my first〜Mika's side〜
「もう、アンタのせいで私まで呼び出されちゃったじゃない!」
「うるせえな、元はといえばお前が寝てるのが悪いんだろ。」
「うるさいのはアンタでしょーが。あんないたずらするから……」
全く、なんで私まで……。
私とレイは、放課後教員室に呼び出された。無論さっきの時間のことについてだ。幸いにもそんなに怒られはしなかったが、その代わり、
「……いつから掃除してねーんだよここ……」
小汚い資料室の整理を押し付けられてしまった。
もう、何もかもレイのせいだ。其の辺に散らばっていた資料を適当に棚に押し込むと、ホコリが舞い散った。思わず仰け反ると、後ろの棚にぶつかって・・・重そうなダンボールが落ちて来る。突然のことに動けず立ち竦む。
「危ない!」
そう言うのと同時に影が―――レイが、私に覆いかぶさる。そして、その背中をダンボールが直撃した。
恐る恐る目を開けると、私の顔の近くにレイの顔があった。思わずドキッとする。
「ちょ、離れなさいよ!」
「わ、悪い……」
レイは背中を抑えて、よろよろと私から離れる。そして、レイは物音を聞きつけた先生によって保健室に連れて行かれた。
なんでだろう、ドキドキするのが、全然収まらない。
あの時、――アイツが私に覆いかぶさったとき、――アイツの唇が、私のそれに触れた。よりにもよって、アイツに。私の「初めて」を奪われるなんて。
荷物が降ってきたのにびっくりしてるのか、アイツとしたキスにドキドキしてるのかも、わかんなくなる。
アイツのせいで、私が、どんどん狂わされていく。意識していると、胸の鼓動がますます早くなっていく。
「ああ、もうっ!」
私以外には誰も居ない部屋に、私の叫び声だけが響く。
レイの奴に、後で文句言ってやるんだから。と、ごたごたと物が詰まった部屋で、一人意気込んだ。
なんとかあの埃っぽい部屋を抜け出せたときには、もう五時半を過ぎていた。ああ、もう、アイツに文句言わないと気がすまない。それに、部屋の前に置かれたアイツの鞄も、取っていってやらないといけないハメにあった。
がらら、と少したてつけの悪い保健室のドアを開ける。レイの奴は、ベッドで寝転がっていた。
「ほら、荷物」
そう言ってレイのそばに荷物を置く。
「悪いな、持たせて」
レイの顔を見て、なんだか無性むかついた。
「もう、もとはといえばアンタのせいなんだから……」
「じゃあ、そっちが落とした荷物が当たらないようにかばったのは誰なんだ?」
文句の一つや二つでも言ってやろうと思ったのに、逆にやり返されてしまった。
「あ、ありがと……」
言った途端に、顔中が熱くなっていくのを感じる。
「も、もう帰るから……っ」
真っ赤な顔なんて、アイツになんか絶対見せたくない。俯き加減のまま、ダッシュで昇降口まで駆け込んだ。