004
「ねえ、君、D組の子だよね?」
へ…?
あまりにも唐突に話しかけられた。
「違う?」
「へえっ!?」
動揺の余り気持ち悪い返事となってしまった。
「そ、そ、それが…」
「?」
「それが…」
「どうしたの…?」
そ、そそ、そ…それ…それが、そ、そそ、それが…ががががががかががががががががあああぁぁあぁあああぁぁああああああぁあ亜ああああああぁあああぁあぁあああ!!!!!!!!!!
「ひっ!?」
目の前の女が驚いた理由もわかる。
その時に出た効果音を字面を使って再生してみよう。
せーのっ、
ドスッ。
「………」
腹を殴りつけた。
いわゆる自分腹打ち。
僕はなんの躊躇も無く僕に暴力を行使したのだった。
「………」
ちょつと待て、普通に喋れないぞ。これ。
痛い痛くないどころの次元じゃない。
痛みで声帯が正常に動作しない。
コミュニケーション能力の低さが露呈するのを防ぐため、自分の腹部を殴打したのだが、強くやりすぎたため、声が出なくなった。
これではただの自傷行為だ。
「あのお…」
しばらく硬直していた女がこちらの様子を伺ってくる。貴様誰のせいでこんな目に会ったんだ。殴ってやろうかと思ったが、よく考えれば自分の対話能力があまりにも不足している事が原因と気づき、その時には殴る気力は微塵も無くなっていた。
「大丈夫?」
「あぁ…」
「見る限り大丈夫じゃなさそうだけど…そう言うなら」
それで見捨てられたら逆に悲しい。
「お腹…大丈夫?」
「なんとも良い」
実際にはなんとも良くない。
「ところで、君…D組の子だよね?名前、なんて言うの?」
「…僕?」
約三年ぶりの自己紹介だった。
「神峰、勇だけど」
「そう…」
そうって何だ。
「私は南条…碧。同じD組だけど、知ってる?」
「…知ってる」
知らないと言ったらただの失礼な野郎だ。実際は知らん。
「………」
誰かに対して話すという事が久しぶりすぎて話題が思いつかない。泣き崩れそうな膝を叩いて奮わせる。
「そうだ、一つ、いい?」
「?」
「いつも、朝、どこにいるの?あんまり見かけないんだけど…」
「こうぎし…いやなんでもない別にどこにもいません」
危うく言いかけた。あっぶねー。
「ふうん…そう、なんだ」
「来るのが遅いだけだ」
…なんだそのいぶかしげな目は。
別に何も隠してないって。
講義室?なにそれ?おいしいの?
「悪い、僕帰るわ」
「あっ、どうも」
店を出て、自転車に跨り、猛スピードでその場をあとにする。
危うく講義室の事言いかけた。
もう一度、あっぶねー。
記念すべき二人目のキャラクター!!