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02 幼なじみと委員長と不思議さん


 休み時間、ボクの席に白井ユリがやってくる。

「シンちゃん、小説投稿した?」

「ああ、――読んだ?」

 ユリに話しかけると、首を横に振る。

「ううん、時間があったらね」

 とか言いながらも、ユリは先ほど投稿したばかりのボクの小説を読んでいる。

 

 白井ユリ - シロイユリ - 、同じクラスで授業を受けるボクの幼なじみ、成績はトップクラスでクラブはバレー部に所属している。クラスの中で比較的カワイイグループに入っており、男子生徒からよくコクられている。でも、好きなヒトがいるとかなんとかで告白を交わしていて、現在、フリーである。「少しは話を聞いてやれ」というと、「あんたの話を聞いてない」と、ツンツンする。もう少し、男にやさしくやれと言いたいところだ。


 ボクとユリが話していると、メガネをかけた女子生徒がやってきた。

「ユーリ、貴崎君と何、話しているの」

「またシンちゃん、授業サボって、スマホから小説を投稿したみたい」

「ホント? 貴崎君」

「別にいいだろう。リオ」


 駒田理央 - コマダリオ -、赤いフレームのメガネがトレードマークの委員長。成績はいつもトップクラスで、時間があれば文庫本を読む文学少女でもある。性格は冷静沈着を豪語しているが、口ゲンカにするとすぐ熱くなる。

 リオはボクの書いている小説に出てくる聖騎士ラグリマのモデルである。本来なら、リオみたいな肖像権にうるさそうなキャラを入れたくはなかったが、物語の進行役は委員長タイプにすれば話の展開がスムーズになるという意見を取り入れて、彼女を登場させた。


 そのためか、リオとはあまり話したくない。特に、話の流れがボクの小説になるとややこしいことになる。リオにはまだ自分が小説のモデルになっていることを言っていない。できれば、ボクの小説の話はして欲しくないところだ。

「やることやってから小説を書いているのならまだいいんだけど、授業をサボってやるのは、ちょっといただけないわね」

 リオは小さな子を叱りつけるように言ってくる。これ以上なじられるのもいい気分しなかったので、話題を変えることにした。

「そういえば、リオ、小説好きだろう?」

「ええ」

「もし、このクラスから文豪が生まれたらそれはスゴいことだと思わないか?」

「まあ、芥川龍之介や太宰治みたいな作家がいたと言ったらそれはそれで自慢になるけど」

「だから、ボクは少しでも彼らの下に近づきたくて、大切な時間を削ってモノを書いている。食事時間、寝る時間、そして、貴重な学びの時間まで削いで小説を書いているんだ」

「そこまで考えた上で、モノを書いているんだ」

 リオはきちんと傾聴してボクの話を聞いている。文学少女でもあるリオは小説を高等な趣味だと考えており、小説を書くヒトを尊敬しているのだ。


「キサキさん、キサキさん」

 耳元で小鳥がさえずるような声が聞こえる。

「キサキさん、キサキさん」

 何者かが服を引っ張っている。

「キサキさん」

 ああ、また、めんどくさいのがやってきたな、と、感づく。

「わかってる。あやめ」

 ボクは学生服の裾を掴んで、ちょいちょいと引っ張る方へと振り向く。 

「ぐっとっ」

 あやめは右手を差し出し、サムズアップする。


 柊あやめ - ヒイラギアヤメ -。隣のクラスにいるよくわからない女子高生。小柄でいつもニコニコと笑い、無邪気なネコみたいな女のコで、自分のことをあやめさんと言う不思議さんだ。

 どうして、彼女は自分のことをあやめさんというのか。謎である。しかしながら、それはあやめという少女を知らなかったから仕方がない。元々、彼女とは何の接点もない。本当なら卒業するまであやめと話をすることも、カオを合わせることもなかっただろう。


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