夜……お前……♀(女)!? 」
荒冬夜は途端に顔を赤くする。
そして、否定はしない。
なんか無性にドキドキする。
女のくせに、ぶりっとしてなくて、
メイクなんて全くしない。
男と混じってハードな運動をしている。
なんか……イイ!
「おい……。頼むから、他の奴には言わないで。僕はずっとこのまま、
男として通していきたい」
なんで……?
そこまでしたいわけ?
「僕……。女といるのがめんどいんだよ。だから、小学生の時、男といっぱい絡んでた。そしたら、
『〇〇君と遊ぶなんて! 生意気なんだよ! 』って理不尽な言い訳付けられて、イジメられて……。
なんならもう男として通していったほうが楽だって気づいて……。
だから……他の奴には言わないで」
そう……だったのか……。
あまりにも可哀想すぎる。
余計女が嫌いになった。
女って……。
・キモい
・心がどす黒い
・集団攻撃戦法
この三拍子が揃ってるよな。
まぁ、中にも荒冬夜みたいに、ちゃんとした人間の奴もいるが……。
「これからは俺が荒冬夜を守ってやるよ! 」
思い切って言ってみた。
もう女だから、今までのようには荒冬夜を扱うことはできなそうだ。
「はぁ。ありがとう。
けど今の僕に、護衛隊とかはいらないけど……」
むうぅ……。
どうやら荒冬夜は……。
かなり鈍感なようだなぁ。
メモメモっと。
荒冬夜が女ってことは、俺が荒冬夜に恋をしていいってことになったよな?
俺は荒冬夜が好きだ。
このことを荒冬夜にいつ伝えられるか……。
読んでくれてありがとう!
喜んでもらえたらいいな。