矛盾点について少し考えてみた
そういえば、と思ったことがある。
目の前で現国の問題演習に取り組んでいるこの平胤は、逆ハーレムにおける「秀才枠」である。つまり顔がいい。もっと言えば性格は歪んでいるが顔だけはいい。
だからさっきのカフェのカウンターにいたお姉さんや、若い女の子たち、またはここに来るまでの道に居た通行人にも振り向かれ、ひそひそと噂されるのだ。
そこでとなりの女何者?って噂をされる被害妄想をしなかったわけではない。いや、正直に言えばした。これが嫌で回避しようと努力しているのに、成果が出る前に被害にあってどうする。いやまだ被害妄想だけど。
とはいえそれで気が付いたことは、わたしの行動は矛盾しているなということで。
逆ハーレムの世界で女子から嫌われないというのがわたしの目的である。しかしそのために逆ハーレムの構成員とこんなにも仲良くしていていいものだろうか?まだ女子に嫌われない地盤ができていない時点でこの交流は危険なのではないか?なんのために幼馴染へ絶縁宣言をしたのかわからなくなるじゃないか。
「む、消しゴムはどこへいった?」
「ノートの下に隠れてるよ」
そもそもわたしが回避したいものは何だろう。それは女子の嫉妬である。逆ハーレムではない。
だいたい、逆ハーレムが完成した時点でわたしがそれのどれかに恋するというわけでもないし。逆ハーレムの主人公ってだいたいそうじゃない?
この世界が逆ハーレムの世界で、わたしがその主人公だっていうならなにをしたって運命は回避できない。そういう諦めもあるのかもしれない。ただ、逆ハーレムの構成員全員に好かれる、ということからは少し目を背けているかな。
「む、赤ペンが見当たらん」
「さっき自分で筆箱にしまってた」
わたしは逆ハーレムを回避したいわけじゃないのだ。そしてもちろん、王様との接触だって回避するつもりはない。どこでどのような状況になるかは分からないけど、その時が来たらその出会いを受け止める気でいる。ただわたしはその時までに、いや、たとえその時が来たとしてもだ、女子に嫌われない努力は続けていく。
いろいろと考えて少し考えがまとまった気がする。わたしの最大の目的は、女子に嫌がらせをされないことだ。逆ハーレムの構成員と関わったならそれでいい。その後のことはそれから考える。
でも正直に言ってしまえば、せっかくできた友だちを失うのは惜しいというのが本音かもしれない。
「ん、どうした俺のことをじっと見て」
「あ、いや」
それにしても平胤は顔はいい。顔だけはいい。
「なんでもない」




