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この話は勇が講義室を手に入れるまでの話です。
高校デビューに失敗したと気づいたのは、四月半ばのことだった。
受験勉強に明け暮れ、合格して高校に入学したものの、周りから取り残されていると気づくのに二週間もかかったのだから、愚かしいことこの上無い。
D組に配属され、何の変化も起こさずに過ごすうちに僕は気づいたら『孤立化』していたのだった。
とんだガラパゴス野郎である。
周りの人間がどんどん『友人』と言うものを作って行くなかで、このままではいけないと思い、誰かしらに声をかけてみたりはしてみたのだった。
そうして何人かは親しく話せる相手はできた。それを『友人』とする。
そこまでは良かった。
現時点で、学校内で誰一人として行動を共にする奴がいないのである。
中学生の頃の、友達ゼロ人という苦い記憶を糧にして、今度こそ友人を作るぞ、と意気込んでいた。結果は最悪。また同じことがリピートされているだけである。
「はあ…」
結局、孤立を避けることのできなかったガラパゴス野郎の僕は、毎日暗澹としながら登校することを無理矢理義務付けられたのだった。
ある日のことだった。授業を終え、惨めな帰宅を終え、いろいろ終えて家についた。孤立と言う名の精神的苦痛は僕に大いにダメージを与えたらしく、顔はまるで生気を無くした死んだ魚の様であった。
「勇」
力なく水に浮かぶ魚、これ今の僕の現状。
「勇」
感覚が無い。ピクリとも動かない…。
「勇」
なんだようるっせえなと思いながら振り向くと、部屋の入り口に姉貴が立っていた。
神峰真璃、大学三年生。
「あんた高校行っても孤立してんの?」
…………。
「…その顔を見る限り当たっているのね」
ほっとけ、と言おうとすると、横たわりリバースされた視界に何か飛んできた。
どうやら鍵のようである。金属部分はかなり錆びていて、繋がっているプラスチックプレートには何やら数字が書いてあった。
…暗号?
「何これ」
得体の知れない鍵の正体を聞くと、
「この鍵があんたの最後の生命線。使いたければ使って、捨てたければ捨てて」
「………」
一応とっておくことにした。
回想終了。
この鍵こそが、眠っていた講義室の封印を解く鍵だったらしい。
この講義室、鍵が見つからないと言うことで学校側が放置しているらしく、何故か合鍵も作られていないようだ。
どう言う理由があって姉貴が講義室の鍵を持っていたのかは知らないが、これのおかげで僕の生命線は保障されたのだった。
姉貴、
鍵、サンキュ。
執筆疲れた×2