04 笑われるネット小説家
「それでシンちゃん」
あやめとの話が終わった所で、ユリがボクに話しかけてくる
「――授業中、勉強しないとホントにマズイわよ。さっき、先生が注意していたけど、それはシンちゃんのことだと思う」
「だいじょうぶ」
「だいじょうぶって」
「だって、ボク、小説家になるから!」
唐突に放った一言に、三人は止まった。
「あれ?」
この瞬間はまるで、大声で親父ギャグを言って、ひたすらだだズベりしたような奇妙さ感覚に似ている。
「あの、あの……」
自分が言ったことはそんなに変なことだったのかと反芻する。けれど、そこまで間違ったことを言ったわけではない。小説家になるという夢は本気だったし、それを曲げる気もさらさらない。
とはいえ、皆が宇宙人を見るような目でボクを見てほしくない。視線が痛くつきささる。
「キサキくん」
時の止まった教室で、あやめが動いた。
「キサキくんって、イタいコ?」
オマエにだけは言われたくないセリフだ。
「オレが小説家になるって夢、間違ってないだろうな?」
焦ったボクはリオに話しかける。
「そうね。現実的なのは役所で仕事をしながら本を書くことかな? それか、マンションの管理人みたいなことやって、本を書くのがいいかな。経済的な不安があったら、書ける本も書けないからね」
「いやいや、本気のアドバイスしなくていいから」
ユリはリオの丁寧さに呆れていた。
「でも、ボクは『小説家になるもん』という小説投稿サイトで、月間ランキング三位だよ。20万以上の作品が置いてある日本屈指の小説投稿サイトでだよ。この小説投稿サイトから多くの作家が生まれていて、本が出版されているんだ。そんな所で上位のランキングにいるのだから、このすごさをわかってほしい!」
段々と熱くなるボクとは対照的に、ユリはなぜか言葉を選ぶように考えながら話していた。
「それはそれでスゴいと思うけど、そういう所で、二次創作みたいなモノばかりでしょう。アニメの延長線上というか、妄想の吹き溜まりというか」
「妄想も、文字を通せば、文学だ」
「スゴい理屈。でも、それで本を出したとしても生活できるわけないから、あくまで思い出づくりになるんじゃないの?」
「思い出づくりとしても本を出せるだけ幸せだろう。ネットにいちいちアクセスしなくても、活字で読めるんだから」
ユリはああ言えばこう言うボクに嫌気を差してか、強い口調になる。
「それじゃあ、月間ランキングで一位になってよ! それなら認めてあげるわ」
ユリの言葉に、オレは辟易する。
「……それは無理かもしれない」
「え?」
「一位のヒト、百十千 - モモトチ - 師匠は、オレに小説を教えたヒトなんだから」
キーンコーンカーンコーン……
休憩時間の終わりを知らせるチャイムが鳴る。クラスにいた生徒がそれぞれの席へと戻る中、ユリはボクのことをチラチラと見ていた。
「あやめさん、帰るね」
オマエは早く隣のクラスへ帰れ。