005
前話で記念すべき二人目のキャラクターと言いましたが良く考えたら三人目でした
つくづく思う。
僕は阿呆じゃないのかと。
翌日、僕は逃げ回るかのように校舎内をさまよっていた。周りに友達グループを作った奴等がうじゃうじゃいる所を、僕は歩いている。こいつらの視線に当たることは本当にキツい。すれ違う度に冷淡な視線が僕を突き刺すような感じがする。他の人にとっては平気かも知れないが、僕からしてみれば江戸時代の拷問よりよっぽど残酷だ。
実際、ある人物に僕は尾行されていた。
途中で立ち止まり、振り向いて後方を睨み付ける。人ごみの中、僕を追跡していた同学年の同クラスの文具屋の一人娘がひょいと身を隠した。いや、バレてますって。
言うまでもない、昨日文具屋で言葉を交わした女、南条碧だ。
学校で女子に追いかけられると言うのは他人から見ればロマンチックなシーンかも知れないが、僕からしてみればこれは迷惑以外のなんでもない。追跡やめろ。
近寄ってきて告白リア充成立やったぜ!で済む話ではないのだ。というか追いつかれたら終わりだ。いろんな意味で間違いなく死に至る。床に脳天を垂直に突き刺すかも知れない。
「………」
何故追われているか、心辺りはあった。
あくまでも予想であるが、南条はどうやら僕が朝どこにいるか突き止め、場所を判明させようとしているらしい。何故そんなに気になるのかは不明だが、僕としては奴に部屋の場所を明かすわけにはいかない。あの空間は僕の生命線、部外者立入禁止なのだ。
さて、僕はどうする?
1:戦う
2:場所を明かす
3:逃げる
ま、どれを選ぶかは誰にでもわかる、はず。
「逃げよう」
曲がり角をスタート地点として走りだす。兎に角走り、群れを成す蛋白質の集合体をなぎ倒さんばかりに走る。そのまま外に出て、サザエさんのエンディングにあるような建物を変形させるかのようなスピードで走る(あくまで比喩。実際にそんなことがあれば人は死ぬ)。階段を転落しかねない勢いで駆け下りた。最深部へ到達すれば、脇目も振らず講義室に突っ込んだ。
脱兎の如くとはまさにこの事だ。
南条を完全に振り切って講義室へと駆け込んだ。
「あぁ…」
完全に息切れしている。いつ以来だろうか、こんなに死に物狂いで走ったのは、講義室を守りたいと思う気持ちが僕を動かしたのだろうか。
「………」
とっても良い意味に聞こえるが、別の見方をすればそれは引きこもりに一歩近づいたという事だ。
全然良くない。
むしろ悪い。
「そろそろだな」
始業時刻は近い。僕は荷物を纏めた。
孤独でも授業は受けないといけないのだ。
教室に戻ればあいつがいるが、また逃げればいい。簡単な事だ。
僕は講義室を出た。
「げ…」
さっき僕は宣言した。
南条は完全に振り切ったはずだと、
なのに、
なのに、
「南条…」
扉の前には、南条がいたのだった。
更新しないって言ったのに更新してしまった…