薔薇の鳥かご
バラの花咲く辺境の城で娘が産まれた。 伯爵は娘を深く愛し、娘が求めるものの全てを与えようとした。
数年の後のある時、娘はガラスの瞳の人形と遊ぶよりも、同じ年頃の友人を欲しがった。伯爵はそのような子どもを探させたが、小さな田舎の城下では見つけられなかった。
そこで伯爵は娘のために、特別な「人形」を魔法使いに作らせた。 星の瞳を持ち、話し、娘と同じように成長する、そんな人形だ。
娘は、可愛らしく天真爛漫な人形をたいそう気に入った。その日から人形は娘にとってたった1つの友人となったのだ。そして、人形にとっても娘はただ1人の友人となった。
娘が少女となり乙女となるころ、娘は人形を羨み、妬むようになっていた。娘より人形の方が美しく成長したことが誰の目にも明らかであったからだ。
そんなある時、娘は城を訪れた詩人の青年に恋をした。ところが青年は娘ではなく人形に恋の詩を詠んだ。娘はこれに耐えられなくなった。人形を憎んだが、一方で唯一の友人でもあった。 代わりに、娘は夕闇の中でそっと青年の背を刺した。
しかし、そのことはすぐに伯爵の知れることとなった。伯爵は娘に憐愍としてわずかな金貨を与え、城から追放した。
人形は娘を追おうとしが、ついに伯爵に許されなかった。 人形は娘を深く悲しみ、自身を恨んだ。
人形は部屋にこもり、人を一切避けるようになった。人が自分のことを忘れれば、誰も自分のことで悲しまないと人形は考えたのだ。
いつか全ての人が人形のことを忘れるまで目を覚まさないよう乞い願い、人形は冷たい床で永い眠りについた。
それからしばらくしたころ、流行病によって伯爵はこの世を去り、次第に人々は後継のない城を去った。
辺境の城の出来事など、人々が忘れるまで100年と絶たなかった。
ところが、その後も人形は城で静かに眠り続けた。城はバラに包まれ、緩やかに朽ちていった。木漏れ日の城は動物たちの営みの場となった。
そして、ある時人形は目を開いた。
読んでいただき、ありがとうございますm(_ _)m
初投稿なので、いろいろ不安だなーとかありますが、ひとまず書き終えました。
読まれた方で気づかれた方もいるかもしれませんが、「眠れる森の美女」のあらすじを妄想したり、脚色したりとで勝手に書かせてもらいました(笑)
ひょっとすると続きを書くかもしれませんが、いったんはここで終わりにしようと思います。