003
マッハ、
とまでは行かないが、授業を終えると、教室を飛び出し、まるで山猫に喰われそうになり必死に逃げる兎の如く、猛ダッシュで講義室へ直行した。
だっだっだっどんばちいんと言う疑音語が相応しいであろう。周りから変人を見る目で見られていたみたいだが、あまり気にならなかった。
講義室の鍵を開け、ぶっ壊しかねない勢いで扉を開ける。中に消臭剤を置いたため、埃臭さはもう微塵も残っていない。
漫画やステレオを置いたため、放課後でも気兼ねなく楽しめる。それに講義室の扉には窓が無いため、外から誰かに覗かれる危険性が無いのだ。
ここでは僕は自由の身だ。床に寝転んでも、誰かを罵詈雑言で罵っても、憂さ晴らしにそこらへんの物を蹴り飛ばしても、誰にも文句を言われることが無い。
姉貴には感謝すべきだ。こんな自由空間を提共してくれたのだから。土下座して感謝の意を表しても構わない。だが鍵を返せと言われたら脳に亀裂が入る。あの部屋が無ければまさしく僕は永遠の孤独である。
誰も助けてくれない。
五時半を過ぎたので、家に帰ることにした。途中寄る所があるし、寝泊まりも頑張ればできないことも無さそうだが、いくらなんでも危険すぎる。なので帰ると言う名の決断を下した。
この時間帯に帰る人間は大底運動部の奴等である。勿論この僕がそんな奴等と気が合うわけが無い。とっつきにくい人間と一緒にいるのはどうも苦手なのだ。学校には指定の通学路があるが、体育会系の人間の巣窟になっている場所をわざわざ通ろうとは思わない。自転車通学なので、あえて遠回りして帰る事にした。
見渡す限りカップルしかいない道を自転車で走る。
そして普段使う道にでる。そこを横に曲がった。今向かうべき場所は家ではない。さっきも話した通り、今日は寄る所があるのだ。
「よし、着いた」
学校からさほど遠くない場所にある文具店が目的の場所だった。何をしに来たかと聞かれれば答えは簡単。単に赤ボールペンを買いに来ただけである。
「いらっしゃいませぇ」
店員の声が聞こえる。女の声だった。気にとめず、ボールペンをケースから引っこ抜き、レジへ持っていった。
あれ?
店員の顔、どっかで見たことがある。
わからないまま、ボールペン代を払い、ポケットへ突っ込む。
その刹那、信じられないことが起きた。
「ねぇ…君」
話しかけられた。
知らない人から。
「」をほとんど使ってない…