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秀才に頼ってみる

 癇に障る「秀才枠」は名を平胤臨ひらたねのぞみと言った。

なんでも中学校から成績はトップ、入試の成績もトップだと言う。自分がいかに努力をしたかも簡単にひけらかすような男だった。

こいつ、さては友だち居ないな。

って言葉はいまのわたしにはブーメランなのであまり声を大にして言えないけれど。いたた。


しかし平胤の努力話はよく聞いてみると実力のつく勉強法大公開だったのでわたしはいつの間にか熱心に聞き入っていた。するとそれに気が付いた平胤は「勉強会なら開いてやるぞ」と言う。上から目線なのは気になるがこの際こいつから勉強法を盗んでやろうじゃないか。勢いよく返事をすると、そんなわたしの野心がばれたのか平胤は「お、おう」とだけ言って少し戸惑った様子だった。


 ちなみにわたしが高波心慈と自分の名前を名乗ると平胤は「名は体を表すとはよく言ったものだ」と大笑いした。むしるぞ。それから面白がってわたしのことをシンジと呼ぶ。むしるぞ。



 それからしばらくして、平胤を「勉強仲間」かなと思い始めたころわたしは思い切って相談してみることにした。場所は中庭の東屋にて、イギリス風に言えばガゼボにて。円形の壁にそって設置されたベンチにわたしたちは向い合せて座っている。



「あのさあ、わたしって女子に嫌われてんのかな」

「相談ってそれか」



平胤は案外真面目に聞いてくれた。ふむ、と腕組みをしてベンチの背もたれによりかかった。


「そもそもなぜそう思う?」

「なぜって、話しかけてもそそくさと距離を置かれるし、なにかしてるとひそひそ噂されてる気配はするし、これってやっぱり嫌われてるからだと思わない?」


わたしの主張に、平胤はふうむと考え込んでいる様子だった。

はあどうしよう、嫌われてるんだったらいまからでも目立たない路線に変更するべきかな。

平胤の返事を待っていると、やつは神妙な面持ちで口を開いた。



「俺が思うにだな、嫌われているというよりは近づきがたいために距離を置かれているのでは?」

「え、近づきがたい?」



なんだそれ、考えたこともなかった。



「得てして完璧な人間は孤独と切り離せない運命だ、顔がいい、運動ができる、おそらく頭もいい、そんなシンジに気後れして近づきがたいのだろう」

「ええー…」



そんな、どうしたらいいというんだ。


「こればかりは時間が解決するのを待つしかないだろう」

「そうかなあ…」



嫌われているのと敬遠されるのと、どちらがマシなんだろうか。いや、でもまあ、嫌われるよりはマシかなあ。


「俺はそういう人間を一人知ってるからな、幸いシンジはそいつと違ってジャマなプライドが無いようだし、積極的な姿勢を続けていれば周りも態度を軟化させるだろうよ」

「そっかあ…なるほどね」


って、まだ嫌われていないという確証もないからなんとも言えないけど。でも平胤のアドバイスは参考にする価値がある。


「それに、お前の目前にある目標は実力テストでの上位獲得だろう?今は何も考えず、そこに集中したらいいんじゃないのか?」



平胤の言葉に、目が覚める思いがした。

そうだ、嫌われてるにしろ敬遠されてるにしろ、わたしがやることはまず成績優秀の評価を得ること。そこからどう好かれるかはあとで考えよう。幸い王様もまだ接触してくる気配はないのだから。


「そうだね、平胤の言うとおりだ、ありがとう」



素直に礼を言ってやれば、平胤は驚いた顔をした。いや、これは戸惑っているのか?「礼を言われる事じゃない」と言って片手で顔を覆ってしまったため、結局どんな表情をしたのかはわからなかった。






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