05 出版決定?
学校から自宅へと帰り、自分の部屋へと戻ると、着ていた学生服をハンガーに掛ける。
――ゴールデンウィーク近くだというのに、急に寒くなったな。
寒さにしびれた手を温めながら部屋着に着替え、机の上にあるノートパソコンを起動させた。
ブラウザを立ち上げ、『小説家になるもん』へアクセスする。自分のページにあるメールボックスを確認する。そこには数件の感想メールが来ていた。
> 面白い展開でしたが、もう少し詳しくして書いて欲しいところがあります。今度はラグリマを活躍してください。
盾キャラだからなかなか活躍できないな。
> まさかコードの数値を探さないで倒すとは。でもチートコードを使っているからこれもチートなのかな?
はい、チートです。
> 最近マンネリ気味だったので、こういう話の持って行き方は良かったと思います。
チートネタはどうしてもオレツェー展開だからこういうのもいいかな。
> あやめさん、どんなキャラなのですか、ぜひ教えてください。
……こっちが聞きたい。
感想メールに対して、ツッコミを入れていく。こういうコミュニケーションができるのがなんとなく楽しい。実際に、小説を書いていて、みんなに読んでくれているんだなと実感できる。
読者からの感想を確認し、ウェブページを更新する。すると、新たな電子メールが受信されていた。
電子メールのタイトルを見る。
件名:T出版の大田章弘 - オオタアキヒロ - と申します。
「おっ」と、思わず声が出てしまった。
「まさかないよな、そういうことが」
――と、言いながらも普段、表情を見せないボクが破顔していた。
素早くマウスを動かして、電子メールの封を開けた。
始めまして、T出版の大田章弘と申します。
佐川方さんの『暗号屋の情報書換』を拝見し、ぜひ、この作品を我が社で出版させていただきたく、メールをさせてもらいました。
胸が締め付けられる思いというのはこういうことをいうのか。
身体を前のめりにして、何度も見直す。
――間違えない、このメールはボクの小説を出版したいと依頼しているのだ。
T出版と言えば、小説・アニメ・ゲームとメディアミックスを基軸したTホールディングスの関連会社であり、主に出版関係の仕事を任されている会社だ。ヒットした作品は数知れず、年に数本のライトノベルがアニメ化になっているレーベルでもある。
そんなところからお声を掛けてもらえるなんて……
淡々としたビジネスメールだというのに、すさまじい昂揚感が身体を駆け巡る。正直、メールの中身を覚えていない。大会社から認められた充足感で胸がいっぱいで、終始ニヤけっぱなしでメールを読んでいた。