友だちの友だち
おいやめろ平胤、お前ほかに友だちいたのかみたいな目で見るなむしるぞ。
「こんなところで会えるなんて思ってなかった」
対する真利くんは今日もふわりと王子様のような笑顔だった。
「私服もかわいいね」
そしてその笑顔でこんなことまで言うのだった。なんてこった、そういうところまで王子様か。それから真利くんは平胤を見て、あっという顔をした。
「友だちと一緒だったんだね、ジャマしちゃったかな」
「いや、構わんぞ」
そう言ったのは平胤だった。腕組みをして、偉そうだ。
「花轟学園の生徒か?シンジと友だちってことはお前も1年か」
「そう、3組の真利来栖です」
「真利、そうかお前が真利来栖か」
平胤の言葉に真利くんだけではなくわたしも驚いた。こいつ、真利くんのこと知ってるのか。他人に興味なんて無いやつだと思ってた。そんなわたしの驚きを知ってか知らずか、平胤はふふんと自慢げに鼻をならした。その態度はやはり偉そうだった。
「推薦枠のやつらは名前ぐらいは把握している、才能のあるやつを俺は嫌いじゃないからな」
「あはは、ありがとう」
「ああ、俺は5組の平胤臨だ」
「ああ、学年1位の」
真利くんの言葉に気を良くしたのか、平胤は、ふははと笑った。ふははて。
しかし、平胤が推薦枠の生徒の名前だけは把握しているって、佑真のことも名前だけは知ってるってことか。うかつにばらせないな、佑真の事。
「真利、おまえ連れはいるのか?」
「え、ううん、ひとりだよ」
「そうか、なら俺たちについてくるといい」
ん?平胤が真利くんを急にナンパしはじめた。まあ、真利くんも嬉しそうに返事をしているから、いいか。平胤のテンションはなぜか上がり続ける。
「なに、シンジの友だちは俺の友だちだ、コーヒーを奢るのに1人も2人も変わらん、お前にもごちそうしてやろう、さあ行くぞお前たち!」
しまいにはそう高らかに宣言すると先導者よろしくずんずんと歩き出した。ああ、なにか、つまりやつは友だちが増えたことに浮かれていると、そういうことか。わたしも人の事言えないけれど、あいつ友だちいないんだなあ。
どんどんと先に歩いていく平胤を見失ってはいけないので、真利くんに声をかけてわたしたちも歩き出した。平胤を追いかけながら、わたしは友だちの非礼を真利くんに詫びることにした。
「ごめんね平胤が強引に」
「ううん、誘ってもらって僕も嬉しかったから、気にしないで」
「それならいいんだけど」
平胤のあの偉そうな態度を柔らかな微笑みで受け止めることができるなんて、あんたどんだけ王子様なの真利くん。
「平胤は偉そうな態度するけど、悪い奴じゃないから、よかったら仲良くしてあげてくれるかな」
「それはもちろん、そうだね、彼の言葉を借りるなら、高波さんの友だちは僕の友だちだから、僕からお願いしたいくらいだよ」
そう言って真利くんはまたふわりと笑う。はあ、やはり絵になる。
日本初上陸のコーヒーショップのコーヒーは、異国の味がしておいしかった。




