結果発表
連休明けの実力テストが終わった、その翌週に順位が張り出された。
「おおー」
張り出された順位を見て、思わず感嘆の声をあげてしまう。
ジャスト10位。なんとか目標達成だ。
「ふむ、10位か、まあ目標は達成したのだから上出来だな、よかったなシンジ」
「はは、ありがと」
隣に立つ平胤が相変わらずな態度で褒めてくる。とりあえず気にせずお礼だけ言っておけばいい。
「平胤にはおめでとうなんて言わない方がいいよね?」
「ふはは、わかっているではないか、俺が1位なのは当然のことだからな、祝福はもちろん賛辞も無用」
「そうだよねーさすが平胤」
「おい俺の扱い雑になってないか?」
雑にしているわけではない。適当に流しているだけだ。
そんなことよりも今のわたしは目標達成の嬉しさをかみしめているんだから。
はー、嬉しいから写真とっとこ。
「なんだったら順位と2ショットで撮ってやろうか」
「そこまで浮かれてない」
ニヤニヤしながら言ってるあたり絶対面白がって言ってきたぞこいつ。
まあこれは放っておいて、もう一度じっくりと順位を見てみよう。
おや?平胤ばかりに気を取られていたけれど、2位に見覚えのある名前が。
「横尾さん、2位かあ、頭良いんだ…」
入学式以来会えていない横尾さんの名前だった。
たしかに頭よさそうだったもんなあ、それに加えて控えめでかわいいってどこの大和撫子だろう。
はっ、噂をすればあれに見えるは横尾さん!と、湯上さんも一緒だ!仲良くなったのかあ。
「横尾さん!」
嬉しさのあまり、またはこのチャンスを逃すまいとしてわたしはすぐに横尾さんの名前を呼んでいた。
横尾さんは驚いたように両手を口に当てて、隣の湯上さんも似たような反応を示す。
「お、あっえっと、高波さん」
「横尾さんすごいね、2位なんて」
「い、いいえ」
横尾さんは謙遜してうつむいてしまうが本当にすごいと思う。
「おね、あっ高波さんも10位に入ってるじゃないですか!すごいと思います!」
その代りに今度は湯上さんが元気よく言った。その元気さでポニーテールが跳ねる姿は今日もかわいい。「いやあ、そんな」と口では言いながらもやっぱり褒められると嬉しいもんだなあ。おうどうだ平胤見てるか、わたしにだってこんな会話ができる友だちは居るんだぞ。ついでに佑真も見てるか。
「それにしても、横尾さんと湯上さん、仲良くなってたんだね、なんか嬉しいなあ」
「はい、それも高波さんのおかげです」
わたしのおかげ?
「2人で高波さんのことをお話しできたのがきっかけで、仲良くできたんです、ねっ愛ちゃん」
「そうだね舞ちゃん」
「そっか、いやあなんだか照れるね」
仲良く見つめあう2人はなんだかうらやましい。わたしも愛ちゃん舞ちゃんと呼び合う仲になりたいな。
でも敬語を使われている時点でなんだかすごく距離を感じてしまうので踏み込めない。
距離は縮まらないまま2人は「おね、あっ高波さん、それじゃあ私たち失礼しますね」と言って自分のクラスへ戻っていった。会えてよかった。さみしくなんてないやい。
「ふむ、シンジが横尾女史と知り合いだったとはな、ふふふ、まあ横尾女史に頼らず学年1位のこの俺を頼ったのは賢い判断だったなさすがシンジだ」
隣にやってきた平胤がなんか言ってるけど内容の9割はどうでもいい。
「あんた横尾さんのこと知ってたんだ?」
「横尾女史とは同じ中学校だったからな、常に俺の次に名前を連ねていたから顔と名前ぐらいは覚えているさ」
「へー」
ん?そういえば初めて会った日、横尾さんは王様と同じ中学校だと言っていた。だとすると。
「そしたらあんたも王様と中学校同じだったんだ」
「む、あ、あー」
そう聞くと平胤は急にメガネを触りだした。
それからすぐに「まあ、そういうことだ」と返事をして「トイレだ」と言って去ってしまった。




