友だち?
「お前友だちできたんだな~よかったよかった」
風呂上がりの乙女の部屋にあがりこんで、乙女を友だち居ないやつ呼ばわりするのはどこのどいつですか。
じろりと睨み付けてやると「ひっごめん」と返ってきた。お前思った以上にわたしの傷をえぐったんだからな。
「何を見て友だちができたと思ったわけ?」
「え、だってなんかメガネのやつとよく一緒に居るだろ?」
「メガネ…ねえ」
佑真の言うメガネはおそらく平胤のことだろう。あれを友だちと見るかこいつは。うーんまあ、友だちかあ、そう言ってもいいのかなあ。わたしはまだ勉強仲間という言葉でごまかしているけれど。だいたい向こうがどう思ってるかわからないし。
「あいつすっげー頭良いんだってな、いいなー頼りになりそうで」
「勉強面で頼りになることは確かだけど、別に友だちってわけじゃ」
「いーじゃん友だちで、知り合いじゃなんか寂しいだろ?」
「うん…」
ま、本人のいないところでくらいいっか、どうせこいつとは学校で話さないんだし平胤の耳に入ることもないだろうし。
「でさーシンジ、お前連休なにすんの?」
「ああ、その友だちと図書館で勉強する日が一日ある」
「おっ!じゃあ俺も」
「呼ばない」
「デスヨネ」
バカにしては理解が早くて助かる。
「ま、どうせ俺は連休ずっと部活だしそんな余裕無いからなー」
「お疲れさん」
スポーツ推薦で入った佑真は、結果を出すことが期待されて入学しているのだ。まだ1年生とはいえチームの主力になっているらしいこいつに連休なんてものは無いのだろう。
「ていうかお前、なんでそんな勉強してんの?」
「そりゃ、テスト順位で上位に入ってれば女子から一目置かれるでしょ、ひとつのモテ要素だよ」
「ああ…」
そういやそうだったみたいな目でわたしを見るな。そうだ、こいつにも聞いてみるか。
「ねえ、佑真から見て、学校でのわたしって女子にモテてる?」
「えっ」
佑真には、平胤に聞いたみたいにオブラートに包むことはしない。
「うーん、モテてるってか、一線引かれてる感じ?憧れはするけど、近寄りづらいって思われてるんじゃね?」
「…あんたもそう言うのか」
うーん、平胤と同じことを言われてしまった。てことはやっぱりそうなんだ。
「わたしにいったい何のモテ要素が足りないっていうの…女子のアイドルになるために何が必要なのか…」
「なんかお前目的見失ってねーか」
「いや、見失ってようがなんだろうがわたしは前に進むしかないの」
王様が接触してくるその日まで、あとどれくらい時間があるかわからないんだから。